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追放の始まり

この物語は、

世界に拒絶された一人の少年の“始まり”を描いた物語です。


喧嘩は力の誇示ではなく、生きるための手段。

沈黙は弱さではなく、覚悟の証。


名門校から追放された少年、ヒムラ・ヴェルが辿り着くのは、

問題児だけが集められた“学校という名の流刑地”。


これは、

選ばれなかった者たちが、

自分の居場所を奪い返すための物語。


どうか、彼の行く末を見届けてください。

その朝は、あまりにも晴れ渡っていた。

戦いが起こるには、あまりにも穏やかすぎる朝だった。


太陽の光は静かに流れる川の水面に反射し、川辺で起きている騒ぎなど気にも留めていないかのようだった。

そこに一人の中学生が立っていた。呼吸は整い、制服は乱れ、瞳は鋭く、そして冷たかった。


彼の前には、六人の高校生が地面に倒れていた。

苦痛に顔を歪める者もいれば、起き上がることすらできない者もいる。


その少年の名は――ヒムラ・ヴェル。


彼の顔に誇りはなく、後悔もなかった。

ヴェルにとって喧嘩は娯楽ではない。

それは、生き延びるための手段だった。


彼は口元に滲んだ血をぬぐい、敗れた者たちを一度も振り返ることなく、その場を後にした。

まるで、先ほどの出来事が朝の日常を乱した些細な出来事にすぎなかったかのように。


――数か月後、ヴェルの人生は大きく変わる。


彼は名門校、アレクサンドリア高校に入学した。

そこは、頭脳明晰な生徒や名家の子息たちだけが集まるエリート校だった。


壮麗な校舎、広大な校庭、そして高価そうな制服。

それらすべてが、古びた靴と父の形見の鞄で通うヴェルには、あまりにも不釣り合いだった。


初日から、ひそひそとした囁きが聞こえ始める。


「貧乏人だ」

「奨学生だろ」

「コネで入ったに違いない」


ヴェルは黙っていた。

いつも、黙っていた。


――ある日の放課後までは。


六人の男子生徒が彼の前に立ちはだかった。

嘲笑し、突き飛ばし、父親を侮辱した。

その中にいた唯一の女子生徒は、冷ややかな笑みを浮かべて見ているだけだった。


その瞬間、ヴェルは一つの単純で――残酷な決断を下した。


彼は六人全員を、立ち上がれなくなるまで叩きのめした。

しかし、拳がその女子生徒に届こうとした時、彼は止まった。


「俺は女を殴らない」

冷たい声で、そう言った。

「これまでも、これからもだ」


翌日、校長室で行われた会話が、ヴェルの運命を決定づけた。


父、レオナルド・ヒムラは疲れ切った表情で、

アレクサンドリア高校の校長――オロチの前に座っていた。

二人は、かつての親友だった。


「頼む、オロチ……」

レオナルドは必死に声を絞り出した。

「昔からの友だろ。今回だけでいい……助けてくれ」


オロチは深いため息をついた。

「レオナルド、お前の息子は問題を起こしすぎだ。何度も目をつぶってきた。だが……今回は無理だ」


鋭い視線を向け、続ける。

「大口の寄付者の息子を殴ったんだぞ」


レオナルドは拳を強く握った。

「お願いだ……一度だけでいい」


重い沈黙が流れた後、オロチは静かに口を開いた。


「すまない、友よ。これ以上は、どうにもできない」


レオナルドはしばらく黙り込み、やがて顔を上げた。


「……なら、最後に一つだけ頼みがある。

不名誉な退学だけはやめてくれ。

転校という形にしてほしい」


オロチは目を閉じ、深く息を吐いた。


「はあ……分かった。

過去にお前に世話になった恩がなければ、断っていた。

まだ友と呼べることに、感謝しろ」


――そして、こうして。


ヴェルはアレクサンドリアを追われた。

公式ではない形で。


どの学校も、彼を受け入れなかった。

――ただ一校を除いて。


問題児たちの吹き溜まりとして知られる、

奇妙で、辺鄙な学校。


その名は――

月島高校つきしまこうこう


追放された者たちの学校。


――つづく

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回の話は、

ヒムラ・ヴェルが「普通の世界」から切り捨てられるまでを描いた、

いわばプロローグです。


次回から舞台は――

追放された者たちが集う学校、月島高校へと移ります。

そこでは、常識も、正義も、力関係さえも通用しません。


ヴェルの本当の戦いは、ここから始まります。


もし少しでも続きを読みたいと思っていただけたなら、

ブックマークや感想をいただけると励みになります。


それでは、次話でお会いしましょう。


――作者より

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