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第12章 ― 空き教室の戦い

その日、校内の駐車場は炎の海と化していた。

黒煙が空高く立ち昇り、

焼けた鉄の臭いと混乱が、月島学園を包み込む。


消防はすでに要請されていた――

だが、まだ到着していない。


そんな混乱の中、

氷村ヴェルはレオとユキを連れ、

あえて静寂に包まれた場所へと向かっていた。


――空き教室。

ヨンビが、いつも罰として閉じ込められていた場所。


扉が開く。


ヨンビは机に腰掛け、窓の外を眺めていた。

炎の反射が彼の眼鏡に揺らめき、

まるで美しい景色を楽しんでいるかのようだった。


「ヨンビ」


ヴェルの声は冷たく、揺るぎない。


「一対一だ。外に出ろ」


ヨンビは振り向かず、小さく笑う。


「その前にさ……」

「この景色、少しは楽しめないか?」


低く呟き、ゆっくりと振り返る。


「全部、燃えていく……」

「君と同じようにね、ヴェル」


「くだらない詩は聞く気ない」


ヴェルは吐き捨てる。


ヨンビは立ち上がり、大きくため息をついた。


「はぁ……やっと来たか」

目を細める。

「本気みたいだな」


一歩、距離を詰める。


「始めよう、ヴェル。ここで」


「いや――」


その言葉は、途中で途切れた。


――掴まれた。


雷のような速さで手首を捕らえられ、

一瞬で床に叩きつけられる。


さらに――

強烈な蹴りが腹に入り、

ヴェルの身体は机に激突した。


バゴォッ!!


紙が舞い上がり、

ひらひらと落ちてきて、ヴェルの顔を覆う。


その一枚には、こう書かれていた。


「今日で、お前は終わりだ」


ヴェルは目を開く。


ヨンビが拍手する。


「おや? まだ立てるのか」

「急所を狙ったんだがな」


ヴェルはゆっくりと起き上がる。


「分かってたさ」

「だから……肺は守ってた」


ヨンビが一瞬、言葉を失う。


――今の蹴りを、腕で防いだ……?


ヴェルが踏み込む。


ヨンビは受け、反撃。

再び同じ急所を狙う。


だが――


ヴェルが掴み、投げ、

そのまま胸へ蹴りを叩き込んだ。


ヨンビは吹き飛び、床に転がる。


また紙が舞う。

一枚が、ヨンビの顔に張り付いた。


そこに書かれていた言葉を見て、

ヨンビの目が見開かれる。


「俺はヴェルに負けるのか?」


「ゴホッ……ゴホッ……」

激しく咳き込みながら、ヨンビは立ち上がる。


「クソ……効いた……」


荒い呼吸の中、低く呟く。


「分かるか?」

「今の言葉……お前は俺の“善”を殴った」

「しかも、俺が“冷静”な時にな」


顔を上げる。


「いいだろう」

「次は――」


叫び声が響く。


「怒りの俺だ!! ヴェル!!」


重い圧が、教室を覆う。


再び拳が交わる。


ヨンビは止まらない。

連続攻撃でヴェルを追い詰める。


強烈な蹴りが腹を抉り、

ヴェルは吹き飛ばされた。


「アハハハハ!」

「楽しいぞ! 本当に俺を怒らせた!」


「うるさい」


ヴェルは立ち上がる。


「俺は……まだ負けてない」


口元の血を拭う。


「俺も……本気になる」


――ヴェルのオーラが爆発する。


身体がジグザグに動き、

消え、現れる。


――回想。


ジンの多目的室。

倒された四人の柱による、地獄の特訓。


フラッシュのスピード。

ジンの必殺の蹴り。

ゾンビの異常な耐久力。

クレイジーの狂気。


――現在。


「クソ……」

ヨンビが呻く。

「動きが……フラッシュみたいだ……!」


ドガァッ!!


強烈な拳が、ヨンビの顔を打ち抜く。


吹き飛ばされる。


「それだけか、ヨンビ!!」

ヴェルが叫ぶ。


ヨンビは血を吐きながら立ち上がる。


「はぁ……はぁ……」


ヴェルは眉をひそめる。


(急所は狙っていない……)

(なのに、悪化している……?)


違和感。


ヴェルはユキを呼び、耳元で囁く。


ヨンビが笑う。


「なぁ、ヴェル」

「後ろにも……敵がいるぞ?」


ヴェルが振り向く。


そして、ヨンビが告げる。


「おめでとう」

「お前は――」


「俺の“悪”を起こした」


戦いは、さらに激化する。


ヨンビの攻撃は狡猾だった。


尖った鉛筆がヴェルの手に突き刺さる。

鉄製の定規が顔を殴り、折れる。

背後から椅子が叩きつけられる。


ヴェルは倒れた。


「はぁ……やっと……終わった……」


血を吐きながら、ヨンビは膝をつく。


その時――


サイレンが鳴り響く。

救急車と消防車が、同時に到着した。


ヴェルは目を開く。


「……もういい」


小さく呟く。


「お前の負けだ」

「これ以上は……死ぬぞ」


ヨンビはヴェルを見上げる。


「はぁ……お前の勝ちだ、ヴェル」


身体が崩れ、

ヨンビはヴェルの肩にもたれかかる。


ヴェルは彼を担ぎ、

救急車へと走った。


救急車はすぐに走り出す。

ヴェルも同乗した。


「……どうして……ついてくる……?」


ヨンビが弱々しく問う。


「学校では」

ヴェルは答える。

「お前は敵だ」


「でも、学校の外では……仲間だ」


「俺は、仲間を死なせない」


ヨンビはヴェルの手を握る。


「……ありがとう」

「お前に負けるのも……悪くないな」


救急車は、夜の街を駆け抜ける。


その頃――

校舎の屋上。


一対の目が、それを見下ろしていた。


ヤミが、薄く笑う。


「面白い……」

「本当に、ここからだな」


――つづく

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