表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い鴉は夜を啄む  作者: 月夜ノ歌
11/12

腕穿


             我々はどこにでもいる


             そして、どこにもいない



             ”零 ”であるが故に_。







「ここ20年で、特殊な能力を持った奴等の犯罪は3倍に増えた、なんでだかわかるか?」


モグモグ…


「世の中的にも色々ありましたよねー、その前からもバブル崩壊、未成年による猟奇殺人、宗教組織によるテロ、震災、災害、大規模リストラ、ネットの普及、第4の災厄、他国の戦争、消費税増税…」



「お前、割とニュースとか見てんだな…偉いわ」


ハンバーガーを頬張りながら、先輩が褒めてくれた


「たははw 照れますな~ これでも、新聞とかも読んでますよ チラホラと」



「お前が言った事も関連はあるんだろう、世の中の出来事ってのは、同じ世の中で起きている以上 どんなに細い糸みてーだろうが、関係し合っている。」


「”バタフライエフェクト・リレーション ”…」



「直接的な事案としては、結局のとこ 異能の成熟と科学の進化が良い感じで結びついちまった事だ。」


モグモグ


「それまでは、魔術も呪術も他の能力者も秘匿の道を歩んでいた そこから はみ出し、力を行使しようとする者は、むしろ身内で処理する自浄作用まで働いていた訳だ」


ケチャップが欲しいな…


「それが、2000年頃までのデュープロセスだったが、コンピューターやらと一緒に”2000年問題”として突如開化する。」



「普通の人間も、能力を目覚めさせる事に成功した訳っすね…」



ノストラダムスの予言は見事に的中した。




人間社会の禁忌が破られた。



「大昔から、そういう試みが無かった訳じゃない、そういう儀式を試みる術師、特殊能力を目覚めさせようとする科学者、そんなのはどこの国にも、組織だったり、個人で大勢いた」


ハンバーガーは甘い炭酸飲料で流し込みたくなる。



「中には成功もあったんだろうが、大量の死体を積み上げた先に、一人二人成り立つかどうか

 しかも、ちゃんと制御、運営出来るかという稼働問題も後から付いて回る」



「コストとリスクに対して、対価が釣り合いませんね」


ポテトを食べるお箸とか 出してくれないかな…



「能力を分け与える事が出来る人ってのも、いるらしいですけどね」



「居たとして、そいつも無限じゃない、なんらかの誓約が付くだろうさ

それがだ、ちょっと整形してくるねーって感覚で能力者になれる時代になっちまった」


「お金とか、まだまだかかるみたいですが…でも、増えますよね そりゃ」



「後天的異能の目的の8割は、能力の”悪用”だ。 最初は違っていたとしても、いずれ力に溺れる、呑まれる、沼にハマり、暴走する者が出てくる。」



個人主義の膨張と暴走、社会や集団より個人の権利が優遇される時代に欧米諸国は入っていった


それで、救われた人もいるのだろう

しかし、世の中はもっと複雑だ。


「どんな時も大声歌っていたい!それが私らしさ!!私の自由!!権利!!」



そんな人間が、学校のクラスに居て授業中に突然歌い出したら?



しかし、それを教師が止めようとすれば


「「体罰、パワハラ、個人の権利の侵害、自由意志を奪っている、ブラック校則」」



でも、それなら 静かに授業を受けたい生徒の自由は?


しっかりと授業を行いたい教師の自由と職務は??



「銃で己を身を守る」これが基本理念のアメリカにおいて

「異能で身を守る」という考えが広がらない訳がなかった。


自由の国、万歳!!!!


逮捕された初期の異能罹患者は、自由の女神の頭を吹き飛ばした。



新たな社会問題と、分断が起きるキッカケである。



「個人の自由を尊重し過ぎれば、好き勝手にやる迷惑な奴が現れる」


当然で、簡単に答えが予測出来るのに

みんな好き勝手やりたいから、本当の意味では誰も止めない


反対すれば、差別主義とレッテルを貼られる

”古い価値観は間違いだと切り捨て、とにかくアプデ、新しい価値観ばかり尊重する”


聞きたいのだが、使っている機械、ハード、パソコンが勝手にアップデートして

改悪され逆に使い辛くなった経験がある事をみんな忘れているのか???


アプデは必要だろうが、なんでもかんでも 深く考えずにアプデしてたら

間違った方向に進んでいるという事は無いのだろうか???


バグはないのだろうか?



結果、人類はまた間違えた


必然だった間違いだった。


人に触れずして、人の頭を吹き飛ばせるような能力を 金を積めば手に入るようにしたのである。

人を呪えば、本当に相手が苦しみながら死ぬような力を、提供していったのである。



監視カメラで撮影してようが、目撃者がいようが、その近くに居て、動機があっても

科学のみの検証技術では証拠を突き付ける事が出来ない

そういう犯罪者を、大量生産したのだ。


結果、日本でもオカルト対策チームなんて揶揄されていた部署が

突如として、莫大な税金が投入され


怪異処理班(掃除屋)などなど、様々な異能対策チームとして発足された



「だが、異能対策チームは人がよく死ぬ」


「一番日本が平和だった時代は、警官の殉職者は年間で10人そこそこだった時代があるんだと

 率にして0.003%だ 信じられるか??」


「それが今じゃ、年間1万人が殉職してる・・・死ななくても動けなくなったり、心が折れて退職する奴が後を絶たない」



「そのおかげで、私らみたいな20代そこそこ男女が試験も受けずに、”警部”ですもんねー」


「形骸化した役職だ…給料はいいっちゃいいが、金の使い道も思い浮かばねえ…」


「私は、募金とかしてますよ 贅沢三昧もしてたけど飽きるし、仕事が忙しくて浸れないし…」


「警部ってのは、そもそも現場にはあんま出ずに部下に指示するのが普通だったんだよ、俺の仕事なんて入った時の巡査と変わらねえぞ、面倒な責任と書類仕事がオマケに付いただけだ」



「そろそろ、戻りましょう さっき、警察署の方でした術犯反応 無視しちゃったし…」



「中の連中が何とかするだろ、あのくらい 大体、警察署の結界はどうなってんだよ

飛びきり強力な結界のはずだろ、腐っても警察の敷地だぞ?」


「今は、結界破りの方法や、アイテムも進化してるみたいで 簡単にすり抜けるんですってー

警備のおじさんが言ってました。」


「警察なんてもう終わりだと、今まで100万回は思ってきたが、いよいよって感じだな…」




「おいっ!!!!!金出せ!!!!!」


昼間から、ハンバーガー屋さんの店内で、そんな声が響いた


バン!バン!!


銃も持っているらしい、一応この国の銃刀法違反の法律も生きてるはずなんだけどな~


「キャー!!!!!」



「銃だけじゃない!俺は”式神”も使える!手に入れたんだ、強力な奴を!!!!」



男が、札のようなモノを掲げる


すると、黒い影

大男のような体格の存在が現れた


「この場に居る奴も、全員 金を置いてけ! 逆らったら、殺っ…!!!!」



彼、別に能力者じゃない

なのに使える お手軽式神アイテム

これはもっと昔から問題になっていたオールド・カース・ウェポンだ…




「マグナカルタ・シェアリング起動」



ナツメ先輩の腕が黒く、膨張する


「警察特権、異能犯罪対処特権、民間人保護特権の行使による、異能解放を宣誓_。」



「 腕 」(カイナ)



先輩の身体は、まっすぐ強盗の方に まるで吸い込まれるように移動していき




「 穿つ 」




犯人に、先輩の腕から発せられる異様な黒い存在感が、そのままの圧力を持って

まるでレーザーの如く突き刺さった


犯人の出した式神ごと、先輩の腕が貫き 消えていった



「がっは・・・・!」



犯人は生きている、流石先輩


あの力を行使して、人を殺さない程度にまで制御抑制するなんて なかなか出来ない



「お前には黙秘権が あるようで、無い 黙ったままならここで殺す。」

「弁護士を呼ぶ権利は当然ない、現行犯だからな ドライブスルー裁判にそのまま直行コースだ

がしかし、お前に銃と式神を与えた奴を知りたいから特別に許可してやる」



「ひぃっ、いい!警察の横暴だ!みんな!!スマホで動画撮影して拡散してくれ!!

黙秘権を認めず、殺すと脅迫された~~~~~~~っ!!!!!」



「撮影した奴のスマホは、その場で壊す こっそり撮影に成功した奴はせっかくだからカッコよく撮れよ」



「皆さん、その場で放心状態ですよ 強盗からの先輩の能力の衝撃でみんな脳が処理限界です。」



「よし、犯人検挙したし、昼休みオーバーは許して貰えるな 儲け儲け」



「くっ!くるしい!!首絞めてる!!!誰か!!!!助けて~~~~~~~!!!!!!」





さっきまで、強盗してた奴が 被害者ぶっている

自由社会と個人権利の弊害ここに極まれり・・・だ




続。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ