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おとぎの国の娘  作者: 宮守 美妃
18/30

知っていた

アリッサの家ではアリッサが父に詰め寄っていた。


「パパ、何で、急にあんな話をしたの? 真帆さん可哀そう」


「アリッサ……」

 アリッサの父は切なげな瞳になる。


「アリッサ、確かに真帆さんは気の毒だけど、パパは悪いことはしてないわ。一緒に暮らしたいって思いも」


「でも! ママは平気なの? ママ以外の人と子供がいたなんて!」


「知ってたわ」


「え?」


「全部、知ってて結婚したの」


「そうなの?」


「ええ。私と出会った頃にはもう彼女と別れた後だったのよ」


「何で、真帆さんを引き取らなかったの?」


「当時も人間は災いだと言われていたんだ。今よりもひどく人間は嫌われていた。だから、彼女に託した」


「そう。真帆さんはあたしのお姉ちゃんなんだね」


「そうね」


「あたしは真帆さんがお姉ちゃんで嬉しいけど、真帆さん大丈夫かなぁ?」




✧ ✧ ✧



 ヒスイはベッドに座ったまま、真帆の頭を優しくなでている。ヒスイは立ち上がると真帆に温かい飲み物を入れてくる。


「真帆、温まるから」


「ありがとうございます」


「落ち着いたか?」


「はい。さっきよりは」


「良かった。ひとまず、今晩は休むとしよう」


「はい」


「真帆」


「はい?」


「俺はずっと(そば)にいる。種族は違うけど、真帆のことが好きなんだ。俺では駄目か?」


「いいえ。ありがとうございます。私もヒスイさんのことが……好きです」


 真帆はヒスイに抱きすくめられた。


「本当か! 真帆、やっぱり後で嫌いとか言うなよ?」

 逞しい腕に体が折れてしまいそうだ。


「ヒスイさん、苦しい……」


「あ、すまない。あまりに嬉しくて……」


 ヒスイは腕の力を緩めた。


「言わないですよ。最初は何て勝手なことを言う人だと思いましたけど。でも、一緒に過ごすうちにヒスイさんの人柄が分かって……好きになったんです」


「真帆……」


「ヒスイさん……」


 ヒスイと真帆はお互いだけを見つめている。周りなんて目に入らない。ゆっくりと顔が近づいて、互いに瞳を閉じた。柔らかな温もりをただ、感じていた。



✧ ✧ ✧



 翌朝、目を覚ますとヒスイの姿がない。真帆は背筋が凍りついた。


「ヒスイさん?」


――どこへ行ったの?


 真帆がちょうど部屋の外へ出ようとした時、ドアをノックする音が聞こえた。


「はい」


「おはようございます。お迎えに上がりました〜」

 聞き覚えのある声にドアを開けると、トカが立っていた。真帆を見ると嬉しそうにほほ笑み、優雅に頭を下げた。


「真帆ちゃん、デートしよう」


「え? あ、あの、ヒスイさんは?」


「ああ、大丈夫、大丈夫」

 トカは笑顔のまま真帆に答え、手を引いた。

 

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