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「だったら、手にキスして」
頭に血が登りすぎてる。
何を言われても怒らない自信が無い。
荒い息遣いだと思う。こんな獣の様な呼吸をしてるのが自分だなんて信じたくもない。
岐阜さんは妥協のつもりなんだろう。
さっきの命令よりはマシだけど、そんな事を頼む相手では私は無い。
しかし、断って元の命令より酷くなって断ってと、時間を無駄にしたくもない。
「……それでいい」
「手の甲へのキスは騎士の忠誠だったけ」
「私は騎士じゃない。アンタが尽くせよ」
「私は初めからそのつもり」
チッと音が鳴る。
ほんの一瞬の出来事なのに、汗が止まらない。
屈辱だ。それなのに、それを許そうとしている自分がいる。
このまま沈黙はダメだ。




