アリッサの家
2人のやり取りを聞きながら、建っている家々を見ると、どの家も可愛らしい三角屋根にパステルカラーの壁が印象的な家が並んでいる。途中、人はいたものの遠巻きに眺めてきて、誰もこちらに近づこうとしなかった。
――何なのかな? あれ。
真帆は不思議に思いながらアリッサと、たどり着いた家の玄関へ入る。
「ただいま〜! ママ! びっくりするお客さん来たよ!」
「アリッサ? もう〜なあに? そんな大きな声出して」
アリッサの母親は夕飯の準備を始める所だったようだ。エプロンを着けたまま出て来て真帆の姿を見ると一瞬目を見開いた。
「めずらしいわね。人間のお客さんなのね?」
アリッサの母親は真帆に優しく微笑む。
「そう! ね? だから言ったでしょ? 絵本の中だけじゃなくて、ちゃんと存在するって!」
アリッサは瞳をキラキラさせながら、母親に言う。
「そうね。さ、あがって?」
「はいっ、お邪魔します」
アリッサと母親に付いて部屋へ上がると、父親もいた。彼は新聞を読んでいた。
「パパ! びっくりするお客さんだよ!」
父親は真帆の姿を見ると身動き一つせず、固まった。
「あれ? パパ? どうしたの?」
アリッサは父親の目の前に手をひらひらさせる。
「お~い、パパ〜?」
「あ、ああ。こんにちは」
渋い声のおじ様という雰囲気の男性だった。
――家のお父さんとはまた違う感じの人だなぁ。
「真帆さんって言うんだって。もう、パパったら、人間のお客さんにそんなにびっくりした〜?」
「まあ……めったに会わないからな」
「うん、うん、そうだよね~」
アリッサは嬉しそうに頷いている。
「ああ、そうそう、アリッサ。喜ぶのは良いけど、真帆さんがこの世界に来たのなら教えてあげないと」
アリッサの母親はアリッサに伝える。
「あ、そっか。真帆さん、あのね。言いづらいんだけど……」
「はい」
「この世界では人間が伝説だと言いましたよね?」
「はい」
「家は迷信だと思っているんですけど、人間が現れると災いが起きるから不吉だと言う言い伝えもあるんです……」
「え……?」
「まあ、家とフレッドの家はあたしを始め人間好きだから、変わってるって周りに言われてるんですけどね」
アリッサは困ったような顔で笑顔を見せる。
「あ、だから……」
「え?」
「さっき、ここへ来る途中遠くから見てる人達がいたので、そういうことなんですね?」
「あ〜、多分警戒されてると思います」
「警戒……」
「もちろん、真帆さんが不吉なんてあたし達は思ってないですよ?」
「ありがとうございます」