育成期間0年0ヵ月3週間
雲1つ無い、晴れ渡った空。
照りつける太陽によって火照った体を、心地よい風が包み込む。
そんな、陽気な昼下がり。
俺は、魔獣育成所の隅に陣取り、魔獣の育成に励んでいた。
史上最弱の魔物「コッコ」。雑魚の代名詞であるゴブリンにさえ劣る
このニワトリモドキを、どうすれば強くできるのか。
その答えは、未だに闇の中だ。
コッコを鍛える合間にいくつもの書物を読み漁ってはみたが、
打開策足り得る知識を得ることはできなかった。
書物に名を連ねる先人達の中に、コッコを育て、鍛え上げた物好きなど
いなかった。ということだろう。
先人の知恵。闇を照らす松明は、都合よく落ちてはいないらしい。
他の候補生達を視る。
魔獣達へ指示している訓練内容は、どれも書物に綴られた内容を
復唱しているかのように寸分違わない。
そんな彼らに思うところはいくつもあるが、思考は途中で中断される。
与えられた訓練を終えた魔獣が戻ってきたためだ。
魔獣コッコは、重晶と呼ばれる訓練用のマジックアイテムを背負い、
息を切らせながらこちらを見つめている。
重晶は、装備した者の体力値に応じてその重量を変化させる。
魔獣のみならず、人間の鍛錬でも使用する機会の多いポピュラーなアイテムだ。
コッコに訓練を課し始めてからというもの、
俺はコッコをひたすら重晶付きの状態で走り回らせている。
現状の敏捷性は酷いの一言であるが、腐っても素早さに秀でた鳥系モンスターだ。
鍛えれば、それなりの敏捷性を確保できるはず。
・・・えらく楽観した考えではある。
だが、少しくらいは、希望を見出したい。
俺の、魔獣から。