第二階層での初めての戦い
叡智と共に俺の名前を考え、遂に名無しからスフェア・ブラッドレイという少しカッコイイ名前が決まって浮かれている最中に邪魔者が現れた。
その邪魔者は、大きく厚い黒い鎧を身にまとい、背中には漆黒に塗られた大剣があり、一般的にいう直剣を腰に携えて大きな黒馬に跨り草原を我が物顔で闊歩している巨人の騎士だった。ただ、普通の騎士とは違いその巨人と黒馬は首から上がなかった。
叡智、あれはなんだ? まぁ、だいたい予想はつくけどさ。
『解。あれはデュラハンと呼ばれるランクC+の魔物です。デュラハンは大体始めに馬の上から直剣を抜き攻撃し、相手が疲弊した所で馬から降りて背中の大剣でとどめを刺すという手段をします。なので馬から降りたところで攻撃をしてください。ですが、C+の中では比較的強い魔物なので気をつけてください』
やっぱりデュラハンなのか。まぁ、概ねそうだろうなと思ってはいたけどさ。
『マスター。デュラハンがこちらに気づいたようです。直ちに闇魔法の陰の拘束を放って足止めをしてください。その後は直ちに退避してくださいね。じゃないと今のマスターだと死んでしまいますので』
まぁもう死んでるけどねってやかましいわ! なんだ? ギャグのつもりだったのか?
『解。そんなつもりはありませんでした。ですが、そんなことよりも早く唱えてください。詠唱は既に終わっているので』
あぁもう! 分かったよ。陰の拘束!!
俺がダークバインドと唱えると黒い網のようなものがデュラハンに向かっていき、命中した。だが、命中したのはデュラハンが跨っている黒馬だけだった。俺は思わず失敗したか、と思ったがそれは杞憂だった。
デュラハンは黒馬が急に止まったことによって鞍から離れ、背中から地面に叩きつけられてしまっていた。背中に背負っていた大剣は、デュラハン自身の体重と着ていた鎧の重さによって深いヒビがあちこちに入ってしまっていた。
俺はその様子を見て思わずデュラハンを不憫に思ってしまった。そんな様子に気づいたデュラハンは地団駄を踏み、鞘から直剣を抜きこちらに走ってきた。
俺は闘術スキルと身体操作スキルを発動させ、先手必勝と思いデュラハン脛に蹴りを入れた。デュラハンはその攻撃でバランスを崩したのか今度は正面から地面に倒れてしまった。
鎧は土で汚れて少しだがヒビが入ってしまって、大剣はあと一振しか持たなさそうなくらいにまで成り下がっていた。
俺はそんなデュラハンを見て
このデュラハン、今後生き残れたとしても大丈夫なのか?
と思ってしまい隙をつくってしまった。
その隙を狙ってデュラハンは直剣で斬りかかってきた。俺は思わず腕を胸の前でクロスさせ受け身をとったがデュラハンの直剣は予想以上に鋭かったらしく、両腕を切断されてしまった。
俺は両腕がなくなったことでパニックに陥ってしまった。腕がなくなったことにより切断部分から大量の血が出てきたのを目の当たりにしたのも原因だったのだろう。だが、幸か不幸かそれは突然表れた。
<固有名 スフェア・ブラッドレイ は耐性スキル 混乱耐性とユニークスキル 血を求めし者を習得しました>
その声を聞いた瞬間俺の頭が一気に冷たくなっていくのを感じた。だが、それとは反対に頭は冷めているのに心の奥底は敵の血を浴びたいという思いに染まっていった。
その渇望により、俺は正気を失い血を浴びたいという本能のままにデュラハンの鎧の脆い部分を脚で砕き、骨を折り、鎧から顕になった肉に齧り付き、血を啜った。
気がつくと毒々しい色合いをした小川から写った己の姿をじっと見つめていた。デュラハンとの戦いはいつの間にか終わりを告げ、全身血塗れの俺が小川に写っていた。
あぁこのまま壊れてしまうのか。そう心のどこかで思った。いや、思ってしまったんだ。そう思った時叡智の声が聞こえてきた。
『マスター。血に飢えるのはいいのですが正気はしっかりと保ってください。じゃないと元通りにする事が出来ないので』
全く俺のスキルのくせに相変わらず生意気だな。そう思うと、心を染めいてた渇望がスッと引いていき俺は正気を取り戻した。
『お帰りなさいませ。マスター』
あぁ。ただいま。
ただいまと言った時、俺は一人じゃなかったんだと分かり、嬉しくなった。俺はそんな気持ちを胸に秘め、気を失った。
種族 屍喰鬼 Cランク
状態 正常
名前 スフェア・ブラッドレイ
Level 45/45
HP 147
MP 193
ユニークスキル
叡智・血を求めし者
スキル
暗視・闘術5・身体操作・保有魔力上昇
魔力感知・魔力操作
耐性スキル
混乱耐性
魔法スキル
水魔法3・闇魔法2
混乱耐性とは混乱状態になりにくくなるというスキルである。




