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育成期間0年4ヵ月4週間

いつものように平原で訓練を行っていたところ、コッコが早々に戻ってきた。


まだ訓練に送り出して幾分も経っていない。

早く訓練に戻るように指示するが、どういうわけかかたくなに拒むコッコ。

仕草から判断するに、どこかへ俺を連れて行きたいようだ。


このままでは訓練にならない。

故に、仕方なくコッコについて行くことにした。


・・・もし仕様のない事だったら、またコッコの頭にタンコブを作るつもりだ。


--------------------------------------------------------------


目の前には、人間が一人。

いや、人間だったモノが一体、か。


コッコが俺に見せたがっていたのは、まさかのほとけ

死んで数日は経過しているのだろう。周囲には独特の悪臭が漂っている。


子供の頃から家畜が「食糧」に代わっていく光景をよく目の当たりにしていたからか、

死体に忌避感きひかんはない。きっと慣れなのだろう。


取り敢えず、目の前の仏を観察してみる。

仏(身体的特徴から男だろう)は、褐色の外套に傷だらけのレザーアーマーを身に帯び、

右手には折れた片刃の直剣が握り締められている。


見た目はどこにでもいる普通の冒険者。


普通じゃないのは死因だ。


体中に特徴的な斑点が浮き出ている。典型的な毒状態の末期症状だ。

死に顔は苦悶に満ち、安らかな死とは無縁の最後だったことが推察できる。



解毒薬さえあれば助かっただろうに・・・。



少しの間、名も知らぬ男に僅かばかりの同情の念を送る。

死ぬ時は、こうも苦しみながら終わりたくはないものだ。


しかし、コッコが見せたかったのはこれだけか?

ならば、あいつの頭上に馬鹿でかいものを1つ・・・・・。


思考は中断され、目の前の物体へ意識が傾く。

視線の先には、収納ボックスの小型版マジックアイテム。

「収納バックパック」が横たわっている。



・・・・・・



・・・物盗りは犯罪。そんな事は子供でも知っている。

そう、「人間」から盗むのは犯罪。


しかし、「人間の形をしたモノ」から何を物色しようと、それが問題になることはない。

屁理屈に聞こえるが、世の中そのように回っているのだから仕方ない。

そう、仕方のないことだ。


なので、ここは人間の「欲」に従い、使える物はありがたく頂戴することにした。


さっそくバックパックに手を差し込み、中身を掴み出す。

他人のバックパックは、中身を知らなければランダムにしか

アイテムを取り出せないのが難点だ。

まあ、何が出るのか分からないのは、楽しくもあるが。


バックパックの中から出てきたのは、赤く鈍い光を放つ拳大の石。魔石だった。


色から察するに、火の魔石か。

どの程度の物か「鑑定」のスキルで確認してみるが、全く読み取れなかった。

今のスキルレベルで駄目なら、相応の純度を誇る魔石ということになる。


俺としては、もっと実用的なアイテムを期待していたんだが、文句を言うのは筋違いか。

いい物であることに違いはない。


引き続きバックパックを物色し、最後の1つまで中身を確認していく。



魔石、魔石、そして魔石・・・・・。



全てのアイテムを見下ろし、得も言われぬ思いが心を占める。

バックパックに収納されていたアイテムは、魔石だけだった。


これは、どうすればいいのだろうか?


これだけの魔石。俺には過ぎた代物だ。売って金にするくらいしか、使い道が無い。


だが、魔石のような魔術的要素の含むアイテムは、

出所の分からないと大抵の店では買い取ってくれない。

これ程の純度を誇る物であれば、猶更なおさらだ。


・・・一先ず、アイテムの件は後で考えるとして、

この冒険者風の男を埋葬することにした。


アイテムを貰っていくのだ。このくらいはしないと罰が当たりそうだ。


都合よくシャベルなど持って来てはいないため、その辺に転がっていた石を使い、

人間一人が収まる程度の穴を掘っていく。

掘り終えた頃には、両腕が悲鳴を上げていた。きっと明日は筋肉痛だろう。


一休みした後は、掘り終えた穴へ男を落とし込み、埋める。

そして、最後に墓標代わりの石を積み上げておく。


花くらい添えるべきなのだろうが、生憎近くに花は見当たらない。

探すのも面倒なので、供え物は無しだ。


一通りの作業が終わった頃には日も大分傾いていたので、帰路につく。


今回は訓練こそ無為に終わったが、それ以上の収穫があったので良しとしよう。

コッコにも後で、豆をいつもより多く食わせてやることにする。





















コッコは能力アビリティ【探索】を取得。



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