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飛び蹴り女の恋物語  作者: 花奈よりこ
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そして、月曜日の午後ーーーーーーーー。



朝から出かけていた谷崎が、つい先程新商品を引っさげて店に戻ってきた。


赤や黄色のオシャレな星型折りたたみ式ミニテーブル。


すっごくカワイイの。


谷崎は、実家の敷地内にある倉庫の一部をこの店の事務所として使ってるみたいで、国内や海外のいろいろな所から仕入れてきた雑貨や家具達はそこに集結しているらしい。


その事務所や、実家が経営しているホテルや、配達先や仕入れ先など、相変わらず毎日忙しそうに飛び回っている谷崎。


でも、疲れた様子とかはほとんど見せない。


今もこの前仕入れてきたばかりだというこの星柄ミニテーブルをどこに飾ろうかと、嬉しそうに私に話しかけてくる。


どうやらホントに雑貨やインテリア家具が好きらしい。



「なぁ、春姫。こっちの方がいいか」


楽しそうに考えている谷崎。


私はそんな谷崎の顔をちらちら見ていた。


今言おうかな……いや、もうちょっと後にしようかな。


でも、やっぱ早いうちに言った方がいいよね。


早いとこ手を打っておかないと、私も蘭太郎も手遅れになったらえらい目に……。


ドギマギしながら谷崎の顔を見ていたら、ヤツがぱっとこっちを向いたんだ。


ドキッ。



「どうした?」


「え?あ……いや、あの……その……」


「なんだよ。さてはおまえ、オレに惚れたか?」


にやりと笑う谷崎。


「なっ……!ち、違うからっ。そんなんじゃないからっ。ただ………」


「ただなんだよ」


谷崎がポケットに手を突っ込みながら、レジにいる私の方向へと歩み寄ってきた。


私はためらいがちに咳払いをひとつすると、思い切ってヤツに切り出した。



「実はさ……。ちょっと店長に、協力……してもらいたいっていうか。お願いしたいことがあって……」


私は遠慮がちに言いながら、谷崎の顔をちろっと見た。


「お願い?なんだよ」


「うん……。なんていうか……。その、ちょっと電話をしてもらいたいんだよ」


「電話?誰に」


ポカンとした表情で聞き返す谷崎。


「……マザコン男……」


私がうつむきながらポソッと言うと、谷崎がぶっと吹き出した。


「マザコン男ぉ?なんだそれ。なにおまえ、そのマザコン男にでもつきまとわれてんの?」


笑いながら言う谷崎の言葉に、私は思わずパッと顔を上げた。


「なんでわかるのっ?」


「え。オレ、ジョーダンで言ったんだけど。もしかしてマジ?」


げ。


「おまえ、ホントにマザコン男につきまとわれてんの?」


谷崎ってっば、おもしろがって私の顔を覗き込んできた。


「おもしろがらないでよ。こっちはホントに参ってるんだから」


うきーーー!


私は思わず髪をグシャグシャ。


すると、ケラケラ笑っていた谷崎が私に言った。


「読めたぜ。おまえ、オレにソイツに電話しておまえの男のフリしてくれっつーんだろ」


げ、なんでわかるの?


ビックリして谷崎を見ると。


「だろ?」


「そう……だけど。なんでわかったの?」


「わかるよ、なんとなく。ーーーっていうことは、春姫は今おひとりさまか」


にやっとしながらアイツがケロリと言った。


「わ、悪い⁉︎どうせ私はおひとりさまよっ」


「悪くない。で、要するにおまえは好きでもないマザコン男にしつこくつきまとわれて困ってるというわけだ」


「うん、まぁ……。まだそこまでじゃないんだけど、ちょっといろいろ面倒な雰囲気になってきちゃって……。それでちょっと、男気ある店長に私の彼氏のフリとかしてもらって。その……オブラートに包むと、『もう、関わらないでもらえるとありがたいです……』的なことを、うまく言ってもらえると、非常に助かるというかなんというか……」


私がたじたじしながら言うと。


「オブラートに、ね」


谷崎が笑った。


「わかった。オレに任せとけ」


え。


「ホント⁉︎」


予想以上に快く引き受けてくれた谷崎に、私はちょっと驚いてしまった。


「ソイツに春姫のこと諦めさせればいいんだろ?バッチリやってやるよ。っつーか、なんか懐かしいな」


「え?」


谷崎がクスクス笑ってる。


「いやさ、前にも同じようなことがあってよ。まぁ、もうずいぶん前の高校時代の話なんだけど。同じクラスの女子がよ、やたらいしつこいアニメオタクにつきまとわれててさ。なんか知らないけど頼まれて、オレがその女子のの男のフリして、もうつきまとうな的なことを言いに行ったことがあってさ」


「それで……。その時はうまくいったの?もうつきまとってこなくなったの?」


「おう、バッチリよ」


イタズラっぽく笑う谷崎を見て、私の胸の中がパァッと明るくなった。



よかったぁーーーーーーー。


谷崎にお願いすれば、きっとあのマザコン男もあの妹も諦めてくれるに違いない。


なんて頼もしい助っ人だぁっ。


「お願いするよ、店長!あ、それと。そのマザコン男の妹にも、ちょっと念を押して言っておいてもらいらいことがあるんだけど……。いいかな」


「妹?」


「うん。これまたちょっと面倒な話で申し訳ないんだけど……。実はその妹が、私の仲いい年下の幼なじみにひと目惚れしちゃって。まぁ、それだけなら別にいいんだけど。その妹がちょっと……いや、かなりヤバイっていうかなんていうか………」


私がげんなりし気味に言うと。


「?そのマザコン野郎の話はわかったけど。妹の件は、オレが出る幕なのか?」


「それが出る幕なんだよ。いや、むしろその妹の方が問題というか……」


にわかにはてなマークの谷崎。


「……実は、ちょっといろいろあってさ……」



こんな話をするのはホントは気がすすまないんだけど、こんな変なお願いを快く引き受けてくれた谷崎だから。


一応、ことの始まりからちゃんと説明した方がいいと思って。


私は、この騒動の発端となったあのお見合い破談劇の一件からこれまでのことをアイツに話して聞かせたんだ。


ひととおり話し終えて、ちょっとため息混じりで私がうつむくと。



「ぶ」


谷崎が吹き出して、突然お腹を抱えて笑い出したんだ。


「ぶはははは」


「ちょ、ちょっと!なにもそんなに笑うことないでしょっ」


「だってよぉ。おまえ、おっもしれーことやってんなぁ。見合いさせられて、破談させて、それでも惚れられて。ついにはその妹まで登場ときたもんだ。おまけにソイツはおまえの幼なじみにひと目惚れときたよ」


谷崎ってば、目に涙を浮かべながらゲラゲラ笑ってやがるの。


「笑い過ぎっ」


そりゃまぁ、確かにちょっと笑えるっちゃ笑えるけど。


でも、こっちは今心底困ってるんだよ。


「わりぃ、わりぃ。春姫にとっては一大事だよな。そのおまえの幼なじみにとっても。よし、わかった。春姫のことも、おまえの幼なじみのことも、まとめてオレがガッツリ話つけてやるよ」


「ホント⁉︎」


「おう、任せとけ」


「ありがとう、店長!恩にきるよっ」


私はカウンターによしかかっている谷崎に、パンッと手を合わせた。


すると。


「ただし。条件がひとつある」


え?


「条件?」


ポケットに手を突っ込んだまま、くるっと私の方を向きにやっとする谷崎。


「な、なによ」


私が一歩後ずさると、谷崎の口からいきなりこんなひと言が飛び出したんだ。



「ーー今度の日曜、オレの親父とお袋に会ってくれ」



へ?


目をパチクリ。


谷崎のお父さんとお母さん……?


なんで?


さっぱり意味がわからずポカンとしている私に、アイツは更にとんでもないことを言い出したんだ。



「おまえも、オレの彼女のフリしてくれ。一応結婚も考えてるってことで」



「………………」


……彼女のフリ?……結婚………?




「え、えええーーーっ⁉︎」








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