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おとぎの国の娘  作者: 宮守 美妃
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2人めの少女

『昔々……あるところに……人間の少女がいました』で始まる物語が大好きな少女がここにも1人。


 アリッサは13歳の女の子。魔法使いの家系に産まれ、人間がおとぎ話に出てくる世界に生きている。


「アリッサ〜! 朝よ!」


 母親の甲高い声がアリッサを呼ぶ声で朝が始まる。


「……んん~。もう少し……寝かせて……」


 アリッサは更に布団に潜り込む。鳥のさえずりが響き渡り、のどかな空気がただよう気持ちの良い朝だ。


「アリッサ!」

 母親はアリッサの部屋まで入って来た。


「アリッサ、遅刻するわよ!」


――遅刻? え? 今なんて?


「遅刻?!」


 アリッサは遅刻と言う言葉に驚き、飛び起きる。さっきまでの眠気はどこへやら、寝起きとは思えない速さで着替えた。


「ママ、もうちょっと早く起こしてよ! 朝弱いんだから……」


「……何度も呼んだわよ」

 母親は呆れた表情で答える。 


 大急ぎで顔を洗い「パパは?」と母親に聞く。


「もう、出かけたわよ」


「そう。ごめん、朝ごはんいらないや。行ってきます!」


「行ってらっしゃい」


 母親は慌ただしく箒に乗り飛んでいく娘を見送った。



「おっはよー! アリッサ!」


「あ、フレッド。おはよ」

 

 後ろから声をかけながら飛んできたのは、幼なじみのフレッドだ。フレッドはアリッサの2つ年上で魔法界の高校に通っている。アリッサは中学生だ。


「アリッサ? もしかしてまた寝坊?」


「もう、またって言わないでよ〜」


「いや、だってすっげー慌てて飛んでるの見えたからさ、それに……」

 フレッドは言葉を止め、アリッサをじっと見つめる。


「なっ、何?」


「前髪に寝癖ついてる」


「え? やだ!」

 慌てて髪を押さえるとフレッドは笑っている。


「冗談だよ。飛んでるんだから寝癖なんてわからないって」


「う……」


 フレッドは明るい茶色の髪をなびかせ、からかうような金色の瞳で笑っている。


「アリッサはまだ子供だからな〜」


「フレッド!」


 フレッドを軽く叩こうと手を振るものの、軽々と避けられてしまう。


「そう怒るなって」


「怒るよ!」


「アリッサ……」


「何よ……」


「ごめんっ」


「フレッド?」


「帰りにアリッサの好きな食べ物おごるからさ」


 フレッドは様子を伺うようにアリッサを見つめる。

「……焼き芋」


「ん?」


「美味しい焼き芋が食べたい……」


「分かった! アリッサの学校終わってから待ち合わせよう」


「うん!」


 フレッドは安心したように笑っていた。





 アリッサの学校が終わり、フレッドと待ち合わせ、焼き芋の屋台へ行った。魔法界とはいえ、食べ物は人間界と同じだ。ただ、魔法界ではその事実を知る者は少ない。


「はい、アリッサ」


 フレッドはアリッサの分を買ってきてくれる。


「ありがとう!」


 アリッサははじけるような笑顔でフレッドにお礼を言う。クスッとフレッドは微笑んでいる。

「どういたしまして」


 熱々の焼き芋から湯気が昇り甘そうな匂いがただよう。さっそくアリッサは焼き芋に息を吹きかけ冷ましながら、頬張(ほおば)る。

「ん~! 美味しい!」


 焼き芋はとても甘くてなめらかな舌触りを感じる。


「え?」


 フレッドは突然一方向を見て固まる。

「どうしたの?」


 アリッサはフレッドの視線の方に顔を向けると、立ちすくんでいる少女がいた。

 

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