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プロローグ「赤柴紫織子」
緻密に計算した殺人事件が成功したとき、犯人は何を警戒すべきだろう?
勝手に荷物を漁る子供?
予定外の動きをする刑事?
興味本位で話し出す傍観者?
良心の呵責に悩む共犯者?
それとも心にほんの少し浮かんだ自身の感傷?
いいや。
そんなもの、取るに足らない。
お前はそのぐらい予想できるだろう?
その程度舞台から引きずり下ろせるだろう?
もっともっと、上の存在だ。
お前が警戒すべき人物はただひとり。
そこらにあるものをとりあえず口に入れてしまうようなバカだ。