育成期間0年2ヵ月2週間
財布の中が常に寒々しい俺でも、必要な物品には金を割り当てなければならない。
今日は訓練を中止して町へと向かう。
魔獣コッコも一緒に連れて行くことにした。
・・・学内に残していくのは、些か不安だったからだ。
ヴィングル従魔士育成学校から歩くこと1時間。
中心にそびえ立つ、巨大な結界塔が特徴的な町「カナマラ」に到着する。
日用品に、魔獣用アイテム(何故、学内で販売してくれないのだろうか)その他、諸々。
揃えなければならないものはたくさんある。
まずは町の中心地区に向かう。
お目当ては露店だ。店で買うよりも安く、質のいい物を手に入れられる可能性がある。
・・・のだが、今回は空振りに終わった。
何でも、ここ最近街道に出没する魔物の数が増え被害が増大。
品の流通が滞っているそうな。
これも俺の幸運値の無さが成せる技なのか。
・・・自分で言ってて虚しくなってきた。
気分を変えるため、昼食をとる。
近くの屋台でチキンサンドを購入。
近くの公園のベンチに座り、さっそく食する。
一口頬張ると口の中に鶏肉の風味が広がり、更に食欲を掻き立てる。
値段の割に、充分な質・量を備えた実にうまいサンドイッチであった。
ちなみに、俺が食事中の間、コッコがこちらをじっと見つめていたのは何故だろう?
あいつもチキンサンドが食べたかったのか?
食い意地の張った奴め。
昼食も終わったところで、買い物の続きにかかる。
露店で揃えきれなかったのは、やはり財布に痛い。
値切り交渉を行い、何とか予算内に収めようと頑張ってはみたのだが、
これは近い内に資金繰りしなければならないようだ。
一通り買い物を済ませ、最後に武具店へ立ち寄る。
魔獣を従える従魔士が武器を振るう必要などあるのか?
と思う者は多くいるが、実際の所、戦闘は魔獣に任せて後ろで踏ん反り返って居られる
従魔士など、ほんの一握りに過ぎない。
余程、強力な魔獣を従えている者か。
あるいは、数多くの魔獣を一度に使役できる者か。
何れにせよ、現実味の無い話だ。
戦場では、強力な魔獣を従える従魔士は真っ先に狙われる。
それが、魔獣を無力化する最も有効な手段だからだ。
故に、従魔士も自分の身を守れる程度の実力と装備が必要になってくる。
護衛でも雇えば話は別だろうが・・・。
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店内には、様々な武器、防具が所狭しと掛け並べられていた。
この手の店は、店主が直接商品を作り販売しているか、
商人や冒険者から買い取った物を転売しているのかの二択に分かれる。
どうも、この店は後者のようだ。
しかし、武器を買いに来たはいいが、
生まれて此の方、武器という物に関わったことの無い俺にとっては、
何を選べばいいのかさっぱり分からない。
店主に話を聞いてみるも、この店主の愛想の良くないことといったら。
『あー』、『うー』唸るだけでまともに話そうともしない。
素人だからと言って馬鹿にされているんだろうか?
仕方ないので、自分で武器を選ぶ。
その辺に掛けられている剣を手に取ってみるが、どうもしっくりこない。
買っていざ使ってみると性に合わなかった。
と、いうのはなるべく避けたい。
さて、どうしたものか・・・
『ねえねえ、お兄さん。もしかして困ってるんじゃない?』
背後から聞こえる声。
振り返ってみると、そこにいたのは1人の少女。
そして、その少女に捏ね繰り回されている俺の魔獣。
・・・ちょっとは抵抗しろよ。
心では自分の魔獣へツッコミを入れつつ、少女に目を移す。
髪と瞳が青い。青は水か氷の加護だ。しかも、かなり「濃い」色をしている。
色の濃さは、その者が得ている加護の「格」を示す。
以前出会った従魔士エレナも濃い色をしていたが、
目の前の彼女は、それとは比べ物にならない程深い色だ。
下手をすると「神」から加護を得ているのかもしれない。
だが、いくら格の高い加護持ちであっても、これは宝の持ち腐れではないだろうか。
加護とは、戦う場合でのみ発動するスキルの親類みたいなものだ。
使い熟せば、一騎当千の強者になることもできるが、
個人的に、どう見ても彼女にその実力があるとは思えない。
見た目がまず強そうじゃないし・・・。
『女の子をジロジロ見るなんて、失礼じゃないんですかねぇ?』
ニヤニヤしながら、こちらへ注意を促す少女。
・・・いかんな。どうも他人を見るときは必要以上にものを見てしまう。
彼女に謝罪し、質問に返答する。
向こうも分かった上で声をかけたらしく、話はスムーズに進んだ。
さっそく武器を選んでもらう。
赤の他人を信じ切っていいものかとも思ったが、あの店主よりはマシであろう。
少しして、数ある中から彼女が選んだ武器は、斧だった。
彼女曰く、自分が持っている「適性判断」のスキルが
そう判断したから間違いないとのこと。無い胸を張って誇らしげに話す。
・・・ん?でも確か「適性判断」のスキルはレベルに応じて成功率が上がるんだよな?
低レベルだと、ほとんど信用できないはず・・・・。
念のため、今のスキルレベルはいくつなのか聞いてみる。
俺の話を聞いた途端、汗をダラダラ流し始める少女。
暑いから掻いているのではない。
あれは、おそらく冷や汗だ。
まさか、成功率の事忘れてたんじゃ・・・。
俺が声をかけるや否や、勢いよく駆け出す少女。
去り際に何か叫んでいた気もするが、よく聞き取れなかった。
別に責めるつもりなど無かったんだが。
・・・そういえば、俺の魔獣はどこ行った?
・・・・・・・
それから数時間、蒼髪の少女を見つけるのに余計な労力を費やすことになった。
コッコは能力【疾走】を取得。




