育成期間0年1ヵ月1週間
(・・・ふざけ・・)
(・・・どれだ・・・わた・・・・)
煩い。
(・・・出てい・・・もう・・・)
(ロイ・・・・・どうし・・・・・)
煩い、煩い!
(お兄・・・・・帰っ・・・・)
(なぜ・・・・)
やめろおおおおおおおおおおおおおおッ!!!
・・・・・
久しぶりに嫌な夢を見てしまった。
頬には、涙の伝った跡が残っている。
・・・もう、3年だぞ。
俺は、いつまで縛られているつもりだ・・・?
ただでさえ、今置かれている状況で神経が擦り減っている
というのに、こんな物を見るなんて。
朝から最悪な気分だ。
窓から空を見上げる。
今日の天気は曇天。
途中から、雨が降り出すかもしれない。
しばらくの間、ベッドで項垂れる。
あの夢を見た日は、やる気など微塵も起きない。
どれだけ情熱を燃やそうと、あの夢はそれを易々と消し去る。
しかし、部屋の隅でだらしなく眠っているコッコを見て、
どうにか気持ちを持ち直す。
・・・気持ちが沈んだからと言って、訓練を疎かにはできない。
そう、魔獣が強くなれるかどうかは、俺に掛かっている。
そして、俺が夢を掴めるかどうかは、この魔獣に掛かっているのだ。
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案の定、午後からは大量の雨粒が育成場へ降り注いだ。
ほとんどの候補生は、早々に訓練を切り上げ校舎へと走っていく。
そんな中、俺はコッコと共に訓練を続ける。
雨に濡れた服が肌に纏わりつき、不快だが仕方がない。
我慢しつつ、魔獣の訓練を見守る。
コッコは、雨で泥濘始めた地面を
踏みしめながら懸命に走っている最中だ。
コッコの羽毛には撥水作用があるらしく、
雨水を羽が吸っている様子はない。
そんな魔獣の姿を見つめつつ、俺はコッコの性格を推察する。
魔獣を育成・戦闘させるにあたり、性格というのはとても重要だ。
いくら鍛え抜いた魔獣であろうと、敵を目の前にして足が竦むような
臆病者では話にならない。
性格に応じて、魔獣に合った育成や戦闘スタイルを与えていくのも
従魔士の大切な役割なのだ。
コッコはおそらく真面目か、負けず嫌いのどちらかだと俺は踏んでいる。
この1ヵ月あの魔獣を見てきたが、まず間違いないだろう。
育成していく上では都合のいい性格だ。
戦闘面でも、特に不利になるような性格でもない。
・・・まあコッコの場合、性格以前の問題ではあるのだが。
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コッコが戻ってきたところで、さらに雨脚が強くなってきた。
雷が近くに落ちる音も聞こえるため、仕方なく俺とコッコも校舎へと向かう。
校舎内では、従魔士候補生達が各々の魔獣の自慢話で盛り上がっていたが、
その輪には加わらず、真っ直ぐ宿舎へと足を運ぶ。
後ろから何か言われた気もするが、無視する。
連中のくだらない話など、聞くだけ時間の無駄だ。
それに濡れたままでは、風邪をひいてしまうじゃないか。
そう自分に言い聞かせ、自室へ急ぐ。
・・・いつの間にか、俺は走っていた。
連中から遠ざかるように。




