第七話 目的
遅れてしまいすみません。
----side:人類滅亡組織
全く。この小僧め、手を煩わせやがって。
この小僧が目標達成のための手数や我らが神を倒さなければ、こんなことをしなくとも済むのに……
まぁよい。この小僧が手に入ったから後は我らが目標を達成するのみ。
待ってろよ。人間共。待ってろ。魔物達。
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----side:ヘルクレット
チッ。油断したッ!!
リルグレイシアをまたしても奪われてしまった……!!
いや悔やんでる暇があるなら追え。
まずは探知からだ。リルグレイシアとのラインはなぜか切れてしまっているから、探知してからしかない。
っと危ない。リルグレイシア救出にはアルフレクス達の力も必要だ。
どうしようか。
あいつは恐らく何されても自力で帰ってくる事が出来るだろうが、こういう信頼で助けに行かずに死んでしまったじゃアルフレクスを達片時も見捨てなかったリルグレイシアが浮かばれない。
それに、いや。これ以上御託を並べるのはよそう。
今はリルグレイシア奪還に尽力を注ぎ込むのみだ。
探知してみたが先程までいた街やこの森の周辺地域にはいない。
……そういえば、リルグレイシアが捕虜としていたやつが殺される直前に「我らは人類滅亡組織」と言っていた。
つまり殺したやつは都合の悪いことを吐かれる前に殺そうとしたとしか思えないから人類滅亡組織ってことだ。
そして、捕虜としてた奴らは一応昨夜襲撃者してきた奴らであの街にいて、今朝宿屋にいる奴ら全員が敵意持っていたと言うことはあの街全体が人類滅亡組織委員って事か?
とは言え情報が少なすぎる。
更には転移魔法の痕跡を追っているが厳重に隠蔽されていて追えずじまいだ。
どうする……?
あの街には恐らく我らを快く思っているやつなど一人もおらぬであろう。
そんな街でアルフレクス達と手分けして探したら危険だ。
……そういえばさっきから繋がりが……
いや、これは心力の繋がりか?
我自身はリルグレイシアと分離してしまって心力という力は手に入ってはいないが、中で触れてきたからか……
これは運がいいな。
これを辿って行こうか。
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----side:リルグレイシア
ここに来るのも何度目だろうか?
はてさて、次は……
「……は……?なんで……?」
さっきまでいなかったじゃん……なんで急に、デオトラントにグラスディプコディア、クリティカルギャングオウル、ジャンボフォレストエルダートレントまで……?
ほとんど何もできない精神世界での戦闘は死だ。
異常生命体のときも実感したが、抵抗する手段が頼りないものだと、頼りになるものに如何に縋っていたか分かるな……。
あれ……?でも、クリティカルギャングオウルは徐々に消えていき、俺の中に入ってくる。
まさか、クリティカルギャングオウルの中にいるクリーニアが指示をして力を貸してくれるのか……?
いや、それでも恐らく行く道は死。
ヘルクレットとの繋がりは未だ絶えてはいないが、途轍もなく薄く、やんわりとした風が吹くだけでも消えてしまいそうなくらいってことは、結構な距離があると言うこと。
つまり、助けはこれないと考えて良さそうだ。そもそも精神世界には介入できないだろうけど。
まぁ、いいさ。時間ならいくらでも稼いでやるよ。
「ぶぁっ!!」
殴りに行こうとしたらいきなり服を後ろから掴まれ、勢い余って首が締められ変な声が出る。
「待て小僧。はぁ……全く。そなたは相変わらず精神防御力が甘いな……。朕を己の中に封印した癖にこの通りすぐ破れてしまったではないか」
「お前もかぁ!!!!」
俺って運悪いのかなぁ……
まぁくよくよしてたって何も状況が変わらないどころか悪化してしまう。
掴まれてるんだったら蹴るか後ろに頭突きするかなりして、抜け出せばいい。
「落ち着け小僧。今朕にはお前を乗っ取る力はない。むしろ乗っ取ろうとしてるのは目の前の奴らだ。あやつらに乗っ取られたら朕も困るからな。ここは一つ力を貸してやるぞ」
「は?」
「話してると間に合わん。力の使い方は両手を前で重ねろ。そいつは一度使うと消失するからしっかり当てろ」
「え?は?」
突然過ぎて理解が追いつかない。
しかももういなくなってるし!
両手を重ねるだけ……?しっかり当てろ?
知らねぇって……
まぁいい。とりあえず全員に当たるようにやればいいんだろ?
少し後ろに離れてっと……
そしてゆっくり手を前に出して重ねてみる。
すると、どでかいバキュームみたいなのが発生し、俺以外全員を吸い込み始める。
抵抗する間もなく吸い込まれ、完全に吸い込まれると、俺の意識も暗転してしまう。
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----side:人類滅亡組織
ゴポゴポゴポ
「よし。成功だ!忌々しきリルグレイシアは我らの手の元に!!」
フハハ。墜ちるのは速いものだな。
だが、まだ油断ならぬ。従属させるまではいくらリルグレイシアの意識がなかろうが、敵だからな。
「さぁ、外に出て従属の為の儀式を準備するぞ!!」
「御意」
さて、後は従属させ、この大陸の国々を抹消し、この戦で亡くなったヤハイムクムイやジュグメア様の理想の世界を作るのだ!!
「ナヤハメート様従属の儀式の準備が整いました。後は発動させるだけです!」
「よし。後は……」
その瞬間地鳴りが始まる。
「よし、きた!!後は姿を現し次第儀式を発動させろ!!」
音を立てながら、研究所が崩れていき、少しずつ竜の姿に変貌し巨大化していくリルグレイシアが現れる。
「今だ!発動させろ!」
竜化リルグレイシアを中心に魔法陣が描かれ、紫色に光り輝き、やがて魔法陣が消えていく。
自分の視界に竜化リルグレイシアの名前表示と従属のマークが付く。
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----side:ルクレマス
私には完全に感じ取れなくなっていたリルグレイシアとの繋がりをヘルクレットさんが若干だが感じるらしくそれを辿って来てはいるものの、それがだんだん薄れてきており、リルグレイシア奪還の望みが絶たれつつあったとき、突然地鳴りが大きな振動とともにしだす。
それと同時にリルグレイシアとの繋がりを改めて感じ、それは今までより強く感じれるようになる。
そして繋がりの方向は地鳴りの方向と一致するためおそらく同じくリルグレイシアとの繋がりを感じ取れているヘルクレットさんに頷き、アルフレクスさんたちごとその方向で一番近いところに転移してもらいます。
転移した先でアルフレクスさんたちが驚いているので事情を手短に話します。
「先程の地鳴りと同時にリルグレイシアとの繋がりを改めて感じ取れるようになったので急ぎ転移しました」
流石リルグレイシアのお仲間なのか、察しがいいようですぐ理解してくれれました。
「なるほど、分かりました。ではすぐに行動しましょう」
そして、頷いてから繋がりの方向に向かって走り出しました。