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「…う~ん。あの男強かったわ…」


「うん…。何だか悔しいよ…。もっと修行しなきゃぁ~」


 城に戻り、後宮の与えられた部屋に着くとリンディとエクレアは悔しそうな顔をする。


「仕方があるまい。相手の技量が上だったんだ。それに本来のお前達は表より裏での活動が主で戦闘技術を教え込まれている。土俵の違いが差に現れたんだな」


「でもあんたを守るのにもそうも言ってられないでしょう?」


「そうだよ~。後一歩クノーラさん達の助けが入るの遅かったらイリアちゃんにアレ出させる所だったよ?」


 その二人の言葉にイリアは肩を竦める。


「まあ、アレを出した所であの男が大喜びしそうな状況ではあったがな」


「なるべくイリアは後ろで控えててね」


「そうだよ~。本来ならイリアちゃんが出て来て良い筈が無かったんだよ。補助魔法は凄く助かったけど。でもイリアちゃん、リンディちゃんの言う通り後ろの方にいてね。それが私達のお仕事でしょう?」


 更なるリンディとエクレアの嘆願にイリアはすぐさま首を緩く振る。


「いや、あいつがしつこかったら今度は私が相手をする。あいつの望み通りな…」


「………あいつが熱狂的な奴じゃ無い事を祈るわ…」


「私も…」


 主の返答に二人は揃ってため息を吐いた。


「あの手の男はしつこいぞ。絶対に相手するまで執拗に追い掛けて来る」


 続いた言葉にリンディとエクレアもその通りと思いながらもイリアも交えてげんなりと肩を落としたのだった。








 その頃、熱狂的やらしつこい男やら言われた奴は…。


「へーっくしょっ!」


 くしゃみをしていた。








「うあ~~~。今回は結構被害が行ったな…」


 帝都城内にある一室でクノーラは盗賊騒ぎの後始末の書類作業に追われていた。幸い死者はいなかった。だが、今回一番被害を受けたのは人ではなく建物だった。器物損壊の被害が多かったのだ。


「軽症者が10名程…。けど捕らえた盗賊は30名近くか。よくもまあこんだけわんさかと居たもんだなぁ…」


 死者や重傷者がいなくて良かった。クノーラは書類をばさりと机の上に広げる。


「それ程までにジルザールの影響力が強かったのだろう。最初の山で捕らえた盗賊も20名近くいただろう」


 その行動を腕組しながら同じ様に書類に目を通していたデュオが言う。


「国内にこれ程規模の盗賊団を持っている腕力は賞賛に値しますね…。しかし近年帝国近辺や国内で戦乱になった場所はありません。生活に困窮している村々も保護にかなりの力を注いでいる筈です。それなのに何故こんなにも多くの盗賊がいるのでしょうか」


 摂政たるラドルフも政務の仕事を片付け、此度の騒動を聞き付け一緒に報告を聞いていた。その報告でラドルフはその部分が気になっていた。


 過去に国が困窮し、弱者が盗賊になると言う話を多く聞いていた。


 しかし、此処数百年先代から今の代の皇帝に至るまで大きな戦は一度も無い。


「…部下達の報告によると結構遠くの国からやって来て盗賊になっている奴らもいるらしい。帝国近辺だけじゃ無く、ジルザールの拠点は各国にあると見て間違い無いだろうな」


「かーーーーっ! 何だってこう無駄にカリスマ何だよ!! 今は后選定時期で忙しいってーのに! しかもシュッセル国の姫さんまで狙っているしよ!!」


「ジルザールの狙いは后選定時期だからこそでしょうね。今は何処もかしこもその話題で持ち切りですから……。ですがシュッセル国の姫君が狙われる理由が未だに良く分かりませんね」


 シュッセル国は確かに豊かな国だ。だがそこの姫君に狙いを定める理由が分からない。


「…やはり彼の者の子孫と言うのが関係している可能性があるな」


「しかし、既にそれは失われたと言う話を聞き及んでいますが…」


 デュオの言葉にラドルフが難しい表情で答える。


「その辺はシュッセル国の内部の事。表と裏で伝わる事は常に一緒とは限らない。あの姫の存在の様に」


「そうだよなぁ~。シュッセル国の人間って俺、今まであんまり会った事無かったから詳しく無かったけど、結構平和呆けした国って認識だったんだよなぁ…」


 気まずそうにクノーラが言う。


「シュッセル国は我が国よりも長い時を無戦争で過ごしていますからね。他国に比べてのんびりとした気質でもある様ですし…。ですが、デュオやクノーラの話を聞く限り、お付の侍女は相当の腕前ですね」


「ああ。二人掛かりとは言え、あのジルザールとやり合えるだけの実力はあった。それに姫さんも驚いた事に結構高度な補助魔法を使ってたな」


「我が国に集っている皇帝の后の座狙いの姫君方では低級の回復魔法がせいぜいでしょうね」


「それだけでは無いな。俺の見た所、あの姫は侍女二人よりも遥かに強い。今回は補助に回っていたが、それは確実だ」


「ジルザールに狙われている理由はそれか…?」


「可能性が一番高い。あの手の奴は強い奴と見たら実際にてやり合わないと気が済まない質だ」


 デュオの断言にクノーラもうんうんと納得した様に頷く。


「私はジルザールに実際に会ってもいないので何とも言えませんが、二人がそう言うのであれば確実でしょうね…。ですが…やはりシュッセルの姫君は面白い方だとは思いませんか?」


 ちらりとラドルフはデュオの顔に視線をやりながら言う。


「まあ、そうだな」


 そんなラドルフの問いにデュオは一言そう返すのみ。


「兎に角姫さん達には悪いけど暫く城内にいて貰うしかねーなぁ…。可能性があるなら城内にいて貰うのが一番安全だし」


「それもそうですね…。まあ、城内も安全…と言い切れませんが」


 その言葉にデュオとクノーラは首を傾げる。


「どう言うこった」


「他国の者達の合戦が激しさを増している様です。今回の外出の件でシュッセル国は標的にされた様だと先程監視している者から連絡がありました」


 ラドルフの言葉にクノーラはげんなりした表情を作り、デュオは何処と無く面白そうな顔をして話を聞いた。


「何処の愚か者だ……?」



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