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迂闊探偵を殺さないのは難しい  作者: 黄鱗きいろ 赤柴紫織子
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第十六話「赤柴紫織子」

 私は強く目をつむります。眉間にもぎゅっとしわができたことでしょう。

 め……。

 めんどくせえ〜〜!!

 何かひとつ真実が判明すると、ひとつの仮説が補強されるどころか、謎が謎を呼んでもう大変なことになっていませんか!?

 雪だるま式に厄介事が増えていく。

 恐る恐る作業場を覗いた魚囃子さんがおどおどと言います。

「意外にきれいですね……。解体というから血がいっぱいあるかなぁって……ちょっと覚悟していたんですけど」

「生きていれば確かに血が飛び散ったりするだろうが、死んで血抜きしたあとならそういうことはないんじゃないか?」

 腕を組み至極冷静に邪気さんは答えました。

「ただまあ、ヒトの血抜きというのは見たことないが……」

 まあ普通はそうですよね。あったら怖いよ。

 私はイタリア製のメモ帳を手遊びでぱらぱらと捲ります。

 血斑。逆さ吊り。外は雨によりぬかるんでおり、しかし小屋に新しい泥汚れはありません。ならば室内で処理したと考えるのが妥当でしょう。

 邪気さんに問います。

「ここで仮に血抜きしたとして、ちゃんと片付ければこんなにきれいになりますか?」

「どうだろうな。少なくとも多少なりとも臭いは残っているはずだが……」

 無臭です。

「……これは仮説だけど」

 ずずいっと等々等期さんが横から出てきました。

「血を全部飲まれた、とか」

「はあ?」

「それならこぼすことも臭いが残ることもないだろう?」

 怖……っ。いきなり何言い出しているんですか? 怖。

 距離置こう。

「じゃあなんですか。クソデカ蚊がいるというんですか、このペンションに」

 そしたら話はアホミステリーからバカパニックにジャンル替えしないといけないんですけど。

 まあバカパニックなら私はこのペンションを爆破して帰っても、パパに怒られたときに言い訳がたつしいいですが……。パパ、虫嫌いだし。

 キャリーケースに入れてある火薬の量を思い出す横で等々等期さんは不満そうに言いました。

「か、蚊じゃなくて!! もっとこう、メルヘンでロマンのあるゴシックな存在いない!?」

「ケルベロスですか?」

「ケルベロスからメルヘンとロマンを感じ取るタイプのなんだねキミ……」

 じゃあなんですか。

 私の不満を知ってか知らずか、等々等期さんはもったいぶって言います。

「吸血鬼とかさ」

 寝言なら寝てから言えバカ。

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