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縁談

  「さて、若様。お嬢様の縁談と申されるのは如何いかなお話なのでございますか?さきほどお奉行と仰いましたが、勘定奉行、千葉帯刀様からのお話なのですか?」

「ああ。父上が直接拝聴した。」

日下部家の当主である主水もんどは、勘定吟味役に就いており、その嫡子宗太郎も同じく勘定奉行所に出仕していた。何事もなければ主水もんどが引退すれば宗太郎が吟味役になるはずだった。ところがその千葉からの薦めである茉莉の縁談が破綻しようものなら、その暗黙の約定も危うくなりかねない。それゆえ父と息子は茉莉の失踪に驚き怒り、その行方を躍起になって捜さなければならないのだ。

「で、お相手の方は?」

「うむ。お奉行の話だと今は部屋住みの身なれど、現当主が病弱なためいずれはその後を継ぐだろうといわれているお人らしい。」

「してそのお方の名は?」

「お目付け鏑木静馬殿のご舎弟、数馬殿と申される。」

「お目付け殿でございますか。してそのお方の評判は?」

「儂もいろいろ当たってみたのだが、悪い噂はとんと聞かなんだ。北辰一刀流皆伝、昌平坂学問所でも3羽がらすを黙らせることのできる唯一の人物らしい。しかも眉目秀麗にして大目付様の誉れ高く、それを鼻にかけることもせず、気さくで義に溢れているとの評判だ。」

眉目秀麗という言葉は、稲の脳裏に富良風太郎を思い出させた。だがまさかそのような筈はない。いくらなんでもそんな偶然・・・しかしあの名前はいかにも偽名だったし・・・それにあの気品と態度は到底一介の素浪人とは思えない。もしあのお方が鏑木数馬様なら、茉莉は要らぬ人捜しに出かけたのではあるまいか。あのお方なら安心して茉莉を任せる事ができる。稲は長年の勘からあの男・・・富良風太郎と鏑木数馬を同一人物と決め付けた。こうなるとそうあって欲しい、がそうに決まっている!そうだ!という風に断定してしまうのが世の年寄りの常なのであろうか?稲も例外ではなかった。鏑木様とご一緒なら何もかも安心、とホッと胸を撫で下ろした。

「稲。何か知っておるな?!」

心の動揺を見透かしたかのように宗太郎の目が光った。

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