5:ふくや。ルノーク・レースという人。
すみません。だいぶお久しぶりです。
今話では、レースさんの素顔に迫っていきます。
どうぞお楽しみあれ・・・
「大丈夫だった?変な人に絡まれなかった?」
合流してすぐ、真っ先に校長先生が聞く。私は、大丈夫でした。と言おうとしたのだがリィーノが
「馬鹿にからまれた。そいつが、藍衣を殴り飛ばしやがった!!ほんと信じらんない。こんなかわいい子に手を出せるなんて、ゴミ以下の屑よ!!」
と、溜まっていたらしい怒りを爆発させた。
「「なんだって?」」
校長先生とレースさんのシンクロした声は、先ほどの亜莉紗さんの「表へ出ろ」より怖かった。
それから、三人は話し続けていた。時折聞こえる言葉が「どこのどいつだ」とか「家ごと潰してやる」とか「いっそ見せしめに・・・」とか、とにかく恐ろしっかった。
ギルド前から大きい通りを来た方向へ戻り、五つ目の十字路で右に曲がり、左に曲がり、また少し行くと三人は止まった。見上げた店の看板には「キカロ服や」の文字。
「藍衣~おいで~」店のドアを押さえながら言うリィーノに、あわてて付いていく。
カランカラン
「いらっしゃいませ~」
ドアベルの音に奥から声が聞こえた。エプロンを付けながら出てきたのは、若い男性だった。茶色っぽい髪を縛っているので、一見チャラいのだけど、顔は真面目そうで主夫が似合いそうな感じだった。
「キカロさん。今日は、この子の洋服を見せてください」
レースさんが私の肩に手を置きながら、そう言った。
「これはこれは、サン先生にレース様までよくいらしてくれました。お嬢さんの服ですね。普段着でしたらこの一帯の商品であればどれでも大丈夫ですよ」
「ありがとう。決まったら呼ぶわ」
案内された場所にはハンガーに掛けられたたくさんの洋服があった。
「藍衣ちゃん。気に入ったものがあったらかごに入れてってね。リィーノ、一着なら買ってあげるわ」
レースさんはそう言うと、服を手にとっては戻していく。
んっ?待って、レースさんが買ってくれる?このお店、高級そう。何もしていないのに買ってもらうなんて、申し訳なさすぎる。
「あの、レースさん?こんなに高そうな洋服を、買ってもらうのは・・・」
ためらいがちに言ったわたしに、服を持ったまま振り返ったレースさんは
「何言ってるの。藍衣ちゃん、あなたは今日から私の娘。服を買うことくらいするし、私の収入を考えれば、大した出費でもないわ」
「そう、なんですか。でも、」
なおも食い下がる藍衣。
「藍衣ちゃん。確かに、何もしていないのに物を貰うのは、嫌かも知れない。でも、本来ならお金を払って、付いてもらう従者にきみは無条件で受けてくれた。これは、それに対するお礼。だから、受け取って」
レースはやさしく言い聞かせた。藍衣は、まだ思うところはあるものの、一応納得した。
「解りました。ありがとうございます」
じゃ、と立ち上がったレースさんは、本当に、いつの間にか一杯になったかごを差し出して
「これ、試着してきて!!」
と言った。
逆らう間もなく、更衣室に入れられた私は、一緒に入れられたかごの一番上のものを手に取る。
ばさっ
ハンガーを持って広げたそれは・・・・
フェミニンな服だった。
「藍衣ちゃん?着かたわかる?」
外から、何やら楽しそうなレースさんの声。絶対にからかっているんだ。なら、着てやる!!
闘争心(!?)に火がついた藍衣は、手に持った服を着ていく。
ギャザーとフリルがたっぷり付いたブラウス。青い生地に銀のラメがところどころ入った、ミニフレアスカート。ひざ上10センチはある。
「藍衣ちゃん着れた?」
外から再びレースさんの声。
はい。と返事をしようとして、目の端に鏡に映る自分がいた。そぉーと鏡を見ると、中には
知的な黒ぶちの眼鏡をかけ、同じく黒髪のボブを右側だけヘヤピンで留た、フェミニンな白いブラウスとミニスカをはく子供がいた。
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ばっと、顔を覆うが時すでに遅し。脳裏にはしっかりとミニスカートをはいた自分が映っていた。
今まで、ロングスカートでさえはいた記憶のない藍衣には、刺激が強かった。
「藍衣ちゃーん?大丈夫?開けるよ?」
ちょっと待って!!!という間もなく
ジャッ
と、カーテンが開けられた。
「まってーーー」
ようやく出た声は、続いたレースさんの声にかき消された。
「きゃーーーーーー」
レースさんはカーテンを開けた瞬間、悲鳴を上げた。
「レース、さん?あの、そんなに似合わないですか?」
何を勘違いしたのか、藍衣ちゃんはそんなことを言い始めた。
似合わない?あほか!!この世に、これほどかわいい子はそういない。目に入れても痛くない。
「あの?レースさん。脱いでもいいですか?」
「だめ」
藍衣ちゃんが、あろうことか早く着替えたいと言い出した。そんなことはさせない。絶対に、だ。
「えっ」
藍衣ちゃんは、驚いたような顔をしている。
「お客様どうかなされましたか」
向こうから、キカロさんが走ってきた。私の悲鳴を聞いて、来たのだろう。丁度いいところに来た。
「キカロさん。大きな声を出してしまってごめんなさい」
「いえ、お気になさらず。では、レース様。また奥にいますので」
「キカロさん。ちょっと頼みがありましてね」
「はい。なんなりと」
「この子、藍衣ちゃんに合わせる小物を選んでほしいの」
「ほぉ、よく似合っていますね。服が喜んでいる。レース様、私キカロが藍衣様を完璧にコーディネートさせていただきます」
そういった二人は、固い握手を結び、帽子や靴の置いてあるスペースへ行ってしまった。一人置いてけぼりにされた藍衣はというと、
「あお~かわいい~っむぎゅ」
リィーノに、効果音付きで抱きしめられていた。
「ほおう、よく似合うね。じゃあ、これも着てみて」
校長先生も、悪乗り(藍衣主観)し始め、そこから約1時間。藍衣は、着せ替え人形と化していたのだ。
「ふう、良い買い物をしたわ」
そう言う、レースさんの両手には片方に3つずつ、計6つの紙袋が下がっている。
あの後着せ替え人形に徹した藍衣は、すごく疲れていた。けれど、かわいいと言われたことは素直に嬉しかったりしていた。顔には出さないが。
藍衣の現在の服装はこうだ。まず、トップス!レースたっぷりのブラウス。(白)七分袖で、袖口に黒のリボンがあしらってある。胸元に、黒の大きなリボン付き。
続いて、ボトムス!ボトムスは、赤のミニプリーツスカート。金のラインが二本入っていて裾でレースが揺れている。
その他!ニーハイソックス。(黒、金ライン) ショートブーツ。(茶、編み上げ)
ラスト!マント!!深い青。金と銀の糸で、裾に星の刺繍のあるかわいらしい一品だ。
ちなみに言っておくが、この世界(国)では、当たり前のようだ。通りを行く人は皆、様々なマントを羽織っている。
リィーノは、ちらちらとこっちを振り返りながら歩いている。正直、恥ずかしいし、そんなリィーノを街ゆく人はちらと見て、笑っていた。お願いだからしっかりして!!
そうこうしているうちに、いつの間にかはじめの場所へと戻ってきていた。ここで、校長先生とはお別れだ。ただ、またすぐ会う気がする・・・なんとなくだけど。
「じゃあね、藍衣ちゃん、リィーノちゃん。藍衣ちゃん、何かあったら学校においで私が居るから。とくに、そこのレースには気を付けなね。その人、そう見えてロリータ趣味があるから。何かされたら、迷わず私に連絡して!!!」
「誰が、ロリコンだってぇ?わ・た・し・は、子供が好きなだけです!!!!!!」
レースさんの叫び声が、広場に響き渡った。
私たちはきっと、周りから変な人認定されただろう。
まあ、それでもいい。私はこの知らない地でも、この人たちが隣にいるのならやっていける気がした。
やさしいレースさん。そこにいるだけで安心できる校長先生。
そして、過保護なお姉ちゃん。リィーノ。
見上げた空は、初夏にふさわしい爽やかな青色だった
次話、ルノーク家にて藍衣ががんばります。
著者も自宅にて、がんばります。なので、
「「「六話もどうぞよろしくお願いします!!」」」(レース、リィーノ、校長)
著)と、盗られた・・・
校長)なんで私だけ役職なの~
私にも、お母様が付けてくれた ルーン という名前があるんです!!
著)ごめん忘れてた。
光超)ひ、ひ、ひどい。というか、光超ってなによ!!まるっきり痛い人じゃん!!
著)すみません。文字変換が、バグっているようです。(まあ、直す気はありませんが)
それでは、改めまして
「五話を読んでくださったみなさん、ありがとうございます。六話もぜひよろしくお願いします!!」