学園への道は一年遅れで
魔術学園──
それは王都から少し離れた丘の上に建ち、
魔力を持つ子どもたちが通う専門の学び舎だった。
本来の入学年齢は12歳。
今年の春には、子どもたちが入学準備を始めている。
アメリアとアレックスも、
屋敷の応接室で学園に関する説明書を広げていた。
レナが優しく言う。
「アメリア様、魔術学園は12歳からでざいます。
本来なら来年の春からのところですが……」
アメリアはこくりと頷いた。
「うん。“病弱”だから、一年遅らせるんだよね。」
レナは少し困ったように微笑む。
「ええ。公爵様も夫人様も、
“アメリア様を外へ出すのは慎重に” と……。」
アメリアは紙をぱらぱらとめくり、
授業内容のページで手を止めた。
魔力操作の初歩
魔法陣の基礎
魔法薬学の入門
属性ごとの基礎訓練
(魔法薬……優秀なスチルがあったよね……
いや違う、原作はもう関係ない!)
そこへ、アレックスが横から椅子に登り、
アメリアの肩を覗き込んだ。
「……アメリア、ほんとに一年、遅れて行くの?」
「うん。王立学園を避けるためにも、
魔術学園に行く前に“体が弱い”って証明しないとね。」
アレックスは眉を寄せる。
「遅れたら……アメリア、寂しくならない?」
アメリアは小さく笑った。
「アレックスが一緒なら大丈夫だよ。
同じ年に入学できるし、一緒にいる時間が増えるでしょ?」
アレックスはその言葉に、静かに胸を押さえた。
「……そっか。
じゃあ……一年遅れるの、悪くない……。」
アメリアはアレックスの頭を軽く撫でた。
「アレックスも、いっぱい準備しようね。」
アレックスは真剣に頷く。
「……うん。がんばる。」
*
その日の午後。
カインとマリアが侍女たちを下がらせ、
アメリアとアレックスを前に座らせた。
「まずは確認だ。」
カインが重い資料を机に置いた。
「アメリアは“体が弱く、長距離移動も大人数の場所も負担が大きい”という申請で、入学を一年遅らせる。
すでに学園側も了承済みだ。」
アメリアが手を挙げる。
「パパ、どうやって許可してもらったの?」
「……提出書類というのはな、
“読む者の常識と理解力に応じて” 内容が変わるものだ。」
アメリアは「あっ……パパ……裏の顔……」と心の中で震えた。
マリアが優しく補足する。
「大丈夫よ、アメリア。
あなたが本当に無理なく学べるように、
学園とも丁寧に話したの。」
アメリアは安心したように息をつく。
「うん。ありがとう、ママ。」
カインは続けてアレックスを見る。
「アレックス。
お前は通常どおり入学する年齢だが……
アメリアが同じ年度で入れるように調整した。」
アレックスは驚いて目を丸くする。
「……同じ年に……行けるの?」
「ああ。」
カインは静かに頷いた。
「アメリアが病弱である以上、
“補助者”がいるほうが自然だ。
お前がそばにいるのは、学園側としても好都合なのだ。」
アレックスは胸をそっと押さえ、
表情を引き締めた。
「……僕が……アメリアを守る。」
カインは口元を緩める。
「その意気でよい。」
マリアがアメリアに微笑みかける。
「アメリア、あなたは病弱設定を一年続けることになるわ。
だけど、無理しなくていいのよ。
“疲れた演技” と “あまり出歩かないこと” を、
少し気をつけるだけでいいの。」
アメリアは頷く。
「うん。やってみる!」
アレックスはその横で真剣に言った。
「アメリアのこと……僕、助ける。」
「ありがとう、アレックス。頼りにしてる!」
二人は顔を見合わせ、
自然と笑顔になった。




