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転生・転移!龍王は異世界でも問題児  作者: 黒神金龍
第0章 龍王と青年の出会い
2/2

「力」の変化

主人公の影がほぼゼロ

 翌日、いつもと変わらぬ朝に感じる違和感。


 それを感じさせたのは動きの鈍い体と全身から感じる筋肉痛、そして昨日に体験した全能感から来る震えだと理解したのは、朝ご飯が出来たと知らせに来た祖母に声を掛けられた後だった。

 寝起きでまだ十分に働かない頭を起こしながら、昨日のことを朝から晩まで順に思い出して行く。


 午前から午後にかけての退屈な授業、身体を焼くような熱と頭を揺さぶられた事による気絶、数時間後に目覚めた時に見た保健室の天井、寒い廊下に闇夜の道、コンビニに(たむろ)していた鬼塚くん達、いつものように絡まれ財布の中身を取られる……はずだった。


 その時のことはよく覚えている。

 僕の意志とは関係なく喋る口。自分の目で見ていたはずなのに、どこか夢のようにぼ〜っと眺めていたような感覚。見えるはずのない拳の軌道を読んで受け止め、筋肉質でもない自分の身体を素早く動かすテクニック。そして、一番あり得ないのは石崎くんの手の骨を握り潰したり、百七十後半の身長で筋肉質な体格の打田くんを軽々と持ち上げて放り投げた力だ。


 あの時の僕は気持ちが大きくなり鬼塚くん達を呼び捨てにしたり、顔面を蹴ったりしてしまったけど……あれは本来の僕じゃない。結果としては因果応報だとも思うし、気分がスカッとしたのも嘘ではないけれどやはり暴力で解決するというのは好きじゃない。

 それは暴力を向けられている僕が身をもって知っているから。



 そんなことを考えつつも一階に降りて食卓に並べられた朝食を食べる。

 だが、不思議な感覚を僕は体験していた。

 普段より眠くて目も半分しか開いていないのに、窓の外を横切るハエを捉えた目。先程まで気怠かった身体の筋肉痛は食事開始から数分後に消え、全身が総毛立ち湧き上がる力は重力を羽のように軽くした。力に驚き右手で落としたコップを脇下を潜らせた左手で掴む反射神経。

 何より不思議なのは、この異常を目にしても普通に食事を続けいつもの日常を楽しむ祖父と祖母の胆力のようにも感じてきた。



 朝食が終わる頃、佳恵婆ちゃんが疑問を口にした。


「何か良いことでもあったのかい?」


「ちょっとね。ヒーローと一緒に戦う夢を見たんだ」


 僕の身体を動かし、守ってくれた時を思い出しながらそう答える。


 ── ふん。くだらん…… ──


 実に不満げな声が聞こえたあと、


「そうかそうか。それは良かったじゃないか」


 そう言ってうんうんと自分のことのように微笑む章雄爺ちゃん。


「じゃが、浮かれとって遅刻はするんじゃないぞ」


 少し過去を思い出すように言った。


「婆ちゃんと付き合って、浮かれて遅刻した爺ちゃんとは違うから大丈夫だよ」


「むぅ……。言いおるのう」


 顔は顰めっ面でも、恥ずかしさを隠せてない爺ちゃんに婆ちゃんはクスクスと笑っている。


「あはは。じゃあ、行ってきまーす!」


「事故には気をつけるんだよ」


「は〜い」


「弁当の中身はお前の好きな唐揚げと餃子じゃ」


「爺ちゃんは気が早すぎるよっ!」


 僕は宿題しか入ってない鞄を背負って玄関を出る。


「「行ってらっしゃい」」


「行ってきます!」


 爺ちゃんと婆ちゃんに(しっか)りと挨拶をしてから、学校を目指して通学路を歩き出す。



 通学路でも僕の身体の変化を生き物が教えてくれた。


 誰にでも吠える、番犬なのか躾が悪いのか分からない犬は口を閉じ、綺麗なおすわりをしてこちらを見ていた。

 近付いたら逃げるはずの野良猫は、逆に近寄りたそうにして尻尾を揺らし僕の顔を伺っていた。

 いつも自由に空を飛び、生ゴミや人の家の実を食い散らかし、夕暮れには群れで煩く鳴いているカラスは、僕に道を譲るようにして両脇の塀の上に停まる。


 動物たちの行動変化に困惑しながらも、遅刻しないように殆ど止まりかけの歩調を駆け足気味にしてその場を去った。


 学校には遅刻ギリギリで教室に駆け込む形となり、点呼を始めようとしていた島田先生の少し驚いた顔と「珍しい」という声と共にクラスの注目を集めた。



 その後、身体に変化が起こってからの一週間は環境が大きく変化した。その殆どが動物関連だけど、人間関係も少し改善した。


 動物関連として、知性ある全ての動物は懐く(・・)という度合いを越して「従順や服従」といった状態と化している。それもブリーダーや飼い主を無視してでも挨拶?しに来たり、命令を受け入れ全力で遂行しようとするしで他人の目が点になっていた。

 これに野生の動物であるカラスなども含まれている。


 知能の低い動物や本能で動くものたちは反応が顕著でなかったものの、変化は存在した。

 例を挙げるなら家に入ってくるネズミやイタチ、Gやアリや名前も知らない羽虫たちだ。


 最初は言葉が伝わらないという先入観から対処を放置していたけど、ボソッと「Gが家から出て行ってくれればなぁ〜」と呟いた時に事は起きた。

 僕はその発言をものすごく後悔した。それはもう過去に戻れるなら自分の首を締めてでも止めたいくらいには……。


 あまり思い出したくないので簡潔に言うと、各場所から全速力で集まってきて僕から少し離れた所に集合し、行列を成して窓から飛び立って行った。

 言わずもがなトラウマになった。


 他も似たようなものだったけど、言葉だったり身振り手振りで僕の意志は伝わるようだった。心の内から聞こえる謎の声は、言葉ではなく言霊だって言っていたけれど。



 人間関係で変わったことは、僕がイジメの対象から外れたことが一番大きいだろうか。鬼塚くん達は遠目から睨んでくるだけで、僕から物理的に距離を置いていた。

 その他は、露骨に変人扱い ── 鬼塚くん達に最後まで抵抗していた者として ── をする視線が減った代わりに異物を見る視線に変わったことと、担任との淡白だった関係が「日常生活に問題はないな?」の一言で会話が終了してしまうようになったことくらいだろうか……。



 そう言えば最近、鬼塚くん達の不良グループや僕との関わりをあからさまに避けていた人達が獣害や虫害に悩まされているって耳にしたけど、一体何が起こっているんだろう?

次はいつやろね〜

本人も分からん

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