屋敷に住む不気味な男
ここは小さな田舎町だ、特に何もない、名物も、名所も、本当に何もない。僕はそんな田舎町に住む小学生、僕は前からいじめを受けていた。僕の周りに助けてくれる人は誰一人いなかった、と言うより、気づかれなかった。
こんな環境にもう耐えられず、ある日僕は町の山に駆け込んで行った。もうこんなの嫌だ、山で隠れて生活をすればいいんだ。そう思い半ギレで、山を駆け上がって行った。頂上に着くと、そこには見知らぬ家があった。
「あれ、こんなところに家なんかあったっけ」
そう不安に思いながらも、ドアをノックした。窓は曇り、縁には蜘蛛の巣が張っている。その瞬間ギィーとドアが開いた。そこには男が立っていた。髪はボサボサ、顔色は白っぽい、まるで血の気がないようなくらいだ。その男はタキシードを着ていた。
「やぁ、お客なんて珍しいな、いつぶりだろうか、さ、お入り」
と男は急に笑顔になって僕を迎えてくれた。
「お...お邪魔します」
と言って僕は恐る恐る家に入った。
「さ、どうぞ座って」
男に案内されて、僕はソファーに座った。そして男も小さな肘掛け椅子に座って言った。
「自己紹介がまだだったね、僕はシルク・ハット。ハットとでも呼んでくれ、遠慮なんていらない、気軽に呼んでいいんだ。君はちょっと遠慮してるね、ああ、そうだ君の名前は?」
僕はドキッとした。正直、めっちゃ怖かったのだ。だが僕は言った。
「僕は...辰弥と言います」
ハットは体の重心を前に倒しながら言った
「おお、辰弥というのか!いい名前だ。ところで、君はどうしてここまで来たのかな?」
辰弥はハットがどんどん話題を変えていくことにとても驚いていた。そうすると突然
「話したくないそうだな、どれ、私が君の考えていることを当ててみよう」
と言い出した。辰弥は急に怖くなった。ハットが怖いわけではない、ハットの表情はいたって普通だ。でも何か、とてつもない威圧を感じていた。ハットが言った。
「君は僕の名前に疑問を持っていたそうだな、なんで帽子みたいな名前なのか...と」
的中だ。ハットの名前を聞いたときからずっとそう思っていた。
「訳を説明しよう、この名前は父さんがつけた名前でね。子供の頃はとてもおかしくてこの名前が嫌いだった。でも今は嫌いなんかじゃない。とても大好きだ。なんでか、その名前がまさに自分!って感じがして来てね。ああ、父さんはシルクハットが大好きでね、この名前をつけたんだ。生前、父さんから授かった帽子は今でも持ってるよ」
そう言ってハットは指を鳴らした。そうするとクローゼットが勝手に開き、シルクハットがあふれ出した。
「さて、もう一つ当てよう。君がここに来た理由を。」