真央ちゃん噂になる
予想以上に早くかけた。
でも仕事が忙しいので次は2週間後?
「魔王ですよ!王!」
「ああ、真っ黒な顔をして、鬼の形相で襲いかかってきました。」
「一念丸黒魔王と名乗ってました。一念丸黒魔王と言えば、初代しかも歴代最強の魔王とまで言われてとんでもない悪ですよ。」
王と妃が豪華な椅子に腰をかけ、国王軍の兵士の報告を聞く。その2人の横で直立不動で立ち、真剣な眼差しで兵士を見つめる。
薄いピンク色した鎧を装備。左腰に大剣を備える。右腕に同色のメットを抱える。他の兵士と比べてもかなり立派な装備でまさに騎士という言葉がふさわしい。
その騎士は、長い金の髪を持ち肩からカールがかかる。目は切れ長で、鼻は高く西洋風の綺麗な、相当の美人だ。
「これは軍を出すべきです!」
声を荒げて王に具申する。
王は溜息をつき、この自分の横に立つ騎士の意見に
「軍を出す前に、偵察を出すべきだろう、姫よ。それに姫よ・・・何故また、そのような恰好なのだ。」
誇ったような顔をして姫は答える。
「王を守るのは私の仕事です!」
「・・・王を守るのは、ここにいるテンプルナイツの仕事だ!姫の仕事じゃないわ!姫の仕事は後継ぎを見つけて結婚、そして未来の王を身籠ることだ。」
「未来の王は弟がいるではありませんか!だいたい、結婚は必ずしも、女性の幸せではございません!」
その言葉を聞き王はさらに深く溜息をついた。
毎度の遣り取りが始まったという顔を、周りにいるテンプルナイツの面々がする。
~テンプルナイツ~
王室関係者を守る為、王軍の精鋭16名からなる騎士。彼らは剣指南役級の強さを誇ると言われている。
「兎に角、偵察をだす。」
王は姫との口論を無理矢理しめた。
終わらない。ハロウィンが終わらない!
「ねえ、狼人。祭りは終わらないの?」
椅子に座る真央は、狼人に対して質問をする。
真央は、もう私が優勝してハロウィンは終了と思っていた。しかし何故か皆まだハロウィンを続けている。
「魔王様、ユウショウとお呼び下さい。祭りですか。ええこれからですよ。人を血祭りにするのは・・・」
何?!祭りはこれから?ハロウィンってどんなに長いんだ!真央は驚いてユウショウの顔を見る。
「魔王様・・・みなまで言わなくてもわかりますよ。」
(楽しみでしょうがないみたいですね、魔王様。)ユウショウはニコリと真央に微笑む。
(そうだよね、長すぎだよね。ハロウィン!)真央もニコリと微笑む。
さっと、立ち上がる真央。
「ちょっと出かけてくるわ~。」
「ま、魔王様、どちらへ・・・ついて行きますよ。」
「え~、いいよ。クラスの子、探しにいくだけですから~。」
「クラス・・・ああ、いろんなクラス(職業)の人がいると、(戦闘が)有利ですからね。でも気をつけて下さい。西の方に二代目のゴーレムがいますんで。あれはヤバいです。・・・いかないで下さい。」
「西に・・・めめちゃん。うお~!めめちゃーん。」
真央は西に向かって走りだした。
「魔王様、西はダメですって!!」
二代目・・・二代芽女ちゃん。真央と同じクラスの女の子。女子からは『めめちゃん』、男子からは『二代目』と呼ばれている。180cmの大柄なめめは、同い年でありながら、真央の事を妹のように可愛がってくれた。スポーツ特待生の彼女は、ぬいぐるみを可愛がるように、真央を膝の上に、時には御姫様だっこのように持ち上げたりして遊んだ。
西の小さい池の畔にゴーレムは座り込んでいた。
最強の初代魔王の後を継ぎ、2代目魔王となった。2代目として必死になって魔王らしく振舞った。しかし、まさか2代目勇者が歴代勇者の中でも最強の勇者と言われている、カインであった。善戦むなしくカインに負けた2代目は最後の力を振り絞ってゴーレムに魂を飛ばした。
ゴーレムとなった2代目はいつか勇者に再戦をと思いながら何百年とここにいる。
時々魔物が仲間にしようと訪れたり、人が討伐目的で着たりもするが、『弱き者と群れる気はない!』と退けた。ただ、ゴーレムに声帯機能がないので『フンガ―』としか言えないので、どうも相手には伝わってないが、まあ恐ろしいゴーレムがいるということが広まって結果、誰も来なくなった。
のはずだが、目の前に小さな黒い顔の女の子が立っている。
久しぶりに人を見た。見たところ強者ではない。
一撃で終わりだな。
ゴーレムの右拳が、真央の顔面に向けて放たれた。
「ごめんね、めめちゃん。」
深く頭下げる真央。真央の顔面に放ったゴーレムの右拳が紙一重で空を切る。
かわした!?
ゴーレムは下げた真央の顔面に向けて左拳をアッパ―で打つ。
しかし、真央は頭を上げまたゴレームと目線を合わせる。ゴーレムの左拳が空を切り、天に向けて伸ばした格好となる。
なんだ、この黒い子は?!
ゴーレムは天に向いた左拳に右拳を合わせ、上から拳を叩き落とす。
だが真央は前に出る。ゴーレムの左右の腕の間をすり抜ける。
3発目も空を切る?!
強者とは思えない黒い子に簡単にかわされた。
何者だ!
喋れないゴーレムは「フンガ―」と唸る。
クソ、声帯機能がなくて、相手に問えない。ゴーレムは声帯機能をつけなかった事を悔いた。
懐に入った真央はゴーレムを抱きしめた。ただ、ゴーレムが大きく背中まで手を回せないせいか、抱きしめたというより、しがみついたが相応しいかもしれない。
「私、真央だよ。」
?!ま、魔王か!何代目だ?それより、この私の心を読んだのか?
そうか!それでこの攻撃が当たらないのか!この2代目魔王より上の存在か?!
「フンガ―!!!」
大きく叫ぶゴーレム。
イヤ。そんな、存在いるわけがない!
「ごめん、ちょっと待って。」
真央はガングロの化粧を落とし、ゴーレムに顔を見せた。
「ほら、真央でしょ。」
・・・
真央の素顔をみてゴーレムは驚く。
まさか・・・その顔・・・
次回「真央ちゃんと姫」