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真夜中の横断歩道にて

作者: 美柴筒真弥子

アニメ制作業務で体験した不思議な話を書き記そうと思いました。人によっては何の他愛のない話かもしれませんが・・・

 最初に言っておきますが、私には霊感といったモノがありません。ですが私の周囲で起こった不思議な経験を記します。


 アニメーションの制作進行をやっていた10年くらい前の話です。


 とある老舗のアニメスタジオに制作スタッフとして就職した私は、右も左も判らぬまま、これから放送するテレビシリーズの話数進行を担当する事になりました。

 この頃は既にテレビアニメの大半は深夜に移り、放送期間も1シーズン・12~13話で終了する作品が多かったのですが、担当する作品は珍しく夕方放送の30分番組で1年間放送する事が決まっており、話数も4シーズン分50話以上になります。

 各話進行を社内スタッフから4名選出され、私は3班を任されました。

 プロジェクトが開始されると先輩の1班・2班は第1、第2話を担当し、当然のことながら制作に力が入ります。社内スタジオに在籍、又は囲っている腕利きのアニメーター達を片っ端から作画をお願いする為、私が担当する3班の第3話は主に自宅で作業する個人(フリー)のアニメーターか、または別のスタジオに作画を依頼するしか手段がありません。そしてアニメーターの多くは夜に作業され、カットの回収は深夜か早朝になる事が殆ど。スタジオのある東京から、多くのアニメーターが住まう埼玉へ、深夜の往復ドライブが始まりです。


 所沢の小手指に住む作監の家へカットを届けるため、青梅街道から所沢街道を進み、所沢駅の周辺を過ぎて畑と雑木林の中を無理やり通したような真新しい道を走っている時の事です。

 片側に数件の住宅、反対側が畑という場所に横断歩道がありました。

 そこには信号機は設置されていないので気にせず通り過ぎていましたが、ごく稀に前方を走る車や対向車がその横断歩道の前で一時停車するのです。

 「信号も無く、ましてや誰もいない横断歩道の前で停車するのだろう?」そんな訳も判らぬ状況に何度か遭遇しましたが、仕事の忙しさで気にする余裕もありません。


 制作も終盤、別の新人スタッフに小手指への行き方を教える事になりました。

 いつもと同じ深夜、私は助手席でナビゲーションしていると、例の横断歩道の近くに差し掛かった瞬間、その新人はブレーキを踏んで横断歩道の前で車を停止させたのです。

 「どうしたの?!」と新人に尋ねると、


 「その横断歩道を人が渡ってたじゃないですか・・・」


 新人の証言によれば、住宅から畑の方面に向かって女の人が歩いていたそうです。ですが、私はそんな女の人など見ていません。いいえ、私にはまったく見えなかった。

 今までこの場所で車が停車していたのはコレなんだと確信し、それ以上は追及しませんでした。

 幽霊だったのかは見えなかった私には判りません。その新人も幽霊を見たという認識はしていない様子です。


 案外、他人が普通に見えてる人が、私には見えないだけかもしれませんね。 

怪異を感じる事ができても、それが見えない事に対するもどかしさが伝われば幸いです。

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