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おとぎの国の娘  作者: 宮守 美妃
22/30

異世界からの訪問者

 母は遠い過去を思い出す。あれは、母がまだ17歳のことだった。



✧ ✧ ✧



 亜紀は由緒ある神社の跡取り娘。許婚までいた。特に不満もない、人生はこんなものだろうと半ば諦めていた。そんなある日、彼が現れたのだった。

 亜紀は真帆と違い現実的な娘で、おとぎの国など存在しないと思っていた。ところが、その思いは彼により打ち砕かれたのだった。


「すみません」


 いつも通り神社の仕事の手伝いをしていた時だった。竹箒を持った男性が声をかけて来た。

「はい?」


「ここは人間界ですか?」


「え……?」


「あ〜、いや。貴女は人間ですか?」


 初対面は最悪だった。変な人が目の前に現れたかと思ったからだ。


「そうですよ」

 亜紀はそれだけ言うとそそくさと立ち去ろうとした。


「あの! どこかに住める場所はありますか?」


「行く所がないんですか?」


「はい、お恥ずかしながら……」


「仕方ないですね。両親に話してみますから、家へ来てください」


 そして、彼は亜紀の家に居候することになった。彼は何かを隠している。様子がおかしい。そもそも何故、箒を持っていたのか?


 亜紀は彼にたずねる。

「何故箒を持っているんですか?」


「ああ……これは、私の大事なものなんです。空を飛べるんですよ」


 彼は得意げに笑った。


「へぇ~……」


「あ、信じてませんね? よし! それなら……」


 突然彼は箒にまたがり、しっかりと両手で柄を握った。彼が呼吸を整えると、辺りに風が吹き始めふわりと宙に浮き上がった。


「え? 嘘? あなた、何者なの?」


亜紀はお化けでもみたような顔をして、彼を見る。


「魔法使いです!」


 彼は楽しげに言う。


「嘘よ! 信じない! 私は何も見てない。こんなの嘘。そうよ、見間違い」


「浮いたの見たくせに……」


「聞こえない。見てない。うん、気のせい!」


「信じたくないなら信じなくても良いですよ」


「え?」


「私は人間界へ来たかったんです!」


「そうですか」


人間(あなた)に会いたかった」


「そう……え? 私に?」


「あ、いや……人間に会いたかったんです」


「あなたの世界には人間はいないんですか?」


「はい。人間はいません」


「そうなんですね」


「信じてくれました?」

 彼は美しく透き通った瞳で亜紀を見つめる。思わぬ行動に亜紀はドキッとする。


「いえ。まだ、信じません」


「そうですか……」


 それから数ヶ月が経ち、2人は惹かれ合った。両親に魔法使いとバレて一緒にいることを反対されて、逃げるまで長いことかからなかった。


 家出同然で2人は飛び出し、誰も知り合いのいない地へ辿り着いた。


 彼は仕事を探し一緒に暮らし始める。人間のふりをして彼は懸命に働いた。朝早くから遅くまで2人の為に……。そして――。

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