とける意識で聞いた言葉
小ネタで一話
最新鋭の防犯カメラ vs 猫又
それなりの有名人や著名人の住処となっているこのマンションは、最新の防犯設備が整い駐車場からマンションの周囲、そしてエントランスに至るまで、監視システムは完璧だ。
……だからってコレは⁉ 作為的な何かを禁じえない……
相変わらず二代目エルの人気は絶好調で、仕事の依頼は引きも切らない。
場所によってはホテルに缶詰で待機なんて事もあって、そんな時は『美味しい精気』にありつく事は飼い主である凛が酷く嫌がるので……どうも、Fanや他人の目がどこにあるか気にし過ぎるらしく……まず、出来ない。
一度、少々強引にしようとしたら眉間に頭突き食らった上、臨戦態勢に近かったソレを蹴り上げられてしまい、更に数日間、口もきいてくれなかった事でほとほと懲りた。
だからマンションに帰り着いてから、部屋に入るまでの時間は『その気にさせる』勝負のしどころ。
地下駐車場から住民専用のエレベーターで上がり、二重の自動ドアが開いて本人認証識別によって内扉を解除する。
エントランスの受付で預かってもらっている郵便物を受け取り、ホールからエレベーターに乗って部屋に向かう。
エレベーターのドアが閉まった途端、エルは凛を抱き寄せると深く唇を塞いだ。
「んっ!」
たった二人っきり誰の目もない狭い空間、最上階まで上りあがる浮遊感も手伝い凛も安堵感からか大して抵抗することもなく、エルの舌の動きにおずおずと応えて意識が次第に淫靡に蕩けていく。
「異常行動を感知しました、エレベーターを緊急停止します」
「「 ! 」」
突如上の方から機械音の女性の声が聞こえエレベーターが近場の階に止まり、そして無常にも扉が開いた。
夜のマンションなのでドアが開いた先には誰も居なかったが、一気に凛の頭に血が上り羞恥によって我に返る。
そのまま真っ赤に染まった顔でエルを振り払うと、内階段目掛け駆け出してしまった。
「……」
折角の据え膳に逃げられて、食べ物の恨みは恐ろしい事を実践するかのように、据わった目で見上げた先にあったものは、ドーム型の防犯カメラ。
芸能の噂で聞いた事のある、最新タイプの物のようだ。
暴漢に襲われていそうな動きを感知すればエレベーターを止め、内部で騒いだりしていれば静かに乗れと注意を促し、人が倒れれば大丈夫かと声を掛け、さらに籠を止め暫くの間ドアを開放し続ける。
最新の防犯設備が整い地下駐車場からマンションの周囲、そしてエントランスに至るまで監視システムは完璧だ。
だけど、先日までエレベータ内にこんな防犯カメラは無かった筈だ!
しかも、明らかに住人しか使わない内のエレベーターに設置する意図が分らない‼
「どうしました! 大丈夫ですか!?」
エレベーターが緊急停止した連絡がいったのだろう、マンションの警備員が即座に駆けつける。
「何でもないよ、エレベーターが私達の熱に当てられただけさ」
「はぁ、いえ、ご無事ならばいいのですが……あの、葵様は」
「凛なら先に部屋に戻ったよ、私も失礼させてもらおうか」
手荷物を抱え、凛が駆けて行った内階段に足を進める。
優雅な足運びと違い、内心はかなり苦虫を噛み潰してはいるが
───全く無粋な事この上ないね、次はカメラを妖力で麻痺させておくか───
が、当然に失敗を繰り返すような飼主ではなく「エレベーターでの秘め事」という猫又の野望は、終ぞ叶う事はなさそうである。
ある番組の放送で『エレベーター内の不審な行動を察知して自動的に停止してくれる防犯カメラ』の性能の凄さにビックリ!
暴漢で緊急停止するだけではないくて、パラパラを踊っていたら「エレベーターでは静かにお乗り下さい」って注意するし、人が倒れこんだら「大丈夫ですか、ドアを暫く開放します」って言うし!
スゲーΣ(@д@;)




