第23話 ― 運命を縛る契約
日々は静かに過ぎていく。
名門校アレクサンドリア学園。
この学校は優秀な成績だけで知られているわけではない。
圧倒的な力、鉄の規律、そして残酷な階級制度でも有名だった。
そんな学園の重厚な壁の奥で、
今まさに大きな会議が行われていた。
職員室には数名の重要な教師たちが集まっている。
古びた長い木製テーブルの上には、書類、報告書、そして冷めかけたコーヒーが並んでいた。
空気は静かだった。
あまりにも静かすぎるほどに。
――その時。
コンコンコン。
ドアを叩く音が、議論を遮るように響いた。
扉が開き、警備員がまっすぐアレクサンドリア学園の校長を見つめた。
「失礼します、校長先生。
お会いしたいという方がいらっしゃっています。」
校長はゆっくりと顔を上げた。
鋭い視線が警備員へ向けられる。
「誰だ?」
警備員は一瞬ためらい、唾を飲み込んでから答えた。
「……月島学園の校長です。」
その言葉だけで、
部屋の空気は一瞬で凍りついた。
教師たちは互いに顔を見合わせる。
アレクサンドリア学園の校長は、薄く笑った。
「通してくれ。
……では諸君、本日の会議はここまでだ。
正午に再開する。」
教師たちは静かに立ち上がり、部屋を後にした。
校長は冷たい声で言った。
「どうぞ。私の部屋へ。」
月島学園の校長が部屋に入る。
「副校長も一緒に入ってもよろしいでしょうか。」
「構いません。
こちらも副校長を呼びます。」
しばらくして、四人が校長室に入った。
アレクサンドリア学園
校長・戦国
副校長・志摩
月島学園
校長
副校長・六
扉が閉まる。
密室の会議が始まった。
戦国校長は机の上で指を組んだ。
「さて、月島学園の校長先生。
本日はどういったご用件でしょうか?」
月島校長は大きく息を吐く。
「……聞いたぞ。
うちの愚かな生徒たちと、妙な勝負をすることになったそうだな。」
志摩の目が鋭くなる。
戦国は平然と答えた。
「ええ。
それがどうかしましたか?」
「その挑戦を取り消してほしい。
月島学園の校長として、すべての責任は私が取る。」
――バンッ!!
志摩が机を叩いた。
「ふざけるな!!
先に挑戦してきたのはそちらの生徒だろう!!
取り消したいなら、その生意気なガキどもをここへ連れてきて土下座させろ!!」
六副校長が冷たい声で言う。
「それは少し言い過ぎではありませんか、志摩先生。」
戦国は手を上げた。
「まあ落ち着きなさい。
ここは私の部屋だ。」
しかし志摩は怒りを抑えきれない。
彼は立ち上がり、月島校長の胸ぐらを掴んだ。
「聞け!
ここで譲ったら、うちの校長の誇りが地に落ちるんだ!!」
椅子が激しく音を立てた。
六も立ち上がり、志摩の腕を掴む。
「昔のように暴れるつもりですか?」
志摩はニヤリと笑う。
「お前こそ調子に乗るな。
代理教師のくせに。」
空気が一気に重くなる。
その瞬間――
戦国校長が立ち上がった。
凍りつくような圧倒的な威圧感が部屋を満たす。
「座りなさい。
……さもないと、この部屋は昔のように血の匂いで満たされる。」
同時に、月島校長の威圧も放たれる。
窓ガラスが震えた。
――ドォン!!
突然、ドアが蹴破られる。
「その契約をやめてください!!」
息を切らした男が飛び込んできた。
警備員が追いかけてくる。
「申し訳ありません校長!!
突然走り出して止められませんでした!!」
男は真剣な目で叫ぶ。
「お願いです!
その契約を取り消してください!」
戦国は驚いたように言う。
「おや、氷村さんではありませんか。」
志摩が目を見開く。
「氷村!?
お前ここに!?
……まさか息子がこの学校に?」
氷村は首を振った。
「いいえ。
息子は月島学園の生徒ですが、今はアレクサンドリアへ移されています。」
戦国は頷く。
「なるほど。
では座ってください。」
その時――
「チッ……相変わらず子供ね。」
女性の声が響いた。
全員が振り向く。
「……オクタ!?
どうしてここに!?」
ジンの執事、オクタだった。
「私はボスの命令で来ました。
この挑戦について話し合うために。」
戦国は笑う。
「もちろん歓迎します。」
オクタは立ち上がり言った。
「私はこの挑戦に反対します。
なぜこんな意味不明な大会で月島の生徒全員を退学させるのですか?」
志摩が言う。
「大会ではありません。
フェスティバルです。」
氷村は頭を下げた。
「頼む……オロチ。
ルールを変えてくれ。」
志摩が怒鳴る。
「校長を名前で呼ぶな!!
もう契約は成立している!!」
オクタの目が鋭くなる。
「その気になれば、私のボスはこの学校を訴えることだってできる。」
月島校長が言う。
「ならばルールを変えればいい。」
戦国は黙り込み――
そして笑った。
「決めました。」
全員が息を呑む。
「フェスティバルに参加した生徒は、
敗北した場合退学とする。」
志摩が叫ぶ。
「なっ!!?」
戦国は続ける。
「しかし――
参加しない者は退学にはならない。」
氷村が震えた声で聞く。
「つまり……息子が出なければ助かる?」
戦国は冷たく言った。
「そうだ。
だが参加して負ければ終わりだ。」
部屋は沈黙に包まれた。
やがて月島校長が言った。
「……分かりました。
その条件を受け入れましょう。」
二人の校長が握手する。
契約は成立した。
もう後戻りはできない。
そして最後に残ったのは六だけだった。
彼は頭を下げる。
「放課後、フェスティバル参加者を集めてもよろしいでしょうか。」
戦国は頷く。
「構わない。
……ルール変更も発表しておけ。」
続く




