第11話 センターレッスンの話 1
「んじゃ、テディさん達ぃ、集っ合ぉ~!!」
サイド側で、ユイ先生が手を上げて皆を呼ぶ。あ、集まらないと。
駆け足でそっちに行く。
幼稚園から小学校低学年ぐらいの子たちばっか集まっている。
キーちゃんと同じぐらいの子もいるが、おそらく経験が浅いのかもしれない。
でもその中で、ぐんと背の高い自分が混ざると変な感じ。他の子はボクのお腹とかせいぜい胸ぐらいしかない。
背、だけで言えばユイさんと変わらない位なのに。
「それじゃ、初心者のぉ磯崎さんの為に基本練習しますがぁ、その基本が疎かになっているかもしれない皆さんの為にも、改めてしっかり基本を身につけよねー!」
そう言いながら、ユイ先生は腰に手を当てた。
何か、元気いっぱいな感じだ。
「改めて、荒川です。皆からはユイちゃん先生と呼ばれています。でも正式な先生ではなくてぇ、この教室の卒業生で高校以降もヘルプしながら此処で練習も兼ねて続けていまーす。でもって今は、幼稚園の先生目指す大学生でーす」
なるほど、そういう意味でも先生か。でもって小さい子の面倒も練習を兼ねてなのか?。
「幼稚園の先生実習で、ピアノも練習しているから、たまに伴奏もするっしー」
ああ、そういえばさっきピアノの伴奏はいいからって言われていた様な。普段はそっちのヘルプもするのか。
「んじゃ、改めてよろしくお願いします」
「「「「「よろしく、お願いします」」」」」
皆を目の前にして、ユイ先生が号令する。
「ではまず、真っすぐに立つ練習っ、足は1番!」
言われて全員、さっとピシッと背筋を伸ばして立った。
バー練習の時に言われたように、垂直に真っすぐに立つ。
足の1番は、カカトを合わせて、横一直線だったよね。
皆の方が素早い。でも180度ではなく、ちょっとだけ扇形に中に寄っている子の方が多い。ボクも無理せず、150度くらいにした。膝と足の先の方向と合わさないといけないんだよね。
「この時の注意!。重心、つまり体重をかけるのは、つま先の親指と小指と踵の3点で」
ユイ先生はシューズを脱いで、その靴底を皆に見せながら、その3点を指さして見せる。
「足の裏全体に均等にかける事っ」
意識してみる。ちょっとグラグラする。
「次は手の位置。まずは、アンバー」
そう言いながらユイちゃん先生は見本を見せる。腕を軽く卵型に曲げて下に。
見て、真似る。
見て、指も軽く開く。親指と他の指も。
皆も戸惑う様子もなく、同じ姿勢で揃う。全員が同じ姿勢。
「次はそのままちょっと上げて、アンナバン」
腕をそのまま斜め前に持ち上げる。傍から見たら、何かクッションでも抱えている様なポーズだ。
「次は上に上げて、アンオー」
腕をそのまま頭の上に大きく上げる。これはさっきの柔軟の時に何度もやった。片手だけなら、バー練習でもやった。
鏡の中の自分の姿を見たら、バレエってこうなのかな? という感じのポーズだ。
体操では、こういうポーズは取らない。何か新鮮だ。
「磯崎さんっ。今、鏡の自分を見てどう思いました?」
いきなり振られた。
今、鏡の方を見ていた事に気付かれた様だ。
「あ何か、バレエだなぁって感じが」
「そうなの、そうなの。このアンオーはねぇ、バレエのポーズで良く使うのよぉ。だから、このアンオーを美しく出来ないと、台無しです!」
そう言いながら、ユイ先生は腰に手をあてて、ちょっと睨んだ。
「ユイちゃん先生、八木先生のまねー!」
小学生の子に突っ込まれている。ああ、確かにそんな感じか?
というより、この子達に本当にユイちゃん先生って呼ばれているんだ。
「はいっ。じゃそのまま腕を横で伸ばして、アラスゴンドに」
先生の真似をして、横一直線に腕を伸ばす。
これも柔軟の時にやった。
「それとぉ、斜め上に上げるアロンジェというのもあるんだけどねー。今は、そのアラスゴンドのままにしてね」
そう言いながら先生だけ、腕を斜め上に上げて見せた。斜め45度位?
「この腕の動きは色々あるけどー、全てこの基本形を通りながらするからー、しっかり身体で覚えるようにねー」
皆にはずっと、腕をアラスゴンドにさせたまま、話を続ける。
「ポーズによってはー、右腕をアンオーで左腕をアラスゴンドとかもあるけど……。はいっ、腕はアラスゴンドのまま耐える!」
先生の話がちょっと長くなってきて、腕が下がってきた子がいた。慌てて戻す。
ボクもちょっと下がりかけてきていた。気を引き締める。
「動きの中で色んな止めをしないといけない場面あるからねー。止めではしっかりと動かずにねー。時には何分もこのままなんかシーンもあるのよぉ」
そう言いながら先生は、右手を真上、左腕はアラスゴンド、左足を後ろにピンと伸ばした。右足はつま先立ちだ。それこそ、まさにバレエのポーズという感じ。後で聞いたらそれがアラベスクというポーズだったらしい。
先生の話が長い。
皆の腕がプルプル動いて下がりかけている。
でもちょっと笑ってから、
「はいっ。じゃあ、下していいわよ」
皆、ふぅと言いながら腕を下ろす。
少し意地悪だが、必要なトレーニングなんだろうな。幼稚園の子供達相手にも、ある意味容赦ない。




