第十話「赤柴紫織子」
ああ、とそこで納得します。
モキョ先生は音猫さんの死体の場所を確認している過程でホウ酸団子を見つけて食べて死んだわけですか。
うろちょろしているなあと見過ごしていたことに反省します。だってモキョ先生はうろちょろする生き物なので……。
「わ、わたしが最初に持ってきたときに……すでに腕はあった」
「部屋に入る前に邪気さんと合流したのでその証言は正しいですね」
汗をかいている邪気さんの横で等々等期さんが涼しい顔をしています。
こういう男に限ってなにか抱えてるんですよ。私は頭がいいので分かります。
「こっちは二人のあと、それからハニーさんの前に来たけど」
「は、ち、み、つ、で、す」
「あらごめんなさい」
喪符松さんを犯人にしますよ。
オロオロしながら魚囃子さんは「僕は最後でした……よね?」と言いました。
ふむ。
「では――パーツを探すために私達は部屋を出ましたよね。最後にこの部屋をあとにしたのは?」
最後こっそりポンとすでに拾っていたパーツを置いてから部屋を出た可能性があります。
真っ先に出るモキョ先生を追いかけたので私は見ていません。
「どうでしたっけ? 僕は意識していません」
「ええ……? それはあんまり覚えてないわよ……」
「一斉に出たからな」
「うーん……」
記憶力たったの5の連中しかいないんですか? あと、おそらく犯人が便乗して覚えていないと言い張ってますね。
訓練すれば嘘なんて隠せてしまうので、表情態度からは読めません。嘘が分かる能力が欲しいです。
なぜパーツを二つ拾ったのか?
人差し指で唇をとんとんと叩くうちにある考えに行き着きました。
見られたくない場所に、死体があったから。だからこっそり回収した。
――まてよ。
ではなぜ、わざわざそんな場所に死体を置いた?
バレたくないなら他の場所に置けば良いのに……。頭部が見つかるまで死体が解体されて散らばっているとは誰も思いません。
それを知るのは犯人のみ。
いやいやいや、まさかとは思いますが……。
犯人の他に、死体をほうぼうに置いたアホがいるって……コト!?