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黒い鴉は夜を啄む  作者: 月夜ノ歌
2/12

集残


        いじめが、なぜ無くならいかって?


        楽しいからだよ。





「棗さーん!こっち!こっちです!!」


「うるせーなー新人、もっと声のボリューム落とせ 頭に響く…」



黒い、喪服のような制服を着た男女が事件現場に到着する

若い男女だが、これでも警部である。


「新人って、私もう配属されて2年ですよ…」


「新人じゃねーか、でもって2年俺といるなら、そろそろ俺の体調を察せよ…気分が悪いんだ…」


「…ただの二日酔いじゃないですか……」



あーあ、酷いなこりゃ おえっ


棗警部は今にも吐きそうになっていた


私も、もう慣れたが この独特な匂い、死臭は確かにキツイ…


人間のとは、また違う



そこには、黒い 喰い散らかされた怪物の死骸があった。



「魔法や術、その痕跡はありますが それが途切れて尚、死体が残るタイプの奴です」


「後始末が大変だなー、”掃除屋”と”葬儀屋”に早く来てもらえ」


「ちゃんと、怪異処理班って呼ばないと、また霞さんに怒られますよ」


「やってる事は、主に掃除なんだから仕方ないだろ 市民権を得た蔑称だ…」



棗警部に電子パッドを渡し、映像を見せる


「近くの監視カメラは一応あったんですが、皆 故障中で でも、目撃した市


民の方が撮影してくれてました。」


「機能してない監視インフラと、自分の危険を考えない馬鹿、2億総監視社会の恩恵だな」



ギシュウウウウウウウウウ!ギチュ!ギチュ!!



「ただのグロ画像じゃねーか、黒い化け物がグチャグチャになっていくだけだ…おえっ」



棗さんはグロ画像に怯む人ではない、完全に残った酒で吐き気を催してるのだ。



「映像には映ってませんが、目撃者の証言だと 白い別の怪物が現れ助けてくれたと」


「別に、映像に映らないからって高等な召喚生物って訳じゃない、黒いのは確かに大した事ないが」


「イルカ、エイリアンみたいな頭と尖った身体、沢山の腕があったそうですよ…」



警部の顔つきが変わった



「そのレベルを呼び出せる術者なんて、この辺にいるのか? 報告にないぞ」


「わかりません、調査中です。」



汚染防護服を着た作業員たちを見ながら、棗警部は苛立っていた



「暗部の観察組はまた、監視漏れか! 全然機能してねぇ」


「仕方ありませんよ、特殊な能力者たちはどんどん増えてます 特に東京は人気みたいで…」



人が多く、文明が発達し、格差もあり、不安も不満もあって、勝ち組と絶望がある

そして何より、お金がある


そういうところに、怪物は自然発生するのだ 外にも、人の内にも 


それで悲惨な未来を迎えた先進国は多い



戦争が変わったのだ、戦争の質が

より超常的に、陰湿に



「でも、人を救う為に喚び出してくれたって事ですよね、良い人ですよ!きっと」


警部はため息をついた


「お前、俺と2年いろいろ見て来て、よくそんなポジティブな思考でいられるな…」




「とりあえず、目撃者と映像に映ってた連中は全員警察署で事情を聞け、少しでも怪しかったら監視を付ける。」




あ、掃除屋さん達も来たようだ。





銭湯についた


ここで、この付いた血を洗い流すのか



普通に考えたら、そんな事 銭湯の人が許してくれるのか??



「ラッキーです、今日は若い女性の人が番頭さんじゃない おばあちゃんなら許してくれますよ」


そう言って、古書堂の店員さんは入っていく


「あの人だと、いろいろ聞いてくるし 何より 若い女性に見られながら着替えって恥ずかしいですよね」


「は、はぁ…」



体を洗い、彼と一緒に湯船に浸かる


自分は何をしているのか…?

一瞬、そんな気持ちになった



「一応、”鳩”を飛ばしましたので、何か情報が得られるかもしれません」


鳩…? 伝書鳩の事だろうか? この時代に? それとも何かの隠語か



「本当に、僕に依頼していいんですか? 一人前じゃありませんし、何の資格もない学生ですよ」


「しかし、さっきの あの白い何かで救ってくれたのは貴方ですよね??」



私は、そちらの知識は全くだが、それでもあの異形を操る事は相当の実力者でないと無理だと感じた



「あれは…生まれた時からのギフトみたいなもんで、僕の実力というと怪しいかな‥‥」



彼は少し、寂しそうにした


「先生はもっとすごいし、実力のある異能の人は沢山います。」



「しかし、そういう人はお金もかかるでしょ…」



私は彼の前に、有名な特殊能力を持った人物の元を訪れた事がある


「その時は、最低でも一千万用意しろ、と言われましたよ」


「い、いっせんまん…まあ、高名な人だとお抱えのクライアントもいるし、飛び込みはそうやってあしらっているのかもしれませんね…」



「すみません、妻が行方不明になる前は割と高給な職場で働いていたのですが 妻の捜索に専念していく内に、会社を辞め今は貯金を切り崩してまして…」



ビラを用意するにも、タダではない


妻が心配で精神的に不安にもなり、仕事も手に付かなくなった



「う~ん、僕は学生ですし 成果報酬でいいですよ 奥さんの居場所がわかったら、その時はまあ、可能な範囲の謝礼で」


「助かります」


「本当は無料にしてあげたいのですが、命にリスクのある仕事は絶対にタダでやるなって先生が…」


「命のリスクですか…」



「あなたを含めてですよ、僕に会いに来て あの呪役<じゅえき>に遭遇 偶然だったらいいんですが」


「あの黒いは呪役という奴なんですね?」


「ああ、僕たちの流派?派閥の呼び方みたいなモノで、術者のジャンルによっていろいろ異なりまります。」


知り合いの陰陽師なら、式神の類って言うかな…


彼は、少し考え込んだ



風呂から上がり、彼から飲み物を買おうと提案される


私は、オーソドックスにコーヒー牛乳にした


「王道で良いですね、じゃあ 僕はイチゴミルクで」


男同士で、風呂上がりに一息


何とも言えないノスタルジーな落ち着き、やすらぎを感じた



衣服を入れたカゴを見ると、汚れていた私の服が綺麗になって置かれていた

まるで、クリーニングに出したかのようだ

風呂に入っていたのは30分程度のはずだが…?


おばあさんが、やってくれたのか…?



「ありがとうございます、いいお湯でした」


番台のおばあさんは、小刻み震えながら

は~~~~~い~~~~と、消え入りそうな声で言った。






「集」




出口のところで、古書堂の店員くんが手を合わせるようなポーズを取り

あの時、聴こえたような声を発した





「残」




辺りがざわざわと、不思議な風が吹いたような感じがした。



「何か?」



「良くないものが集まって来てたので、一応軽くですが祓っておきました」



明日、また店に来て下さい

今日はゆっくり休んで



そう言って、彼は闇の中に消えて行った


そうだ、私も急いでホテルを見つけなくては




黒い影のようなモノが、黒い蠢くモノに食い散らされている

そんな音が、ずっと聴こえていた…




辺りはすっかり、夜になっている。








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