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<コマンド いのちだいじに>

 普通なら転生だの召喚だのと、厨二病を心行くまで擽りまくる古代文字が理路整然と描かれた魔法陣の出番なのでしょうけれど、わたくしはそういったもの全てを吹っ飛ばした拐かし。


「転生なんてゾノじゃないよね。俺はゾノの容姿も好きなの。わかる?」

「却下。召喚なんて、召喚先の王や王子がゾノに惚れて面倒なことになる。わかる?」


 あ、前回書きそびれましたけれども、このゾノというのはわたくしのことで、絶賛正座中な癖に何故か語尾が上から目線な神が、講釈を垂れておりましたわ。

自分が権力を使いまくって攫ったくせに、その言い草はどうなのかとも思いましたけれど、地球に返してくれる気はさらさらないとも断言されてしまいましたので、もうこれを逆手に取り交渉をいたしましたの。



「じゃ、チートで最高のモブにして」

「は? モブの最高ってどんなだよ」

チートやモブという単語がスルッと解る異世界神って凄いよね。流石ラノベ作家。


「え? んー。のどかな田舎の平民とかでひっそり暮らすとかさぁ」

「はっ。平民じゃ無理無理。権力がないとモブどころか、ゾノは金持ちの毛深いおっさん連中に囲われるだろうね?」

う。何そのラノベ展開。あ、ラノベ作家だったもんね、流石。


「じゃ、じゃあ、誰の目にも止まらない感じで、空気みたいなさ?」

「悪いけど、その容姿をいじらなきゃ達成できない願いは拒絶一択だから。で?」

や、でも髪型とか眼鏡とかで誤魔化せば、なんとかなるんじゃないかな。ラノベっぽく。


「変装すればなんとかなるなんて思ってないよね? ねぇ、鏡見たことあんの?」

ちっ。なんだお前さっきから偉そうにっ! あ、一応偉いんだった。副業でラノベ作家やってるけど。


「今、心の中で舌打ちした? したよね? 神に向かって」

「し、してないよ?」

「何で疑問符なの? ねぇ、なんで? しかもラノベラノベって馬鹿にしてたよね?」


も、もしかしてこいつ、こう見えて神だし、心の中を読めるんじゃ?

くっ。無だ、無っ! 何も考えるな。

マシュマロとか考えちゃうと、タイヤメーカのマークみたいなお化けがでてきちゃうし!


「あー、あったね、バスターするそんな映画」

や、やっぱり心を読めてやがったなっ!




 それでもそんなことは御構い無しに、神はわたくしの設定話を続けましたの。

わたくしもわたくしで、神の前ではお言葉遣いが悪くなるのですけれども。

まぁ、気取ったところで心の中を読まれてしまうため、無駄な努力を回避したといった具合ですわ。




「公爵や侯爵令嬢だとアレだし、子爵や男爵令嬢だとアレだから、伯爵令嬢辺りが無難だな」

あーねー。アレばっかでよくわからないけど、無難って良い響きだからソレで。


「確か爵位停止寸前の伯爵家があったな。そこにねじ込むか。バランタイン伯爵とダルモア伯爵のどっちがいい?」

なんだかオチが分かって続きを聞くのが怖いけど、敢えて言おう。

ここの貴族たちは酒臭そう……


「あ、やっぱり気づいた? ちなみに、マッカラン子爵やヤマザキ男爵もいるよ」


……。

子爵はともかく、その男爵の片仮名表記はウイスキーというよりパンっぽいよね。

男爵の封蝋を集めると、白いお皿がもらえそうな感じで。


「そんな春の祭りがあってたまるか。ま、永遠の17歳は譲らないし、そんな感じで」

「えぇ…どんな感じ? さっきから適当すぎじゃん。て言うか、許可取ってから心の中読んでよ!」

「はいはいはいはいはいはいはいはい」


ちっ。


「だから舌打ちすんなっ!」

「し、してないってばっ!」



 サラッと何でもないことのように流されましたけど、こちら歴とした呪いですの。

攫われた当時のわたくしは22歳。けれど17歳のヒロイン役を演じていたので、神の中のわたくしは17歳なのでしょう。


既に空球へ降りてから早行く年ですが、この呪いのせいで未だ容姿は10代にしか見られず、影で化け物と呼ばれているのをつい最近小耳に挟んでしまいましたのよ。


その他にも彼から多々呪いを放たれているのですけれど、それらは追々お話をさせていただきたく存じますわ。

とりあえず先に、エラく適当に纏められたわたくしの空球人生設定を、簡潔に完結せねばですものね。



 先ずは、空球に存在する4大先進国のひとつ、アミュレット王国民になる。

なぜなら一番風紀治安が良く、わたくしのような元地球人でも、馴染みある異世界像そのままのお国柄だからとのこと。


次に、伯爵令嬢として生きること。

公爵や侯爵クラスだと家柄規律が厳しすぎるし、地位が高すぎるため政略の駒として令嬢は扱われてしまう。

逆に子爵や男爵クラスだと、上位家格からの権力に逆らえず、矢張り婚姻の駒となってしまうからとのこと。


そして最後は、アミュレット貴族の半分はウイスキーで出来ている、と。

あ、このキャッチコピーですと語弊がありますわね。頭痛歯痛は止まりそうですけれど。


 アミュレット貴族は世襲制なため、継承者がおらず、老齢の現伯爵が死去してしまうと爵位停止となる家がございまして。

他国に住む遠縁一家を、家督相続のために呼び寄せた。という体で、その遠縁一家の令嬢にわたくしをゴリ押しバーターするとのことなのですわ。


当然、遠縁など嘘八百で、優秀でわたくしの容姿に似た無害な一家の記憶を操作し、海外から強引に招き寄せた。

が、真実かと思いますの。


現に父と呼ばれる方とわたくしは顔の造りがよく似ておりますし、母と呼ばれる方とは髪や瞳の色が同じで、兄と呼ばれる方はとても優秀イケメンですがシスコンでも何でもなく無害そのものでしたわ。


ただひとつ、どうにも納得ができなかったことは、わたくしの名がミタゾノだということでしょうか。

えぇ、わたくし『ミタゾノ サラ バランタイン』と、戸籍に登録されておりましたの。


「何で苗字がファーストネームになってんねんっ! せめてミドルとファーストを逆にしてーや!」

「なにそのエセ関西弁。草っ」


 巨大掲示板用語すらさらりと使うこの男が、苗字の存在を知らぬわけがなかろうに。

要点をすり替えているところからしても、何か企みがあるはずだ。絶対。


「別に企みじゃないよ。単にゾノの名を誰にも呼ばせたくないからなだけ。誰にも呼ばせない」

大事なのか2度言いましたね? しかも語尾に断言系で。これもまた呪いですよね。


「でも、家族と親友にはゾノ呼びを許してあげようと思ってるよ?」

え? 親友? 親友が作れるの? が、頑張るよ! 俄然やる気が出て来たよ!


「同性ね? 同性。異性の友人は闇に葬るから」

異性は親友じゃなく友人すらダメなやつですね、それ。


でも嬉しい! あれだけ憧れ続けた親友って存在ができちゃうかも!?


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