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【完結】悪食エルフと風魔法使い、辺境遺跡でバディを組む ―古代の遠距離通信水晶を巡る冒険記―  作者: 夏灯みかん


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13/20

13.遺跡調査(本番)

 俺は邸宅の広間だと思われる跡地へとエドラヒルを手招きした。


「ここに、古代魔法文字が刻まれている」


 エドラヒルはしゃがむと、目を細めた。


「……これは、空間魔法の魔法陣だな」


「……空間魔法か」


 俺は唸った。空間魔法は高度魔法の一つで、一般の魔法使いは使うことができない魔法だ。

 現実とは異なる別空間を作り出す魔法だが、古代の魔法使いは今よりも気軽に使っていたとされている。


「――閉ざされた、空間がある?」


 俺は教授から借りて来た、この遺跡から出土した水晶飾りを手に持つと、魔力を流した。

 この遺跡に空間魔法による隠れた空間が存在しているなら。

もしそこにこの水晶の片割れがあるなら。

何か反応があるはず――


「駄目か。前にもやったもんなあ……」


 エドラヒルに会いに行く前に、同じことをやってみたが、そのときも反応はなかったことを思い出し、ため息をつく。


「――少し、空間を揺らしてみよう」


 エドラヒルが地面に手を置いた。

 ――途端、ぶわっと周囲に草が芽吹いて、花が咲いた。

 と同時に、俺の持っている水晶飾りが微かに――確かに震えた。


「――これは!」


「……隠れた空間が、ありそうだ……」


 エドラヒルは俺を見つめて、にやりと笑った。


「今、何をしたんだ?」


「オリヴァーよ。空間魔法は、どのように別空間を作るのかは知っているか?」


「――精霊を大量に集めることで空間を歪ませ、それを魔法陣で固定する」


 自然界には平穏時――通常時は均一に精霊が存在している。

 精霊が偏る――いわゆる『精霊バランスが崩れた』状態になると、魔物が発生したり、自然災害が起きたりする。


 精霊を一カ所に大量に集めることで、空間に歪みを生み、異空間を作り出す。

それが空間魔法だ。

大量の魔力と高度な精霊操作を必要とするため、使える魔法使いは多くない。


「そのとおりだ」


 エドラヒルはうなずくと、先ほど彼の魔法の力で育った、ひときわ背の高い草むらを見つめた。


「そして……、生命属性の魔法は全ての精霊の源となる力だ。生物の成長は、全ての精霊力を消費する。今、この植物を一斉に成長させて、周囲の精霊力を一気に消費した。――それにより」


「――空間に固定された精霊が動いて、空間魔法が揺らいだのか」


 エドラヒルの言葉の続きを奪うようにつぶやくと、彼はにやりと笑った。


「そうだ。……お前との会話は川の流れのようで、やりやすい」


「――そのまま、隠し空間の入口を作れないのか?」


「――入口をこじ開けるのは、難しい。しかし、私の魔法と、お前の魔法を合わせれば、できると思う」


「俺の魔法?」


「オリヴァーよ、お前は風の乙女たちに愛されているようだ。お前の周りには風の精霊たちが集まっている」


 エドラヒルは俺を見つめた。


「お前はきっと、私より風魔法が得意だろう。風で、歪みを探り、風穴を開けろ」


 俺は周囲を見回した。草原の風が、俺を鼓舞するように頬を撫でた。

 エドラヒルは俺に笑いかけた。


「ちなみに私は、生命魔法については里でもかなり得意な方だ。――なにせ罰として、長い間、延々花を育てさせられてきたからな」


「……自慢するところか、それは」


「――冗談だ」


エドラヒルはまた笑うと、地面に手をついた。


「お前と私の魔法は、よく響き合うらしいな。風の魔法使いよ――その風で、道を開け」


 それと同時に、にょきにょきと、また植物が伸び出した。

 こんどは木まで生えてきている。エドラヒルは、先ほどより魔法の出力を上げたようだ。

 

  魔法使いギルドに戻って、報告するべきでは?

今この場で、俺だけで、空間魔法の先へ……踏み込むのか?


 ……けれど、エドラヒルほどの生命魔法の使い手はギルドでも見たことがない。

 そんな術者が、この遺跡の調査に協力してくれているのだ。

 そうだ。俺だけではない。このエルフが一緒に来てくれる。

 ――きっと、できるはずだ。俺とこいつなら。


 俺は目を閉じると、手に握った水晶と、周囲の風の精霊の動きに集中した。

 精霊たちを駆けまわらせ、空間の歪みを探る。

 ――そして。


「見つけた!」


 俺は目を開けると、杖を持ち、渦巻を作り出した。

 それを見つけた歪みめがけて叩き込む。

 空間が軋み、空気が裂け――

 目の前に、真っ黒な穴が口を開けた。


「――おお。入口だ」

 

 エドラヒルが立ち上がった。

 俺は周囲を見回した。

 俺たちの周りには、いくつかの木が俺の背丈ほど伸び、小さな森ができあがっていた。


 黒い穴の先からは、古びた匂いが漂ってきて鼻先をかすめた。

 エドラヒルは穴をのぞきこむと、こちらを振り返って少年のように嬉しそうに笑った。


「行こうではないか」


 俺より張り切った様子で、エドラヒルが黒い闇の裂け目へと、足を踏み入れた。


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