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閑話 宇治正の過去

大学時代、将来結婚しようと誓った女性がいた。彼女は、田舎から東京に上京してきた素朴な人物で、都会色に染まる前に私たちは出会った。


私は元来、勉強のできる人間だったので、彼女が単位を落としそうな時には付きっきりでサポートし、一人暮らしで料理のできなかった私を、彼女は手料理で助けてくれた。


共通の趣味を持っているし、休日になれば2人で仲良く出かけたりもした。仲つつまじく円満な関係を続けて行けるかと思っていた時、私は彼女を失った。

事故だったという。


交差点に突っ込んできた車が、大学から帰宅途中だった彼女を跳ねた。けが人5名、死者1名。

運転手は当時、酒気を帯びており、ハンドル操作を謝った結果、事故に至った。


彼女の葬儀は1週間後に行われた。遺体は遺族の意向で葬儀前に荼毘に伏され、納骨すらできなかった。

遺体の損傷が激しかったのが原因だという。


白黒写真の遺影は、彼女の満面の笑みが滲み出る1枚だった。


私は愛するべき人を失った喪失感から、全てにおいてやる気が失せ、進級すらどうでも良くなっていた。


ただある日、知り合いの社長である小田さんから芸能事務所を立ち上げるに際し、是非とも雇いたいという話が舞い込んできた。最初は断ったが、彼女の夢を思い出して引き受けることにした。


彼女の夢は、芸能事務所のマネージャーだった。

彼女は元々、日本映画スターの大ファンだった、うら若き女優さんを裏方から支えたいという話は何度か聞いたことがあった。


大学卒業と同時に、所属した新人アイドルのマネージメントをすることになった。

私は、仕事の内容を定期的に墓参りに行っては空にいる彼女に語りかけた。







ただ、私自身もそう長くはないみたいだ。

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