第三話「黄鱗きいろ」
沈痛な面持ちの私に、ざわめいていた一同は注目しました。
「先生がいなくなった今、私が探偵助手として使命を果たさなければいけません。本当は辛いのですが……それでも私は……」
目を伏せ、演出として少し涙ぐんでみせます。
幸いにも周囲の皆様はころっと騙されてくれたようでした。
よかった。もしここに同業者が混じってなんていた日には面倒な事態になりますからね。
「わ、私たち、これからどうすればいいんですか探偵助手さん」
「ペンションの主人は殺され、外にも逃げられませんよ!」
「このまま殺人鬼と一緒に数日過ごすなんて……」
「教えてください、探偵助手のみつばちハニーさん!」
私はぎりっと拳を握りしめました。
だーれがみつばちハニーですか!
私は三橋蜂蜜であって、断じてハニーなどではありません。だというのにモキョ野郎が私のことを「ハニーちゃん」などと呼ぶから誤解が広まるのです。
「ハニーさん、どうなんですかハニーさん!」
連呼しないでください忌々しい!
もしここがお前と二人きりの状況であったなら、お前の頭と胴体は泣き別れしていたところですよ! 命拾いしましたね、フンッ。