第22話 ― 七つの大罪への挑戦
日々は続いていく。
ヴェルの敗北は、アレクサンドリア学園の隅々まで響き渡っていた。まるで決して消えない衝撃のように、噂と視線が校内を駆け巡る。
生徒たちの視線は変わっていた。
多くの生徒が再び月島の柱たちを信じ始め、そして以前にも増してヤミを敬うようになった。
ヤミの名前は尊敬の響きを伴って呼ばれ、まるで新たな“力の象徴”として確立されたかのようだった。
その噂は瞬く間に広がった。
――ヤマがわざと広めたからだ。
だが、誰もが知っていた。
まだ終わっていない。
その時、校内放送の重い声が空気を切り裂いた。
生徒たちは一斉に静まり返る。
「レオ・レオ、ユキ・アンナ、ヴェル・ヒムラ、ライトニング・トンプソン、ジン・バーナード、イン・クインシー、ヨウ・クインシー、ヨンビ・マタタビ、レイン・ベラ、ミラ・ローズ、アラ・ダイスキ、シエラ・ネコマタ、イザベラ・リサ、タカ・ノメ、ヤマ・カイグチ、ヤミ・トツカ」
声は冷たく続いた。
「あなたたちは校内で戦闘行為を行ったため、“罪のバッジ”を一つ付与する。
また、それを止めなかった者たちにも同様に罪のバッジを付与する。
理由は不要だ。以上」
冷たい声だった。
反論の余地はなかった。
レオは目を見開く。
「はぁぁ!? なんで俺まで!?」
ユキもスピーカーを睨みつけた。
「なんで私までなのよ!?」
一方――
フラッシュは自室で拳を強く握り締めていた。
「この学校の校長、頭おかしいだろ」
ジンは椅子に座ったまま、壁をぼんやり見つめる。
「日が経つほど、この学校のルールはおかしくなるな」
クレイジーは背もたれに寄りかかり、苦笑いした。
「あははは……クソ校長だな」
ゾンビは床に座り込み、涙を流している。
「ううう……罪のバッジもらったぁ……」
ヨンビは慌ててヴェルの部屋へ走った。
「ヴェル先輩ぃぃ! 心配ですぅ!」
ミラ・ローズはレインを見る。
「どうしますか、姉さん?」
レインは落ち着いた声で答えた。
「落ち着きなさい。ジンの作戦に従うだけよ」
その頃――
アレクサンドリアの屋上。
ヤミが風に髪を揺らしながら立っていた。
「聞いたか、ヤマ?」
ヤミは笑う。
「あははは、やられたな」
ヤマは腕を組む。
「でもどうしてバレたんだ?」
ヤミはニヤリと笑った。
「お前が俺の勝利を広めたからだよ、ヤマ」
再び笑い声が屋上に響いた。
授業が始まった。
表面上、学校はいつもの日常に戻ったように見える。
生徒たちは真面目に授業を受けている。
月島の生徒たちも同じだった。
しかし――
教科書の裏で、緊張は確実に膨らんでいた。
休み時間のベルが鳴る。
ジンが廊下を歩き出した。
その後ろにはフラッシュ。
クレイジーとゾンビ。
ヨンビ、そしてレインとその部下たち。
さらにレオ、ユキ、そして最後にヴェル。
彼らの足並みは揃っていた。
向かう先は――
A棟。
校長室がある場所だ。
A棟の入口で、二人の生徒会が立ちはだかる。
「何の用だ?」
もう一人が言う。
「A棟は立ち入り禁止だ」
クレイジーとゾンビが前に出た。
クレイジーは冷たい声で言う。
「俺たち二人が相手してやる。
それで道を開けてくれるんだろ?」
生徒会と睨み合いが始まる。
「逆らえば罪のバッジだぞ!」
だがヴェルたちは構わず進む。
階段を上る。
二階では別の生徒会が立ちはだかる。
今度はレインとヨンビが前に出た。
ヴェルたちは三階へ向かう。
その時――
低い声が響いた。
「ここは俺たちが止める。行け、ヴェル」
ヤミとヤマだった。
二人は生徒会を止める。
その隙に――
ヴェルたちは三階へ到達した。
校長室の前。
コンコン。
「失礼します、校長先生」
ジンが言った。
部屋の中には――
校長センゴク。
生徒会長。
そして生徒会顧問の教師。
センゴクは微笑んだ。
「おや、月島の生徒か。何の用だ?」
ジンが前に出る。
「校長先生、話があります」
「ほう?」
ジンは深く息を吸う。
「私たちは“七つの大罪ルール”と罪のバッジ制度に強く反対します。
以前の“三つの校則”に戻すべきです」
センゴクは椅子にもたれた。
「その前に先生と生徒会長は外へ――」
ジンが遮る。
「必要ありません。
生徒会にも用があります」
センゴクは笑った。
「そうか。なら答えは簡単だ」
そして言った。
「却下だ」
フラッシュが言う。
「俺たちを追い出すためか?」
レオも言う。
「うちの生徒だけ狙ってるだろ」
その瞬間――
センゴクから黒いオーラが広がる。
「で?
追放者のお前たちは何がしたい?」
ジンは怯まない。
「近々、学園祭がありますよね」
「そこで――」
「生徒会に戦争を挑みます」
ユキが続ける。
「私たちが勝ったら、七つの大罪ルールと罪のバッジを撤廃してください」
顧問教師が怒鳴る。
「ふざけるな!!
ここはお前たちの学校じゃない!」
だが――
センゴクが拍手した。
パチ……パチ……パチ……
「あははは。いいだろう」
教師は驚く。
「校長!?」
「私は同意する」
レオたちは喜ぶ。
「やった!」
しかし――
センゴクの笑みは冷たくなった。
「ただし」
「負けたら――」
「この学校から出て行け」
ジンは驚く。
「待ってください! 不公平です!」
レオも叫ぶ。
「そうだ!」
ユキも言う。
「ひどすぎます!」
センゴクは一歩前に出る。
重い声。
「戦争には勝者と敗者がいる」
「勝者には報酬」
「敗者には代償」
「嫌なら――」
「この話はなかったことにする」
沈黙。
その時――
ヴェルが前に出た。
「俺たちは同意する」
ジンが驚く。
「ヴェル!?」
しかしヴェルは続けた。
「ただし条件がある」
「生徒会が負けたら――」
「生徒会は解散だ」
部屋が凍りついた。
センゴクが眉を上げる。
「君たちはルール撤廃だけのはずでは?」
ヴェルは答える。
「負けた側には代償があるんですよね?」
空気が張り詰める。
教師が机を叩いた。
「生意気なガキどもが!」
その時――
「私は賛成です」
全員が振り向く。
生徒会長だった。
彼は立ち上がり、微笑む。
「その挑戦、受けましょう」
センゴクが聞く。
「いいのか?」
「問題ありません」
生徒会長は笑う。
「私たちは負けません」
センゴクは笑った。
「よし」
「その挑戦、受けよう」
彼はヴェルに手を差し出す。
ヴェルも握った。
その握手は――
戦争の宣言だった。
止めることのできない戦争。
校長室を出た後。
レインたちが集まる。
事情を聞くと――
レインは目を細めた。
「つまり……」
「学園祭が戦場になるのね」
クレイジーは笑う。
「もう祭りじゃない」
「虐殺だ」
ゾンビは震える。
「うぅ……死ぬかも」
ヨンビは輝く目で言う。
「月島のためなら戦います!」
その後――
ヴェルは廊下でヤミと会う。
「力を貸してくれ」
「学園祭の戦いで生徒会を倒す」
ヴェルは言う。
「今は内戦をやめよう」
ヤミは笑う。
「あははは、面白い」
「いいだろう」
「俺の力を貸してやる」
「もちろん――」
「ヤマの力もな」
二人は見つめ合う。
そして――
握手した。
禁断の同盟が誕生した。
その頃、校長室。
センゴクは窓の外を見ていた。
「本当に勝てるのか?」
生徒会長は答える。
「もちろんです」
彼は笑った。
「私たちは強い」
「それにシマ先生の特訓があります」
拳を握る。
「負けません」
センゴクは笑う。
「そうだ」
「奴らを――」
「食い尽くしてやれ」
そして最後に言った。
「負けて死ぬほど絶望させろ」
外では鐘が鳴る。
学園祭は近い。
戦争は避けられない。
生き残るのは誰か。
崩れ落ちるのは誰か。
そして――
アレクサンドリアの頂点に立つのは誰なのか。
つづく




