復讐
そしてまた朝日が昇り、僕は目を覚ました。ついにこの日だ。ハットが言っていたようにすればどうにかなるかもしれない。ともかくやってみよう。辰弥は、復讐を強く胸に誓っていたが、やっぱり少し不安な部分もあった。
学校だ。ついにここまで来た。そのうちまたあの連中が僕の周りを囲んで悪役だ悪役だ言ってくるんだろう。
「あ!悪者の息子だ!今日もきてるぜw 害のある奴は学校なんかにくるんじゃねーってのw」
始まった。これはもういつも通り、すっかりこの流れに慣れてしまった。
「悪者は帰れw」
だんだんと辰弥の胸が締め付けられて言った。そしていじめっ子たちは辰弥の周りを囲んで言い始めた。
「わーるもの!わーるもの!わーるもの!わーるもの!」
もう我慢の限界だ。今までいじめに抵抗するなんてできっこないと思っていたがもう今は違う。言うんだ、言うんだ辰弥。
「いい加減にしろ・・・」
「え?なんか言った?」
「いい加減にしろって言ってるんだ!こんなにも酷く言われる側のこと考えたことあんのか!自分が僕のように言われていたらどう思うんだお前らは!それにお父さんだって本当に悪い奴なんじゃない!あれは役でやってるんだよ!そんなこともわからないのか!お父さんはその役をやってお金を稼いで僕たち家族に十分な生活をさせてくれている!それを悪者呼ばわりするのか!」
「・・・」
あたりは一瞬にして静かになった。辰弥は夢中になってめちゃくちゃに話していた。いじめっ子たちはすっかり驚いて何も返す言葉がなかった。あの辰弥が抵抗したことに驚いていたのだ。その辰弥は、目に明らかな憎しみを浮かべていた・・・。
「辰弥君、そんないじめ受けてたんだ・・・」
女子の声がした。何処かで聞いたことのある、一人の女子の声だった。
「そんなのひどい、自分がやられたらみんなはどう思うの?嫌でしょ?みんなは人が苦しんでる姿を見て嬉しいの?」
みんながその女子の方に顔を向けた。そしてみんな驚いていた。辰弥でさえ、驚きを隠せなかった。
「先生呼んでくる」
「待って!それはやめて!」
そういう女子に対していじめっ子たちは言い返した。するとすぐに、
「なら自分で先生に言う?」
と言い返した。
「それも嫌だ」
といじめっ子たちが言うとそこにもう彼女の姿はなかった。
彼女は先生を連れてきて、事情を全て話した。いじめっ子には謝ってもらった。なんだかとてもスッキリした気分だった。先生を連れてきてくれたその女子は、友達の華苗だった。その時辰弥の胸の中に、何か込み上げるものがあった。今までに感じたことのないような何かだ。辰弥はこの時、この感じが一体なんなのか大体見当がついていた。