【超短編小説】ぎんいろの、
ジョン葉次郎の妻が死んだ。
ジョン葉次郎の妻が死ぬ前の晩、ジョン葉次郎の妻は犬か猫を飼いたいと言った。
しかしジョン葉次郎は小型の犬や猫だと、寝床で一緒に眠ったとき、寝返りを打って潰したり夜中トイレに行く途中で踏んでしまいそうで厭だと言った。
そう言われたジョン葉次郎の妻は不貞腐れると、ジョン葉次郎に背中を向けて眠った。
ジョン葉次郎はその妻を死なせてしまった。
自分の寝相が悪くて布団を跳ね除けてしまったから妻が凍死したのか、またはジョン葉次郎が寝返りを打った時に妻の喉を潰してしまったのかは分からない。
どうしたものかとため息をついた。
外は銀色の雨が降っていた。
とにかくジョン葉次郎の妻が死んだ。
ジョン葉次郎は少し困った。そこでジョン葉次郎は妻をひとまず湯船に入れる事にした。
ジョン葉次郎の妻の死後硬直は既に解けている。
ジョン葉次郎は妻の服を脱がせて裸にした妻を湯船にいれて、お湯を張るか迷ってから、ジョン葉次郎は保留案として腐葉土を入れた。
妻の青白い皮膚を茶色い腐葉土が覆い尽くした。
首から下をすっぽりと腐葉土で覆われた妻を見て少し考えたジョン葉次郎は、そこに花を植えてみようかと思いついた。
妻は何色の花が好きだったろうか。
生きていた頃の妻を思い出して少し悲しくなったジョン葉次郎は、着替えて外に出ると近所の園芸店に向かった。
鉢植えのあまり派手では無い花を何種類か選んだジョン葉次郎は、帰りにコンビニで缶コーヒーとパンを買った。
それは二人の思い出のひとつだった。
ジョン葉次郎は麦茶のように薄い味の缶コーヒーが好きだったし、妻はマヨネーズとコーンが乗せられたコンビニのパンが好きだった。
ジョン葉次郎が帰宅して風呂場を覗くと、妻を包む腐葉土からキノコが生えていた。
見たことも無い銀色に光る傘をつけているキノコだった。
ジョン葉次郎はそのキノコを摘んで少しだけ齧ると、そのキノコは確かに妻の味がした。
驚いて腐葉土の妻を見ると、また新しく銀色のキノコが生えてくるところだった。
このペースだと明日の朝にはたくさんのキノコが生えているだろう。
それは全て妻の味がするキノコなのだ。
ジョン葉次郎は嬉しくなって、買ってきた花を植えるのやめた。
そしてその日は缶コーヒーとパンだけで食事を済ませるとさっさと眠ってしまった。
翌朝すっきりと目を覚ましたジョン葉次郎が急いで風呂場に行くと、妻と腐葉土でいっぱいになった浴槽に生えた沢山の銀色キノコを摘んだ。
そしてコンロで鍋に湯を沸かすと、摘んだばかりの銀色の傘をしたキノコを放り込んだ。
銀色の傘をしたキノコは湯の中でくねくねと動いているのをみて、まるで布団の中で身を捩る妻のようだな、とジョン葉次郎は思った。
そして妻の事を思い出して少し泣くと、ジョン葉次郎の目から銀色の涙がこぼれた。
ジョン葉次郎は妻との思い出が全て銀色になっていくのを感じながら茹で上がった銀色キノコを食べると、自身も銀色になり、やがて冷たくなったのでした。




