ブラコンの妹が兄(おれ)と結婚するために世界を再構成しちゃった件 4/4
【前回までのあらすじ】
実幸、記憶が混濁する。
牡丹には“みち”という亜空間に随意に出入りできる“神出鬼没”の能力がある。家族には『セルフ神隠し』と呼ばれていたものだ。
そして実幸も死から蘇ったのをきっかけに、ある能力を会得していた。
能力の検証を嬉々として行った義弟の双子――結と晶が名付けた能力名は“我儘なペテン師”。
双子は実幸の近くで片面にジャムを塗ったトーストを百回落とした。そして百回とも、ジャムを塗ったほうが上になった。
ほかにもいろいろと双子は実幸の近くで悪戯をし、判明したのは、
“実幸は事象の発生確率を変えられる”
ということだった。
実幸は、恐らく“掃除が面倒”といったような、自分に都合の悪いことが起こらないよう運命を変更できるようになっていたのだ。
最初、彼は自分の能力に無自覚だったが、徐々に使いこなすようになる。
必要に迫らせたせいだ。
四年前、人間との小競り合いで困っていた小鬼を実幸と牡丹は能力を使って助けた。事態は無事収束したかに思えたが、しかしそれは、怒涛の三年間の幕開けにすぎなかったのである。
――本当にいろいろあったよな。……まさかおれが、世界を救うなんて。――
実幸と牡丹の噂は徐々に広まり、持ち込まれてくる様々な怪事件を能力を使って解決していく。
たとえば魑魅魍魎との戦いで真名を知られ、呪いにかけられた牡丹がやむなく母方に籍を移し“白井牡丹”となってついでに雪女の特殊スキルを得て妖怪を撃破したり、国家略奪を目論むカルト教団に強力な自白剤を飲まされた実幸がついに牡丹に本心を告白、真実の愛によって覚醒した牡丹が実幸とともに教団を壊滅させたり、その他めくるめく大冒険を経て、最終的に力を高めすぎて聖なる存在になったため神への捧げもの――つまり人身御供にされそうになった牡丹の清らかな体を穢すために実幸に処女を捧げ(実幸は童貞を卒業し)、その結果、神とのアクセスを失った世界の概念を固定する代償に二人は能力を喪失することを選んで、世界は平和を取り戻し、実幸と牡丹は末永く幸せに暮らすのであった……。
というのが、昨年までの話である。
――いまでも地獄の風景がまぶたに浮かぶようだ。キムチ鍋美味しかったな。撲滅無双丸と鮮血狂花姫は仲良くやってるだろうか……――
そこからの一年、実幸と牡丹は入籍し、イッチャイッチャな甘い日々を送っている。
実幸は回想しながら、しかし、うすぼんやりとした違和感を拭えないでいた。
掛け時計が「カチ コチ カチ コチ」と秒針を進めている。
ふと、生霊だった頃に化け猫先輩と話したことを思い出す。
この状況はつまり、牡丹の願望によって“過去”という大きな“約束”が破られて、牡丹が要求する新たな“約束”が結ばれ、新たな世界が誕生してしまった――ということではないのか?
昨日の晩、実幸が眠ったあと牡丹は“みち”から戻り、実幸の布団に潜り込んで、一晩のうちに世界を作り替えたのではないか?
かつて実幸が虚無から卵を取り出したように、牡丹は新たな現実を、世界を再構成したのではないか?
(だって、…妙なはなしだ。)
牡丹が母方の籍に入ったことで法定血族ですらなくなったし、実幸は自白剤のせいだが告白しているし、牡丹を守るためとはいえ、しちゃったし。
二人が結ばれるためのお膳立ての規模が凄い。
据え膳どころの話じゃない。
「アーンして」のあとに、口の中に無理やり突っ込んでくるくらいの勢い。
(牡丹はおれと結ばれるために、世界を変えた……?)
「あっいま、おなか蹴った。」
牡丹が突然言うので、実幸は心配になる。
――まさか、布団のなかに妖怪が?――
「大丈夫か?」
「心配しすぎ。ほら見て。」
牡丹が笑いながら、羽毛布団を持ち上げる。
彼女は上に実幸のスウェットを着て、下はパンツだけで、そしてなにより、腹が真ん丸に膨れている。
「子ッ!」
「コ?」
実幸の全身が幸福感であふれる。
違和感は吹き飛んだ。
ただもう世界が黄金に輝いているようだった。
実幸は牡丹の腹――自分の子供に頬をすり寄せた。蹴られる。
「幸せにするから。」
牡丹は実幸の頭を愛おしげになでた。
「ずっとそばにいてくれる?」
「うん。」
【御挨拶】
牡丹完全勝利★
これにて義妹エンド完結です。
ご愛読ありがとうございました。




