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推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


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制服とローブと魔法杖

屋敷の仕立て室には、春の陽を柔らかく吸った布の匂いが満ちていた。

今日は、魔術学園の“制服・ローブ・魔法杖”の準備日だ。


アメリアはアレックスの手を引いて、軽い足取りで扉を開けた。


「ここが、学園の服を作ってくれる部屋だよ!」


「……なんだか……すごい匂いする……」


「布と革かな?」


ふたりは並んで中に入る。


部屋の奥にはマリアが座り、カインは腕を組んで落ち着いた顔──

……だが目はいつもより楽しげに輝いていた。


「さあ、採寸をお願いするわね。」

職人が柔らかく微笑む。


ふたりが台座に立つと、メジャーが肩や腕をそっとなぞる。

アメリアは少しくすぐったそうに笑い、

アレックスは“固まった兵士”のようにまっすぐ立っている。


「アレックス、力入りすぎ!もっと楽にして。」


「……動いたらいけない気がして……」


アメリアが笑うと、アレックスの肩の力がほんの少し抜けた。



採寸が終わると、職人がローブの生地を広げた。


「魔術学園のローブは、学年によって縁の色が変わります。

 基本は黒。

 新入生は“緑”。

 二年生に上がると“青”。

 ただ、ローブそのものは同じものを使うので、

 縁の色はそのまま残ります。」


アメリアは興味津々で聞いていた。


「じゃあ、私が新入生になったら……緑?」


「はい。」


アレックスも説明をじっと聞き、

小さく呟いた。


「……色で学年がわかるなら……

 アメリアが困った時、すぐに相手が何年か判断できる……」


「アレックス、何それ。なんの判断……?」


「……別に。」


アレックスはそっと目をそらした。


(この時、アメリアの頭には“危険察知能力が高い子”くらいにしか映っていなかった。)



次は“魔法杖マジステル”のコア選びだ。


机の上には

蒼・翠・琥珀・紅・漆黒・透明

六色の石が並ぶ。


職人が丁寧に説明する。


「色石は、魔力の流れを安定させる役割があります。

 どの色でも使えますが、相性の良いものを選ぶのが一般的です。」


アメリアは石を指先でそっと触れた。

どれもきれいだったが──

ふと隣のアレックスの横顔が視界に入った。


(アレックスの瞳……碧色に光って、綺麗だな……)


気づけば、アメリアの指は蒼の石を選んでいた。


「これ、好き。」


アレックスが少し驚いたように見つめる。


「……アメリア……その色……」


「アレックスの瞳に似てるから、落ち着くんだ。」


アレックスは一瞬だけ動きを止め、

耳まで赤くして俯いた。


「……そう。」


その“そう”は、普段より少しだけ柔らかかった。


今度はアレックスが石を選ぶ番。

石に手を伸ばしながら、

何度もアメリアの方をちらりと見た。


(アレックス……?)


彼の手が止まったのは──

紅の石。


アメリアは自分の瞳を思い出す。


(……私の色……?)


アレックスは小さな声で言った。


「……アメリアの瞳……あったかいから……

 この色、好き。」


アメリアは胸が少し“ふわっ”とするのを感じた。


「ありがとう。すごく嬉しい。」


マリアは「まあ……!」と微笑ましく頬に手を当て、

カインは 「コホン…!」 咳払いし頷いていた。



最後は学園支給の“時計型セキュリティカード”の説明。


「こちらが、魔術学園の生徒証兼、寮の鍵、

 そして学食や購買での支払いにも使える魔道具です。」


アメリアは手首につけて、そっと撫でた。


「すごい……これ全部できるの?」


「はい。教職員や寮母も皆、この魔道具を使用します。」


アレックスも腕につけ、じっと眺めていた。


「……アメリアと同じもの……」


「うん、これで安心だね!」


アレックスは小さく微笑む。


(アレックスは後に、この時計を使って

 “アメリアに近づく不審な先輩の学年を即座に判断する”ようになる──

 このときアメリアはまだ知らない。)



その日の帰り道。

アメリアは新しい杖の核を胸に抱えながら言った。


「アレックス、学園……楽しみだね。」


アレックスは杖の核を握りしめて答えた。


「…うん。」


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