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第10章 ― 燃え始めた炎

学校に戻るや否や、

ヴェルに関する噂はチャイムよりも速く広がった。


シガンシナ学園に喧嘩を売ったという話。

その一方で――

第四の柱・ヨンビに、一撃で敗れたという事実。


その報せは、校内を揺るがした。


期待は疑念へ。

称賛は、冷たい囁きへと変わる。


ある者は言う。

――ヴェルは、もう終わった。


またある者は思う。

――いや、彼はただ、立ち上がる時を待っているだけだと。


静まり返った自習室で、

ヤミは気だるそうに椅子に座っていた。


椅子の脚を軽く揺らし、

両手を頭の後ろで組み、

顔の上には一冊の本。


独り言のような、

感情のない声で呟く。


「……やっぱり、お前も違ったか」


一瞬の沈黙。


「ヴェル。お前に期待しすぎたな」

「結局……お前も、落ちたか」


本がわずかにずれ、

意味深な薄笑いが覗く。


別の教室では、

レインが大きな窓の前に立ち、校庭を見下ろしていた。


背後には部下たち。

隣には、ローズ。


「意外だな……」

レインは目を細め、静かに言う。

「ヨンビと当たった途端に、失敗するとは」


ローズは苛立ったように鼻を鳴らした。

「それだけじゃないよ、兄さん」

声を荒げる。

「シガンシナにまで喧嘩を売るなんて……」

「本当に、愚かで恥知らず」


レインは答えなかった。

視線はただ、校庭へ――

争いの火種が、確かに燃え始めている場所へ。


一方、ヴェルの教室は――

とても平穏とは言えなかった。


バンッ!


レオが、ヴェルの机を強く叩く。


「本当なのかよ、ヴェル?!」

「一撃で……完敗したって!!」


周囲の生徒たちが振り返る。


すぐにユキが、緊張した表情で否定する。

「違う! きっとヨンビの卑怯な手よ!」

「私はそう信じてる!」


ヴェルは、ゆっくりと息を吐いた。

静かだが、重い声。


「……違う、ユキ」

俯きながら言う。

「俺は……確かに負けた」

「一撃でな」


レオとユキは言葉を失う。

初めて、何も言えなくなった。


その時――


バンッ!!


教室の扉が乱暴に開けられた。


乱れた髪の高身長の男が立っている。


フラッシュ。


「本当か?! あいつに負けたって?!」

怒鳴り声が響く。

「しかもシガンシナに喧嘩売ったって聞いたぞ?!」

ヴェルを指差し、感情を爆発させる。

「お前、正気かヴェル!!」


ヴェルは立ち上がった。


「うるさいな」

冷たい声。

「それに、俺の問題だろ?」


フラッシュは近づき、

ヴェルの制服の襟を掴む。


「本当に分かってないのか?!」

「学校同士の戦争を起こす気か?!」

「せっかく休戦してたのに!!」


答える暇も与えず、

フラッシュはヴェルを引きずり出す。


レオとユキも後に続いた。


彼らが辿り着いたのは、

ほとんど忘れ去られた古い建物。


フラッシュが扉を開ける。


ギィ……


暗く、広い部屋。

長い会議用の机が並んでいる。


ヴェルは息を呑んだ。


「……ここは」

「ジンの、会議室?」


中には、すでに数人の姿があった。


冷たい表情のジン。

そして――

死の双子。


クレイジー(イン)が大きく笑う。

「アハハハ! お前、本当に狂ってるな、ヴェル」

「ヨンビに挑んで負けて、次はシガンシナかよ」


ゾンビ(ヤン)が泣きながら言う。

「ひ、ひひひ……無茶しすぎだよ、ヴェル」

「と、とりあえず座ろ……ね……」


ヴェルは鼻を鳴らした。


「なんだよ、これ」

「お前たちがシガンシナと戦う勇気がないなら――」

「俺が、あの学校を潰してやる!」


パァン!


突然、

レオがヴェルの顔を殴った。


「いい加減にしろ!!」

怒鳴る。

「柱に挑むのと、これは別だ!」

「今回は……完全にやりすぎだ!」


ユキが慌ててヴェルの手を握る。

声は、少しだけ優しい。


「落ち着いて、ヴェル」

「座ろう……ちゃんと話そう」


ヴェルは、

一人一人の顔を見る。


胸の中の怒りが、

少しずつ冷めていく。


やがて、

彼は椅子を引き――

ジンの会議用テーブルに腰を下ろした。


戦争の炎は、すでに灯っている。


この会議が決めるのは――


その炎を、消すのか。

それとも――

すべてを焼き尽くすまで、燃やし続けるのか。


――つづく

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