魔法使い
「良いんですか?」
「ええ。ねぇ? パパにアリッサ、良いわよね?」
「真帆さんが家に泊まるの? やったー! よろしくお願いします、真帆さん!」
「うん、良いよ。よろしく真帆さん」
「よろしくお願いします」
人間は嫌がられている世界で、温かく受け入れてくれたアリッサ達に、やや面食らったものの、真帆は最初に出会えたのがアリッサ達で良かったと心から感じていた。
アリッサと同じ部屋を使うことになり、案内される。アリッサの部屋はピンクや黄色を使った、明るい色の家具や大きめなベッド、勉強机や本棚などがある。
「可愛い部屋」
思わず呟くとアリッサは食いついた。
「でしょ? ママは黄色やピンクの小物が多くて目がチカチカするって言うけど」
「私は可愛いと思います」
「わあ! 嬉しい! 真帆さんと気が合いそうです!」
アリッサはベッドの上にポンッと飛び乗る。真帆はアリッサの様子に思わず笑顔になる。
――あれ? 私、何か忘れてるような……?
真帆は何かを忘れてる気がして懸命に思い出す。今まで異世界に来て慌ただしくしていたせいで、すっかり朝父親に言われたことを忘れていた。
「あ!」
「どうしたんですか?」
「どうしよう……お父さんに早く帰るように言われてたのに……」
「あちゃ〜……異世界に来ちゃいましたから」
「帰ったら怒られそう……」
真帆はがっくりとうなだれる。
「あたしも一緒に行きますよ。一緒に謝って一緒に怒られましょう?」
「アリッサさん」
「でも、アリッサさんは悪くないですから」
「事故みたいなものじゃないですか。約束やぶろうとしてやぶったんじゃないでしょう?」
「確かにそうなんだけど……ありがとうございます。アリッサさん」
「いーえ。ねぇ、真帆さん」
「なんですか?」
「真帆さん、あたしと年近そうですね?」
「15です」
「じゃあ、あたしの2つお姉さんなんですね」
「13歳ですか?」
「はい。真帆さんがここにいる間、仲よくしましょうね」
「はい。年も近いですしね」
真帆とアリッサは大きなベッドに寝転がりながら、夜遅くまで話をしていた。アリッサは人間界に興味があること、人間にずっと会いたいと思っていたこと、真帆は魔法界に憧れていたこと、魔法使いに会いたかったことを話して盛りあがっていた。
「お互いがお互いに憧れていたんですね……」
ふぅ〜と真帆はため息を付く。
「そうですね~」
「アリッサさん、明日は学校は?」
「お休みです。創立記念日なんです」
「へぇ~」
「もし良ければ明日、この世界を案内しますよ?」
アリッサは楽しげに話す。
「わぁ! 本当ですか? 是非お願いします」