第九話 明かされる目的
一瞬だけだが、竜化したことで、ディスガインディア平原での魔物化現象のことを思い出した。
まぁ俺が行ってコールドスリープ状態を解除して、母国に帰れって言っても聞いてくれなさそうなので後々ハウロスジェーン王とグハイランディア皇帝を呼んで解除させよう。
万が一殺傷行為が起こっても良いように上位回復魔法も発動しなければな。
まぁそれは一旦置いといて捕らえたやつを連れて殿下たちの元へ向かおう。
死体は残っていないが血溜まりは残ってしまっている。
ここを俺が通り汚れる分にはいいが、殿下たちまでが汚れる必要はない。
捕らえた人物も魔法で水を少しかけ温風で乾かしてあるので服に染み込んでしまったやつ以外の血は落ちているだろう。
人類滅亡組織は敵だ殺すと決めたけど彼らにも目標があり、家族がいることを考えると冷酷になりきれなくなった。
いやもうここまで虐殺しておいて何いってんだって言うんだけどね……
サイコパスの素質があるのかも知れないな。
こんな虐殺をもう二度と起こさないために人類滅亡組織との戦いに終止符を打ちたいが、いかんせん本拠地を知らないし、虐殺を二度と起こさないために人類滅亡組織を攻撃するとかいう矛盾。
和解を持ち掛けたいけど、あちら側が拒むだろうね。
はぁ……何か他に方法は無いの?
っておぉい。俺の悪い癖悪い癖。
一人で抱え込まないで皆で考えればいいじゃん。
そう考えると気持ちが少し楽になるな。
「どうした、リルグレイシア」
考え事をしているとアルフレクスに呼びかけられる。
無意識で動いていて殿下たちに合流したけど、ずっと考え事をしてたから、止まっていたみたいだ。
「あぁ……ごめんごめん、ちょっと考え事を……ね」
「なるほど。で、さっきからヘルクレットさんが、何か言いたげな顔をしてるけど?」
「ん?」
「リルグレイシア、お前からクロノス以外だが、デオトラントやらグラスディプコディアやらのお前が今まで倒してきた数々の巨大な魔物たちの気配がするんだが?」
「え?そう?確かに、精神世界でそいつらとふたたびまみえて、そこで何故か異状生命体に助けられたけどさ」
「リルグレイシア……それって、助けられてなかったら……はぁ。まぁいい。無事帰ってきたんだし終わりよければなんとやらってね。」
「え?」
殿下が知らなそうな言葉知ってんだよ?
絶対ヘルクレット俺の記憶少し言ったな?
「よし。ヘルクレット、後でお話をしようか」
「なぜ我!?」
「うるせぇ!問答無用だ!」
気持ち沈んでたけどこういう雰囲気だと気持ちが和らいじゃうよね。
やっぱり仲間がいたら、マイナスよりプラスが勝るよね。
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----人類滅亡組織
「最後の希望、ナヤハメートもやられてしまったゾ」
「何です?ということは、リルグレイシア従属計画は失敗したって事ですか?」
「そのようダナ。当のリルグレイシアはかかったら絶対解けるはずがない従属をいとも容易く抵抗し解いてしまったようダナ」
「リルグレイシア、あいつは一体何なのだい?神は殺すし、我らの準備を片っ端から無に帰してぇ。更には絶対を不可能にしてしまうって。ははは、打つ手無し。圧倒的に粉々にされたね」
「あいつが死ぬまでは目立っt」
瞬間3人のいた部屋の景色が変わる。
元々暗闇の中にいたが、それが更に暗くなり更には座っていたり、寄っかかっていたりした椅子や机、その他の家具などが消えた。
「なんですか?ジュグメア様は繋がりが完全に途絶えてしまったから亡くなられたはずでは?」
「そのはずだがナ」
「もしかしたら、生きているけど隠れていて、これは私達にしかわからないサインってこと?」
「今のところ、その可能性が有力だね」
ーいえ、ジュグメアは既に死んでいます。
突然声が響く。
三人は突然の声に警戒をするが、その声は三人の様子をきにも留めず続ける。
ー私は隔世神ハリストロス。あなたたちの信仰していた神ジュグメアの意思を応援し、そして継ぐものです。
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----side:リルグレイシア
なんだかんだあって一週間経ってしまった。
この一週間は少し大変だったが俺は慣れっこだったため難なく過ごせた。まず、俺が目が醒めて人類滅亡組織の組織委員を亡き者にしてしまったところはこのリビドスポア国の中心部だったらしく、国王にお呼ばれし異常に気づいてはいたけど原因不明だったため迂闊に手を出せなかったことの解決を感謝された。
次に俺が捉えた人物はやはり人類滅亡組織の組織委員であり、|幹部であったため聞き出せる情報も多かった。
聞き出せた情報は以下の通り
・俺を攫った訳→目的を果たす為、リルグレイシアにデオドラントやグラスディプコディア等の血を投与し魔物たちを率いる王となってもらおうとした。
・目的とは→腐った貴族共王族共がいず、魔物も人々に残虐されるだけの現状を変え、魔物も人も平等な世界にする。
などなど。
目的は立派な物だが、少々手段が手荒過ぎるし、あれを野放しにすると一国を滅ぼしてた可能性があった。
目的が分からずとりあえず敵対してるから攻撃って言うと俺が悪者扱いされるが、俺までその目的で殺されるところだったから正当防衛と言うことで。
まぁ、結局ちゃんと話を聞いてこなかった俺が悪いんだけどな……
これからはちゃんと話を聞こうと決心した。
まぁこの話はそれくらいにしておき、その人類滅亡組織の幹部の処遇等は国王が決めてくれるらしく預けておいた。
で今、何をしているかと言うとこの国にも心力の気配がしたんだけど今まではうっすらとしか感じなかったから無視していたが、竜化したことによってそういう流れに少し敏感になり、それによって心力の流れが強く感じ取れるようになったため、今は心力が強く感じるところにきている。
もちろん他の人らには内緒でね。
ヘルクレットにも内緒できたが、恐らくどこかに出かけたこと気付いてるだろうな。
ちなみに今いるところはリビドスポア国とその北の国「ラリアント共和国」の国境がちょうど見える辺りである。
今回はラリアント共和国には残念ながらお邪魔できないが、またの機会に来よう。
さて、ここら辺が一番近いと思うんだけどな……
ん?森の中からなにか青白い光が。
おっ。形が違うけど魔法陣があった。
よし、最初のやつと同じ手順でっと……
ぐうッ!
やっぱり破壊すると頭痛と目眩がするんだな……
恐らく力が流れ込んできてるからだろうね……
色々とメッセージが来ているけど確認する前に帰ろうか。
そして転移魔法を発動させる。