眠れない夜と、胸にこだまする名前
アレックス視点
寮の部屋に戻り、灯りを落とした。
ベッドに横になっても、
まぶたを閉じても──
まるで眠気が来ない。
「……はぁ……」
アレックスは枕を抱え込んだ。
普段ならすぐ眠れるのに、
今日は胸の奥が落ち着かなくて、
何度ベッドの上で寝返りをうっても収まらない。
原因は、わかっている。
(アメリア……)
名前が浮かぶと、
胸がどくん……っと跳ねた。
(なんで……
どうしてこんなに……)
湖でのあの瞬間。
水面に落ちていくアメリア。
反射的に飛び込んだ自分。
ずぶ濡れで震えるアメリアを
ローブで必死に隠したこと。
あの光景が、
消えてくれない。
「……無事でよかった……」
ぽつりと、声に出してしまう。
(もし……アメリアが……
俺……きっと……)
胸の奥がずきっと痛む。
アレックスは枕を抱きしめたまま、
ごろりと横を向いた。
(それに……寮の玄関のときも……
怖かった……
アメリアに何かあったら、と思うだけで……)
ぎゅっと枕を抱く腕に力が入る。
(アメリア……)
今日、アメリアが笑ってくれた。
「大好き」と言ってくれた。
いつも通りの明るさに戻ってくれた。
それだけで、胸の奥がふわっと温かくなった。
(嬉しかった……
あの笑顔……ずっと見ていたい……)
また胸が跳ねる。
(……やばい。
本当に眠れない……)
アレックスは分厚い布団の中で
枕に顔を埋めて、もぞもぞ動いた。
「…アメリア…アメリア…
……アメリア…アメリア……」
名前をつぶやくたび、身体が疼いて
胸の奥が熱くなる。
(アメリアの声……
アメリアの笑顔……
アメリアの香り……
アメリアの身体……
柔らかさ、温度……
全部、頭に残ってる……
どうしたら消えるんだよ……)
返事はもちろんない。
けれど枕を抱いたまま目を閉じると、
ふと、湖畔で震えていたアメリアが思い浮かぶ。
(……アメリア……守りたい……
そう思ったのは、昔からだ。
でも……今は……それだけじゃない……)
胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
(アメリアが他の誰かと笑ってるだけで……
なんで、こんなにイヤなんだ……?)
自分の心が思う方向が
昨日よりもずっとはっきりしてきている。
眠れない。
眠れないのに、目を閉じるしかできない。
アレックスは枕を抱え直し、
小さく息をついた。
(……アメリア……
明日も、俺の隣にいてくれるよな……)
そんな願いを抱えたまま、
ゆっくり、ゆっくりと意識が沈んでいった。




