第八話 覚醒。そして小さな償い。
----side:リルグレイシア
ンッンンン……
そしてゆっくりと目を開くと視点の高さに思わずびっくりしてしまう。
なんだこれ?と戸惑いながら自分の姿を確認しようとすると、突然目の前に赤色表示が現れる。
それを最初だけ確認してみると、強制従属と書かれていた。
は?と思いつつ同時に抵抗してみると、従属が解除されましたと出た。
えぇ……解除できるのかよ……と困惑しながらもラッキーだと思って自分の姿を確認してみる。
あ?
え?は?
うーんもしかして二度目の異世界転生ってやつ?いや周りを見るとゲージとかそのままだからありえないわ。
そもそも二度目の転生先が巨大な竜とか人生即詰みでおさらばだろうが。
いやまぁうん。こうなった経緯は察し付くけど過程が分からない。
意識失って精神世界に行ってそこでデオトラントとか吸収してこうなったっていうのは想像つくけど、意識失ってからの現実って言うかなんと言うか。そこはどうなってるの?
まぁいい、この姿になるのは百歩譲って良いんだけど戻れるんだよね?
人類って言うこの姿からすれば小さい存在で今まで過ごしてきので。流石にこの姿じゃ暮らせるわけないわ。
念じれば戻れるわけ無いから……どうしたものか。
……おっと見逃してた。『スキル:人化』と『スキル:竜人化』があった。
後でスキルきちんと確認しなければ。
俺の把握してないスキルがあるかも知れない。
と思いつつ『人化』を発動させる。
------------------------------------------------------------
----side:ルクレマス
リルグレイシアとの距離が近くなっているのは感じられるようになって来ましたが、突然現れたあの巨大な竜は一体?
まさかだけどあれからリルグレイシアとの繋がり感じられるからあれがリルグレイシアとか言いませんよね?
とりあえず、近付かなければ……。
ん?あの人影は一体……
住民が逃げおくれたのかな?……いや違います。あれは、リルグレイシアを攫った奴らですね。
殺さず捕らえて奴らに吐かせてやりましょう。
と思った矢先突然巨大竜が縮小を始めました。
私達も思わずそれに合わせて止まってしまいます。
一分も経たない内に次第に小さくなり、私と同じ位の身長の人型になりました。
その人型は剣を片手に携え、リルグレイシアを攫ったやつらに襲いかかります。
突然の展開に付いていけず動揺してしまいますが、煙が少しずつ晴れていき、あの人型がリルグレイシアだと言うことを確認出来るようになりました。
「リルグレイシア、待って。そいつは生かしておいて」
最後の一人になったときに咄嗟に喋りかけてしまいます。
すると、リルグレイシアは首元まで行っていた剣を血を振るってから鞘にしまいました。
------------------------------------------------------------
----side:人類滅亡組織
何故だ……何故だ!!
儀式は確かに成功し従属させ、意識も我の手にあると言うはずなのに。なのに、あちらが強制従属を拒み、更には解除させてしまうとは。
リルグレイシアという男の力量を見誤った……。まさか報告にあった時より強くなっているとは……
いや生きていればいくらでも機会はある。
更に今逃げれば、リルグレイシアの情報も持ち帰れる。
自身の命も助かる故一石二鳥だ。
あぁ言うことを意気込んだが、我らの準備と情報が足りなかった。
すまない魔物共。もう少し時間がかかりそうだ。
よし逃げ……れない。
足が動こうとしない。
「やめろ……やめろよ。……やめてくれ……やめてくれよ……。我はここで死ぬ?否。我はここで死にたくない。嫌。いやだ。やだ」
竜化リルグレイシアが人の姿に戻り我の部下たちを次々と……
我が最後の一人になり、リルグレイシアが一瞬で近くに寄ってくる。
------------------------------------------------------------
----side:リルグレイシア
意外と簡単に戻れるんだね。
さて、ヘルクレットとか殿下たちの姿が確認できたしその近くには人類滅亡組織の連中が見えた。
敵でも俺らの邪魔をしないんだったら捕らえて話を聞いて生かして逃してあげるけど……
【NAME:RILGLAYSIAは統合スキル『竜騎威圧』を発動】
「君たちは捕まえても逃げるし、万が一、逃してしまったら次の復讐の機会を伺い、邪魔してくるから、ここで永遠に眠ってもらうよ」
『竜騎威圧』はグラスディプコディアの咆哮による行動不可の咆哮だけを消し、相手を行動不可にさせてくれ、更に俺の俊敏を上げてくれるスキルである。
まぁあんなことを言ったけど殿下たちが「やめろ」とか「話聞くから生かして」とか言ったら止めるけどね。
これから人を殺す訳だから、悲しみの顔を見てしまうと罪悪感により手を止めてしまう。
だからここからは人を殺すときは考えるのを止める。
敵は敵だ。だから殺すとまでは行かない。
確かにクガベットはこの手で殺してしまったし、ヤハイムクムイも間接的にだが殺してる。
なんなら戦争のときにも沢山の人々を殺し、それをこう選択した王を憎んでくれとも思った。
けど、なんて最低な行動をしたと思うし現実から目を逸してはいけないと思う。
だからせめてこれから自分の手で人を殺めるときは罪悪感なんか忘れてとことんしないと罪悪感の波に飲まれてしまう。
他に選択肢があるだろうが、無知だから、今は他に選択肢はない。
すまない。せめて、安らかに眠ってくれ。
そう考え。ただ殺戮の限りを尽くすロボットとなり、目に付いたやつから安らかに眠れるように殺していく。
そして、最後の一人になり、そいつも殺そうとすると、殿下から静止の言葉が入る。
そして俺は剣に付いていた血を軽く払い、鞘にしまって、最後の一人に猿轡を噛ませ手足をきつく縛る。
そこまでしたところで殿下達に見られないように小さく弔う。