拝啓。両親へ。この度俺はスケルトンになりました。
俺は今薄暗い洞窟にポツンと一人で突っ立っていた。周りには俺以外に誰もいない。なぜこんなところで一人でいるのかというと、ちょっとしたわけがあった。
俺は今日をとても楽しみにしていた。なぜなら今日は待ちに待った修学旅行だからだ。修学旅行先は長崎と福岡。この二つの県を5日かけて周り、6日目で家に帰ると言った流れだ。
俺が住んでいる街はどこにでもある普通の街だ。そこで俺はウキウキしながら学校に向かっていた。
「おっはよー」
通学の途中に突然俺の後ろから女の声が聞こえ、俺の背中に柔らかい何かが当たる感触がした。
「もう! ウチを置いて先に行くなんて! 罰としてコンビニのロイヤルスイーツを奢りなさいよね!」
俺は振り返り、その声の主を見た。その声の主は俺と同じ学校に通い、俺の家の隣で暮らしている幼馴染みの武藤綾。
成績優秀、スポーツ万能、八方美人。オマケにスタイルも良く、さまざまな男子に告白されているらしい。だが綾いわく好きなやつがいるから付き合わないのだそうだ。
俺?俺は普通だよ。成績は中の上でスポーツも平均並み、容姿も平凡を絵に描いたような感じで、モテるわけでもない。どこにでもいるような普通の男子高校生だ。
俺は綾と他愛ない話題をしながら校門を通り教室に入り自分の席の近くでクラスメイトと駄べる。いつもやっている事だ。
だが、今日はいつもとは少し違いクラス全体が修学旅行を楽しみにしていた。そんな中、先生が教室に入ってきて「バスが来たからバスに乗り込め」とめんどくさそうに言った。
バスの席順は決まっておらずみんな好きなように座っていた。俺はバスの前の方の席に座った。そして俺の横の席に綾が座った。俺はその事に突っ込んだりはしなかったがあえて聞いてみた。
「なんで俺の隣に座るんだ?」
「そんなのアンタの隣が空いてたからに決まってんじゃん」
即答だった。もちろん俺の隣以外にも空いている席はたくさんある。にもかかわらず俺の隣に座るのは全くもって理解不能だ。
バスが出発してから5時間が経過した。周りは寝ているやつや暇そうなやつ、話をしているやつや本を読んでいるやつなどとさまざまだった。
俺は暇という訳ではなかった。なぜなら綾の相手をしていたからだ。綾は暇な時、腕を組む癖があり、暇すぎると俺に向かって無理難題を言ってくる。
俺は無理難題を綾がいう前に綾に話題を振ったり、俺が考えた問題やなぞなぞを綾に出したりしていた。だが俺の心の中は
(もういっその事異世界に召喚されたり、死んで転生したい。)
となっていた。
そして運がいいのか悪いのかそう思った途端、バスが急に山道のガードレールに向かって突進した。
バスは山道から飛び出して崖から転がった。木々の枝が窓を割って入ってきたり、細い木の幹がバスを貫いたりした。
俺はシートベルトを外して安全な場所に避難しようと移動したらバスの床から木が貫いてきて俺の腹の左半分を抉った。
俺はあまりの痛みに意識を失いかけるが気合で耐えた。だが、もう助からないと本能が訴えてくるのでせめて綾だけはと思い綾を探すと腹を木で貫かれた状態の綾を見つけた。
綾はまだ呼吸をしていて、かろうじて生きていた。そんな綾を見て俺は頭が真っ白になりプツリと意識を失った。
そして冒頭に戻るというわけだ。結論から言おう。全くもって理解できない。ただ今現在分かっているのは俺が転生したこと。そして転生先がスケルトンだということだ。
「カタカタカタカタ」
声が出ない!……まあそりゃそうだな。だって骨だもん。
それはそれとして今一度辺りを確認する。やはり辺りは土と岩だけだ。でも少しおかしい。光る物は何も無いのにも関わらず辺りを確認できるのは何故だ?
『解。それはあなた様がスキル暗視を所持しているからです』
周りには俺以外誰もいないのに声が聞こえてきた。
お前は誰だ!?
と心の中で訴えるとその声は親切に答えてくれた。
『解。私はあなた様が所持しているユニークスキル叡智です』
その声の主は俺のスキルだと言った。だが俺はそこまで馬鹿じゃない。なので俺しか知らないようなことを聞いてみた。
お前が叡智なら俺のことを全部知ってるのか?
『解。はい。全部知っています』
なら、俺の趣味はなんだ?
『解。あなた様の趣味は異世界ものの小説を家族や友人にバレないように書くことです。更に言うとあなた様は中学生のとき、メモ帳に俺の名はダー(それ以上言うな!!)はい。分かりました』
こいつは間違いなく俺のスキルだ。それと同時に俺の天敵でもある。俺は心の中でそう確信した。