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おとぎの国の娘  作者: 宮守 美妃
12/30

目覚め

「気にしなくて良い」


 王子は2人に向かって笑顔で言った。2人は少しだけ離れた場所にいる。


「人食いなんているんですね?」


「ああ、魔物だからな……ここは真帆の住む世界ほど安全じゃないんだ」


「そうなんですね……」


「がっかりしたか?」


「え?」


「真帆は昔からおとぎの国に憧れていたからな」


「……」

 真帆は静かに目を伏せる。


「覚えてはいないけど……でも、子供の頃確かに誰かによく遊んでもらってたきがします。茶色い髪の男の子」


「ああ、子供の頃はこの髪も茶色かった。ふさふさの耳も付いてたな」


「ふさふさの耳……あ! なんとなく思い出しました。決まって1人の時。私と同じくらいの歳の男の子。ふさふさの耳がとても柔らかくてお気に入りだった……あの時の子がヒスイさん?」


「そうだよ」


「私……あの子が大好きだった。大きくなったら結婚したいって思ってた」


「ああ。だから、真帆が16歳になったら迎えに行くと約束してたんだ」


「なのに……何で私忘れてたのかな?」


「真帆のせいではない。人間は忘れやすいからな……」


「そうですね」


「真帆は眠っていた神力が目覚めたようだな」


「あ、ママが言ってたアレ?」

 アリッサが口をはさんでくる。


「そうみたいです」


「真帆の力は魔物を跳ね返す力なんだな」


「アリッサのお母さんが邪悪な力をはね返すって言ってました」


「そうだな。確かに魔物をはね返した」


「真帆さん、すごい!」


「そう?」


「うん、すごい!」


「そうだね。魔法使いでもないのにそういう力があるのはすごいと思います」


「真帆」


「なんですか?」


「神力が目覚めたからといって無理するなよ?」


「しませんよ」



✧ ✧ ✧



それから数日が経ち、街に事件が起きた。


「大変だー!」


 家にいた真帆は驚いて外の様子を見に行く。アリッサの父親は仕事へ、母親は買い物へ出ている。アリッサは学校だ。


「火事だー!」


――火事? どうして?


 外へ出ると一軒の家から黒い煙が上がっている。街の魔法使いは真帆を見ると睨みつけて来た。


「やっぱり、人間をかくまったせいだ!」


「追い出せ!」

 街の人々は真帆を責める。


 騒ぎを聞きつけてアリッサの父親、母親、アリッサ達も帰って来る。


「うるさーい!」


「真帆さんは悪くないよ! あんた達の目は節穴なの? 真帆さんが災いなわけないじゃん!」


「アリッサ! 落ちついて」


 母親はアリッサをなだめる。


「皆さん、今は火事を消すことが先でしょう? あなた達は魔法使いですよね? 立派な魔法があるじゃないですか! 1人の少女を責めるより今は皆で力を合わせましょう!」


 アリッサの父親は周りに向かって言った。


――アリッサさん。アリッサのお父さん、ありがとう。



 皆で協力をして火は無事鎮火した。しかし、真帆への疑いは晴れなかった。

 ちょうど真帆へ会いにヒスイが現れ、事情を聞くとそれなら一緒に妖の国へ行こうと言うことになった。


「短い間でしたけど、お世話になりました」

 真帆は頭を深々と下げる。


「真帆さん……行っちゃうの? また会えるよね?」


 アリッサはなんだかウルウルと瞳をぬらしている。


「そうだね。きっとまた……」


「真帆さん、気をつけてね。元気で。もし、人間が受け入れられるようになったら、またいつでも待ってるから」

 アリッサの母親は真帆を優しく抱きしめる。


「はい。ありがとうございます」


「真帆さん。君のお母さんの名前は?」


「え? 亜紀(あき)ですけど?」


「そうか。ありがとう、いつかまた、おいで」

 アリッサの父親は一瞬だけ切なげな瞳を見せた。


「それでは。真帆さんのことはお任せください」


「はい。よろしくお願いします」


 アリッサの家族は皆して別れを惜しんでくれた。真帆は切ない気持ちを抱えながらヒスイと共に出発した。

 


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