第11章 ― 円卓
ジンの会議室に戻ると、
空気は重く沈んでいた。
部屋が狭いからではない。
そこに渦巻くのは、消えきらぬ戦火と復讐心だった。
そこに立つのは、本来なら互いに殺し合っていてもおかしくない面々――
ジン、フラッシュ、死の双子――クレイジーとゾンビ、
そして、氷村ヴェル。
視線がぶつかり合う。
一秒一秒が、火花となって爆発寸前だった。
その緊張を打ち破ったのは――
バンッ!
レオ・レオが机を強く叩いた。
「もういい!」
声を張り上げる。
「くだらない冷戦と復讐は、ここで一旦終わりだ!」
部屋の全員を見渡しながら言う。
「今は、それどころじゃない」
「もっと大きくて、もっと危険な問題がある」
ジンが鼻で笑い、立ち上がると迷いなくレオの襟を掴んだ。
「ほう? いい度胸だな、小僧」
フラッシュがすぐに前へ出る。
「離せ、ジン」
低く、はっきりとした声。
「今は、俺たちのプライドより大事な話がある」
クレイジーが腹を抱えて笑う。
「アハハハハ! 確かにそうだな」
「このままだと、敵が来る前に俺たちが死ぬ」
ゾンビが涙を拭いながら嗚咽する。
「ひ、ひひひ……いつまで、こんな喧嘩を続けるの……」
ジンは全員を見渡し、
やがてレオの襟を放した。
「いいだろう」
冷たい声。
「なら始めよう。何からだ?」
レオは深く息を吸った。
「問題は二つある」
「一つ目は、シガンシナとの戦争」
「二つ目は――」
「ヨンビだ」
鋭い声で、ジンが遮った。
「ふざけるな」
ジンは口元を歪める。
「シガンシナと戦うために手を組むのはいい」
「だが、ヨンビと戦う理由はない」
ゾンビが激しく頷く。
「ひ、ひひひ……その通り」
「ヨンビは怪物だよ……」
「ぼ、僕たち二人でも、相手にならない……」
再び、室内が騒然となる。
意見が衝突し、声が荒れ、感情がぶつかり合う。
――その時。
ヴェルが、静かに口を開いた。
「ヨンビは、倒せる」
一斉に視線が集まる。
ユキが一歩前に出た。
「彼が勝ったのは、単純な腕力じゃない」
「ヨンビは、全国クラスのテコンドー選手よ」
フラッシュが眉をひそめる。
「テコンドー……だからか」
ヴェルは小さく頷く。
「肺の急所を正確に突かれた」
「一撃で、呼吸を奪われた」
クレイジーが首を傾げる。
「ほう……面白いな」
ジンが腕を組む。
「で、二重人格は?」
ユキが続けた。
「四つある」
「善、悪、冷静、そして怒り」
「ヴェルを倒したのは、おそらく“冷静”の人格」
ゾンビが身を震わせる。
「ひ、ひひひ……一番、危険なやつ……」
その瞬間――
ドォン!!
激しい衝撃が部屋を揺らし、天井から埃が落ちる。
クレイジーが狂ったように笑う。
「アハハハハ! 学校が攻撃されてるぞ!」
ゾンビが泣き叫ぶ。
「も、もう限界だよ! ひひひ……!」
扉が乱暴に開き、
ジンの部下が息を切らして飛び込んできた。
「ボ、ボス! はぁ、はぁ……!」
「自転車置き場が襲撃されてます!」
「そ、それと……シガンシナから、手紙が……!」
ジンは手紙を奪い取り、声に出して読む。
――――――――――
来い。
お前たちの学校で、最強の男を出せ。
男と男。
一対一だ。
――カイドウ
――――――――――
フラッシュが、獰猛に笑った。
「いいだろう」
「もう引き返せねえ」
「まずはヨンビを倒す」
「その次は……シガンシナだ」
ジンは静かに手紙を畳み、宣言する。
「これをもって――」
「俺たちの同盟は、正式に始動する」
外では、すでに炎が燃え上がっている。
そして――
戦争は、もはや避けられなかった。
――つづく




