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第13話 レヴェランスの話

「じゃ、一旦 注目っ!」

 ユイ先生が号令かける。

 ちょっとダラダラしていた皆が、ピシッと直立する。


「それで、最後にレヴェランスなんだけどー、これもまだアユミちゃん、教えていないよねー。先生するから見ていてねっ」

 そう言って、ユイ先生は、右手だけ上にアンオーをして右足を一歩前に出す。そのまま一連の動きで、両腕を身体の横で羽ばたく羽を下ろすように下げる、上半身はお辞儀をするが、それに合わせて下半身もくっと屈める。

 もし長いスカートとか穿いていたら、その裾を持ってカーテシーする様に見えただろう。でも今はスカートを穿いていないから、両手を前に見せながらのお辞儀なのか。何にせよ、とても華麗に見えた。


「分かった? じゃやってみて」

 え!? 凄く照れる。こんな女の子女の子するような仕草など、これまでした事はない。まぁさっきまでバレエの仕草はしていたけど、あれは動作だ……ってレヴェランスも動作か。


 そうしたら、他の小さい子達が「こうだよー」と言いながら、そのレヴェランスをやってくれた。小さいのに、淑女に見えた。

 そこまでさせて、しない訳にいかない。


 見よう見まねで、そのレヴェランスした。

 とたんに、皆から笑われた。


「こらこら、みんな、笑わない!」

 いや、ぎこちなかったのは、自分でも分かっている。

 でも笑われて、全然嫌な感じはない。蔑まれているんじゃない。激励叱咤されている気がする。


「じゃ、もう一回します」

 そう言って、もう一回レヴェランスした。

 気を落ち着けて、一つ一つの動作を大事に。でもって今度は照れず、真剣に、皆の期待に応える様に。


 そうすると、今度は皆から拍手がもらえた。

「そうねー、だいぶ良くなったよー。ほら、そのまま前の鏡を見て!」


 言われて、お辞儀はしたまま、目だけ前を向いた。

 とても自分とは思えない淑女が、華麗なポーズを取っていた。

『これが、ボク?』

 ちょっと信じられなかった。


 これまでずっと男の子と一緒に遊んで、絶対スカートなんか穿く事はなく、髪も最低限しか伸ばさず、これからもずっとこのままでいたかったのに、今度中学に入る事になり、嫌々ブレザーの制服、チェック柄のスカートを穿いた。


 そうして今、目の前には、もうどう見ても女の子のボクが、ある意味初めて女の子らしいポーズをしている。

 今はレオタードで、スカート穿いている訳じゃない。

 でも、スカートを穿いた女性がするようなポーズだ。


 あ、そういう事なのかな? と思った。

 ボクは男の子になりたかった訳じゃない。

 でも小学生でずっと男の子と一緒に遊ぶのが好きで、あまり女の子と遊ぶことは少なかった。男の子の仲間と遊ぶのが、当たり前だった。

 でも小学校を卒業するにしたがって、自分は女の子のカテゴリーだと言われて、女の子になれって言われた。女の子になるのが嫌なんじゃない。男の子みたいだった自分を全て捨ててしまう事が嫌だったんだ。


 今、鏡の前にいる自分は女の子の自分だ。でもなぜか、もうそれを嫌だと思ってはいない。だって自分は自分だから。

 男の子っぽかった自分がいなくなるんじゃなくて、女の子っぽい自分が増えただけなんだ。女の子に、ならなきゃいけないんじゃなくて、なってもいいんだって。


 そんな心の整理がついたところで、ユイ先生は皆に号令する。

「それじゃ、皆でいっしょにするよ。はいっ!」


 先生もレヴェランス。ボクもみんなもレヴェランス。

 あ、良く見たら、男の子は片手を胸に、もう片手をアラスゴンドにして頭を下げている。男の子の、レヴァランスなんだ。小さいのに、とても格好良い。


「じゃ、お姉さんクラスが終わるまで、ちょっと見学ー」

 ユイ先生は、皆を引き連れ、ジュニア・ユース達が練習しているすぐ横まで来て全員体育座りさせた。幼稚園児・小学低学年の中に、ひときわ高いボク。ちょっと可哀そうと思ったのか、ユイちゃん先生がボクの横に座った。 

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