表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/77

川越宿

  2人と1人。謂わずと知れた数馬、茉莉、少し離れて粂八が予定より少し遅れて川越に着いたのは暮れ六つの頃だった。さすが江戸から離れた田舎で、胡散臭いのやら浪人やらがそんじょそこらでたむろしていた。3人が宿場町にかかろうとしたとき、2〜3人の百姓が血相を変えて数馬たちの脇を駆け抜けていった。すかさず粂八がその後を追う。いつものことながら粂八の行動力には感心させられる。きっと何らかの情報をもたらしてくれるに違いないと期待し、一馬は今夜の宿を探すことに専念することにした。

  運よく2件目で人の良さそうな主人のやっている宿に2人は草鞋を脱いだ。昨日、今日と歩き通しだったので茉莉は足が痛そうだった。どれ、揉んでやろうと数馬は着物の上から丁寧に揉みほぐしてやった。さすがに素足に触ることははばかられたからだ。男といえば父と兄しか知らない茉莉にとって数馬の行動がいちいち目新しく感動的であった。増してすこぶる美男子なのだ。天は二物を与えないとか、色男金と力はなかりけり。などという言葉はこの風太郎という不思議な魅力を持つ男には存在しないように思えた。

数馬の按摩は上手くツボを押さえていたので茉莉の足はすっかり良くなり、夕餉ゆうげが終わり風呂から上がった頃には痛みは全くといっていいほどなくなっていた。昨晩と同じく布団を離して仕切りを作ってやると、「お休みなさいませ。」と茉莉のほうが先にスヤスヤと寝てしまった。ようやく信用されたか、とホッとため息をつくと、障子の向こうに人影が見えた。

「粂か、入れ。」

茉莉を起こさないように声の調子を落とす。

「へい。」

音もなく障子が開き、すっと粂八が滑り込んできた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ