始まりのラストダンス
「もう逃げ場はねぇぞクソ野郎!!」
暖かい春の日の今日、俺こと花咲 春樹は不良の怒号のような声が響きわたる中、ふと空を見上げ、ため息をつく。
···おかしい、なぜ、こうなったんだろうか?
俺の記憶だと3人の不良に囲まれていた女子高生を助けるべく、不良の一人にドロップキックをかまし(その後何度か頭蹴られまくったけど···)なんとかそこから距離をとり、注意を女子校生からこちらに向けられるところまではよかった。しかし問題はそこからだった。今逃げてから、敵と呼べる不良に追いつかれて周囲をふと、見渡してみると、そこには不良が3人あたりからざっと37人ぐらいに増えているような気がするのは気のせいだろうか?もしかすると視力が落ちているのかもしれない。これが終わったら眼科に行こう。
・・・まあ生きて帰れればの話だが。
不良の一人が話しかけてくる。
「おい、てめぇよぉ!お前が調子こいてドロップキックかましてくれたせいでトシちゃんが肩脱臼してんだろうが!今月5回目なんだぞ!!」
チラッとみると奥の方にいてぇ、いてぇよとうずくまっているトシちゃん・・・っぽい人。どうやら取り返しのつかないことをしてしまったらしい。
「あのぅすいませんでした。でもそのぉなんていうかですね、女の人が嫌がっていたんで・・・ちょっとそのぅ・・・やめたほうがいいんじゃないかなぁ〜とか思った・・・あ、すいません何でもないです。」
むこうが威嚇してきたのでそれ以上は辞めておいた。
不良の一人が言う。
「残念だけどな、こっちの一人がやられた以上はやり返さないと気がすまないんだわ。、つーことで覚悟してもらおうか」
「ハァー・・・」
向こうが殺気づいているのを感じ、こちらも覚悟を見せる。どうやらやるしかないらしい。すると
「おい、なに余裕そうな面してやがる。てめぇは」
こちらの諦めた表情を余裕と勘違いしているらしい。
しかしこちらからすればもうどうでもよかった。
「おい‥人の話聞いてんのかハゲ!」
空を見上げるとフゥと息を吐く。
‥‥まったくどうしていつもこうなるかなあと思いつつ、苦笑い。
それに対し、こちらはフッ、と笑いもう一度静かに空を見上げる。まあ橋の下なんで見えるのはただの天井だけども……
「いいか、お前逹は盛大な勘違いをしている。」
「‥まず一つ、確認しておこうか。これは本当にピンチか?」
ざわざわと相手が怯む気配を感じる。
「ど、どういうことだ?」
この状況というにも関わらず一切焦りを見せないこちらに少し萎縮したのか敵の1人が尋ねてくる。
「先程お前らは俺のことを追い詰めたと言った。確かに事実として橋の下で37人に囲まれて今この状況が出来上がっている。だかしかしそれは本当にお前らが誘ったのか?」
ざわざわと敵が焦り出す。
「ま‥まさか、追い詰めるつもりが逆に追い詰めたとでもいうつもりか‥‥!?」
37人組の一人がいう。
そして俺はやれやれと制服のばっと脱ぎ捨て、ネクタイを片手で押さえながらクスッと笑い、スッと人差し指を口の前に立てる。
「いつから‥‥俺を追い詰めたと錯覚していた。」
ごくっと不良が唾を飲み込む音がした。
「こ、こいつ………」
敵の足が一歩後ろに下がる。その瞬間を見計らってから―――
「いくぜ!!‥‥今日がお前らの‥‥ラストダンスだ!!!」
そして不良逹に向かい全力で走っていった。そう―――――ただ真っ直ぐに
そう、これは、俺がヒーローになる物語だ!!